ちびまる子ちゃん

映画「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」をもう一度見たい

小さい頃、レンタルビデオ屋で何度も何度も借りてみている映画があった。正直買った方が早いし安かったんじゃないかと思うくらい、わたしは気にいるとそればっかり選ぶタイプの子供で、他にもたくさんビデオはあるのに、しょっちゅうそれを選んでは「また!?」とお母さんに呆れられていた。(もちろん、他のビデオを選ぶこともありましたが。)

わたしが最もよく借りて見ていた映画は主に3つ。
「ムーミン谷の彗星」、「劇場版じゃりン子チエ」、そして「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」だ。

…………………

「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」
さくらももこ先生自身が脚本を書かれたこの映画。わたしはもう何年も、この映画をもう一度見たいと言っているのだが、未だにそれは叶っていない。なぜならDVD化されていないからだ。(DVD化されていない理由は劇中に使われている曲の権利問題、という噂は聞くが詳細はよくわからない。)

この映画は劇中とても個性的な音楽シーンが次々と出てくるのだが、それがとても面白かった。わたしは特に「オッサンオッサンこれなんぼ」と連呼する笠置シヅ子の「買い物ブギ」の音楽シーンがとてつもなく好きだった。歌も映像も、強烈なインパクトと中毒性があった。

お姉さんと水族館に行ったときに「お姉さんが泡になって消えてしまうような気がした」という台詞(うろ覚え)の後に流れるたまの「星を食べる」のシーンもちょっと不気味でファンタジーな世界観があって素晴らしかったし、お姉さんの絵の世界に吸い込まれるようにして流れる細野晴臣の「はらいそ」のシーンも良かった。

そんなユーモア溢れる音楽シーンの数々も面白かったが、ストーリーも素晴らしかった。絵描きのお姉さんとの出会いと交流と別れがメインストーリーなのだが、忘れられないのはお姉さんが「めんこい仔馬」の2番以降を歌うシーンだ。

音楽の授業で「めんこい仔馬」の一番のみを習ったまるちゃんは、仔馬とののどかな交流を描いたその歌を気に入り、図工の「わたしの好きな歌をテーマに絵を描く」という課題でその歌をモチーフに絵を描いていた。

だが、その歌は5番まであることをお姉さんに教えられる。そして、その歌はその育てためんこい仔馬を、戦争へ送り出すという悲しい歌だったことを知るのだ。

学校では教わらなかった悲しい事実。かわいいだけじゃなかった、平和でのどかなだけじゃなかった、辛い現実を知って、まるちゃんはひとつ大人になる。その事実を知って、もう一度自分の絵と向き合っていくのだ。そしてそのことが、最後のお姉さんとのお別れのシーンにつながっていく。

「別れ」や「哀しさ」を知って人は少し大きくなる。
色とりどりの様々な音楽が流れていく中で、この「めんこい仔馬」のシーンはズシンと重く、初めて見たときはすごくショックだった。その事実を知って涙を流すまるちゃんと一緒にわたしは泣いた。
そして、かわいく平和に見えるものの裏にも、知らないだけで、こんなふうに辛く悲しい現実があるのかもしれないと、子供ながらに学んだのだ。

(※描いてみたら予想以上に難しかったまるちゃん。絶妙なバランス…)

さくらももこ先生が亡くなって、一番に思い出したのはこの映画だった。
エッセイや漫画も読んだけれど、物心がつき始めた幼少期に繰り返し見ていたこの映画はわたしの中でとても大きな存在だった。
さくらももこ先生にもちろん会ったことはないのだけれど、わたしの中でさくらももこ先生は、この映画に出てくるお姉さんのような存在だった気がする。そういう距離の近さを感じさせてくれる作家さんだったのだと思う。
だからニュースを見たとき、「昔よく遊んでもらった近所の絵描きのお姉さん」の訃報を聞いたような気持ちになり、想像以上にショックで悲しかった。

この間高畑勲さんが亡くなってじゃりン子チエちゃんを見返したばっかりなのに…という話をしていたら母が「そうそう、それでわたしもじゃりン子チエちゃん見返そうと思って、DVD買ってん。」という。親子揃って考えることが一緒で笑った。

もう一度、ちびまる子ちゃんの映画を見たいね、と話していた。お母さんは花輪くん選曲の「ダンドゥッド・レゲエ」のシーンがお気に入りらしい。

お姉さんにお別れをいうために、もう一度あの映画がみたい。ありがとう、たくさんの素敵な作品をありがとう、と言うためにもう一度あの映画が見たい。 


というわけで、神保町シアターさんに期待をこめているのでした。
スクリーンでまるちゃんとお姉さんにきっとまた会えることを楽しみにしています。よろしくお願いします…!

読んでいただきありがとうございます。 お恥ずかしながら常に(経済的に)カツカツで生きています!サポートでご支援いただけるとめちゃくちゃありがたいです。