アクタージュが好きだった

アクタージュが好きだった

きれいな絵柄でいきいきとしたキャラクターたちが大好きだった。役者として成長していく景ちゃんが素敵だったし、周りの役者さんや事務所の人それぞれに魅力があった。
中でもとりわけ山野上花子さんが好きだった。独特の髪型に肩出しのニット、あまり激しく作らない表情の下の苛烈な怒り。彼女の作る羅刹女の舞台を実際に見たかった。

私は羅刹女編の頃、精神状態があまり良くなかった。職場でもイライラしたり迷惑をたくさんかけたりして、家に帰って一人になると次の日が来るのが怖くて良からぬことばかりが頭に浮かんでくるので意味もなく深夜に出歩いたりしていた。
ジャンプの発売する日はその行為がアクタージュを読むために容認されている気持ちになった。ジャンプ買ったから家に帰ろう!帰ったらアクタージュを読んで寝よう!そんな気持ちになれた。
深夜に陳列されなかった時(当時の家の周辺コンビニはまちまちだった)は、徒歩通勤中にコンビニで買って、始業前に読んでお昼休みにも読んだ。
アクタージュが楽しみで心の支えになっていた。みんな幸せになってほしいとずっと思っていた。

だけど残念ながらアクタージュは連載中止になってしまった。経緯を鑑みると当然だと思う。ただ私は悲しかった。大好きな作品がもう続きが読めないこと悲しかった。その作品を生み出したうちの原作者が社会的に望ましくないことを行う人だったということが、作品を好きだということを恥ずかしく思わせた。作品と作者は別物であると言う人もいるが作者によって作品は完成を迎えなかった現実は私には受け入れがたかった。そんなことしないでほしかった。大好きなままでいたかった。
一読者の私でもとても辛かった。作画の先生は幾ばくだろう。かつてないメディアミックス企画も始まっていて、女優オーディションも自身の年齢さえ許せば応募したいくらいだった。景ちゃんがコラボしていたイヤホンも買った。色んな人がアクタージュを好きで期待して動き回っていたんだろう。

大好きだったけれどどうしても読み返せない。本は大事に全巻持っているし、単行本化されていない分はジャンプから切り取って保管してある。今読んでも絶対に私は面白いと感じるだろうけれど。

たまたま別の漫画でアクタージュのことが想起されてただ気持ちを吐き出した。アクタージュが大好きだったんだよ。

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