見出し画像

Who Are You!?: SOL Development

新しいアーティストを発見し、実際に聴いて「いいなこれ」と感じる瞬間の「やってやった」感は異常。精神的に安定してきたので徐々に新しいアーティストを開拓しているが、久々に「うぉ!」と唸ったのが今回紹介するSOL Developmentである。"紹介"とは書いたが、今回はNational Public Radio/NPRのインタビュー記事を和訳する。彼らのバックグランドに注目して読んで欲しい。

*フロント写真の左からBrittany Tanner, Felicia Gangloff-Bailey, Karega Bailey and Lauren Adams。

【本文】
西海岸の音楽シーンに新しいグループが登場した。Oakland出身のSOL Developmentの音楽はjazz、Hip Hop、そしてsoulの要素を含んでいる。4人から構成されるこのグループのサウンドは(いつもHip Hopを聴いているリスナーからすると)親近感が湧くだろう。しかし、彼らのバックグランドは違う。教師だ。そして音楽家として実際に授業を行っている。

現在はOaklandを拠点に活動をしているが、メンバーの内3人はVirginia州のHampton大学で出会った。もう1人のメンバーであるKarega BaileyはWashington D.C.で教壇に立っていた。そこで彼は銃乱射や警察による暴行事件、institutional racism(制度化された人種差別)など重たいテーマを扱っていた。SOL Developmentのメンバー達は現在Oaklandにある Roses in Concrete Community Schoolを運営している。彼らは頻繁に授業のテーマに音楽を持ち込んでいる。このグループの名前は"Source of Light"の各単語の先頭のアルファベットが由来となっている。"アーティスト"であることを授業内の武器として使い、アフリカンアメリカンであることから起こるたくさんのことを"超越"するのである。

「黒人として生きる中での経験を、これ以上自分の中だけで抑えることができなかった。そして、だだの物語と思うことも出来なかった」とBaileyは語った。「でも、その中に光があったんだ。そして力が宿っていたんだよ。」

【YAの小言】
OaklandはCalifornia州の真ん中よりやや上にある人口約40万人の都市。すぐ左には有名なSan Franciscoがあり、アメリカでも有数のport city/港街だ。

画像1

現US Mainstream Hip Hopにおいて「Oakland出身のラッパーは誰?」という質問が出るとすれば、おそらくはG-Eazyだろう。San Franciscoがすぐ隣にあるとはいえ、Hip HopのBay Area(という地区)の重要拠点である。

今は分からないが、私がアメリカにいた時に教授からエッセイのテーマで「銃規制やマリファナ合法化の話題は避けなさい」と言われたことがある。理由は「水掛け論になるから」だった。要するに、支持する人がいると同時に不支持な人もいて、一向に議論が進まないものをエッセイにすると自分でも何を書いているのか分からなくなってしまうとのこと。また、実際に授業内で人種差別などについて議論をする時はその場の緊張感が尋常なものではなかった。お互いの意見はどちらも正しい場合があるし、どちらも間違っている場合がある。白黒はっきりさせたい気質のアメリカ人は、白黒はっきりさせないのが大嫌いなのだ。そういうところから、授業内でそのような話題を出すことはその場の空気やこれからの人間関係を一変させる危険性を持つ。彼らがどのような授業をしているのかはとても気になるところ。

Source of Lightを直訳すると光の根源/光源になるだろう。世の中悪いことばかりかもしれないが、その中に光を見出すことができるというとてもポジティブなワードだ。

institutional racism/制度化された人種差別とは、収入や職業、教育など、社会的に様々なことが原因で形成される人種差別のことを指す。一番わかりやすい例でいうと、アメリカにおいて白人、ラテン系、アフリカンアメリカン、アジア系という人種の区分があった際、学力的に白人とアジア系がラテン系やアフリカンアメリカンよりも優位に立つ。それをどうにかするという時に、大学入学試験であえてアフリカンアメリカンやラテン系にもテストの点数とは別の「人種」の加点を行う(Affirmative Actionといいます)。ラテン系=白人やアジア系よりも学力が低いという差別。

