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【IDと教員研修15】タスク中心型で自律的な学びをつくる

前回の記事では,経験を生かした学習方法により,成人が学ぶということのサイクルについて考えました.このようなサイクルを意識できるようになると,自律的な学びを進めていくことが可能になります.

自律的な学び,つまり自己の学びを主体的にマネジメントしてく学習であるともいえます.

マネジメントときくと,「計画通り進めたいけれど,難しいよなぁ」と思い当たることがあるのではないでしょうか.
学校に在籍している時とは違い,成人が学習することは,業務とは別に時間を確保するということです.忙しいと時間がとれない,ペースがつくれない,ということが多くあるかもしれません.
このような,学習を進めるための見通しがもちにくいときには,タスク中心型の教授方略を活用できます.

トピックではなく,問題やタスクを中心に考える

授業には,「単元」という考え方があります.多くの場合,学習指導要領における「内容のまとまり」として,学習内容を大括りでとらえ,意図的計画的に学習が進められるようにするための工夫ともいえます.

成人が学ぶ場合も,一つのトピック(例えば,文書作成ソフトのスキル上達)も単元といえます.スタートとゴールを決めて,テストと練習を繰り返していく,まさにTOTEモデルですね.

タスク中心型というのは,このようなトピックを細分化し,一粒一粒を問題レベル,タスクレベルにして,小刻みに学べるようにすることです.これも,ID第一原理を提唱した,M・デイビッド・メリルが提唱しました.

全体的なタスクとクリアの構成要素をつかむことがポイント

タスクをクリアしていくイメージ

タスク中心型の教授方略では,全体的なタスクを概観することから始まります.上のイメージでは,3つのトピックと15個のタスクがあるということになります.A〜Eに向かう流れがあるということです.

3つのトピックは,この場合,関連し合うタスクによってつくられています.例えば,文書作成と表計算とプレゼン,というように,それぞれのトピックでのスキル習得を経て,最終的なゴールに辿り着くというイメージです.学習する内容に応じて,トピックを全て終えてから次のトピックに行く場合もあれば,トピックを関連させ合いながら少しずつ進むことも考えられます.

このイメージの場合,まずはトピック1のAというタスクに取り組みます.まずはやってみるということです.やってみる,例えば文書作成ソフトを使って,行間を揃えるといったインデント処理の学習をするとします.
しかし,当然のことながら,取り組んでみるとわからないところや経験からなんとかできることなど,できることとできないことがはっきりします.

ここで,「2」の矢印に行きます.これは,トピック1のAのタスクをクリアするための構成要素が示されています.

まず取り組んでみて,それに必要な構成要素を学ぶという流れです.

構成要素を知った後,それが応用できるタスクに取り組みます.この場合だと「3」ということになりますね.「インデント処理を今度は表計算ソフトでやってみよう」という具合です.

全体と個別の往還を通じて学びをつなげていく

・・・やや複雑かもしれませんが,このように,学習全体を俯瞰的に見れるような計画があり,それをタスクにわけてクリアしていくことで全体的な学習のゴールを達成することができるようになります.

eラーニングを進める場合,この「タスク」という考え方は,多くの場合的ようされていると考えられます.
つまり学習が自律的に進められるようなシステムが入っているということです.独習をする際に,このような複雑なタスクを計画することは難しいかもしれません.

学習の見通しをもつ上では,このようないつ,どこで,何を学ぶことが,どんな学習につながるのかを意識した計画を立てること自身が,自己の計画力を向上することになり,ひいてはそれが自律的な学びにつながっていくのかもしれません.

次回は,学習の「深まり」について,精緻化理論を考えます.

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