【本文】
このグループのデビューアルバム The SOL of Black Folkがリリースされた。SOL DevelopmentのメンバーであるKarega BaileyとFelicia Gangloff-BaileyがNPRのMichel Martinに音楽を通して教えることや、彼らの生活-"Brother"は実際2014年に殺されたBaileyの兄弟についての曲ーなどについて答えてくれた。リンク先で我々のインタビューを聴いてほしい。

*ここからは実際のインタビューを文字に起こしをしていきます。一部、上記で触れた内容などはカット+バックミュージックに関してはいずれリリック解読で行いたいのでここでは文字起こししないのでご了承ください。若干意訳が入りますが、主旨は全く変えていません。

【インタビュー】
MICHEL MARTIN, HOST(以下MARTIN):やっとWest Coastから新しいグループが登場。彼らは小学校で教えていて、授業内で実際に音楽を使って生徒たちと関わっている。The SOL Of Black Folkがリリースされて、今日はグループから2人のメンバー、Karega BaileyとFelicia GangloffがSan Franciscoに来てくれました。今日は来てくれて本当にありがとう。

KAREGA BAILEY(以下BAILEY): ここに来れてうれしい、本当にありがとう。

FELICIA GANGLOFF-BAILEY(以下FELICIA): 招いてくれてありがとう。

MARTIN: あなたたちの事を先生と言ったけど、Roses in Concrete Community SchoolをOaklandで運営している。その学校の名前はTupac Shakurの詩から取ったと。それと、Feliciaは教育学の博士号を取得しているの?

FELICIA: ええ、educational psychology/教育心理学のね。

MARTIN: つまりはGangloff-Bailey博士なのね。

FELICIA: そうね(笑).

MARTIN: アーティストになって、音楽のキャリアも大変で、学校の経営も大変でしょう。

FELICIA: (笑)

MARTIN:その辺を詳しく聞かせてもらえないかしら?

FELICIA:音楽をこのような形で使うとは思ってなかったから変な気分ね。でも生徒と直接かかわって、彼らの気持ちを察するにはとても効果的なもの。私たちが創り出す中身を考えることはとても大切だと思ってるの。

MARTIN: 生徒たちはあなたたちの音楽をかっこいいと思ってる?それとも...

BAILEY:(笑)

MARTIN:生徒たちからダサいとか言われてないのかなって。

BAILEY: "Helicopter"を作った時は面白かったね。1つのツールとしてここまで力強いものになると思ってなかった。長い間、経験してきたことと音楽を混ぜ合わせることはしなかったんだけど、子供たちにとっての子守歌というか、彼らは気に入ってるよ。歌ってもいる。甥っ子、姪っ子も歌ってる。彼らは警察の事を理解してるからね。まぁ話を整理すると、ダサいとなんて思われていないよ。俺たちの曲で盛り上がってる。

BAILEY: まぁ関わっていてややこしい部分もあるんだけど、彼らが今までに聴いてきた音楽と似ている部分があるんだ。彼らは「このグループは有名か?」ってのを知りたがっていて、まだそこまで来てないだろ?でも彼らは俺たちが、俺たちの音楽が世界に広がることに興味津々で、家に帰ってYouTubeで家族に共有してくれるんだ。「これ俺の先生が作ったんだよ」ってね。

FELICIA :生徒たちが私のところに来て、「YouTubeで見た人がここにいる」って言われるのが気に入ってるの。それからステージに立つと、彼らが駆け付けてくれるのよね。

MARTIN: "Helicopter"を聴いたんだけど、メロディーが綺麗で美しいと思ったの。でもテーマになっているものはとても重くて、だって警察による暴行や人種差別を扱っているんだもの。何が言いたかったのかを教えてくれないかしら。

BAILEY: アフリカンアメリカンたちが生きる中で経験することを、これ以上じっと見つめることが出来なかった。でもその中に光があることも知ってた。その中に力が宿っていたのもね。つまり色々なところに機会が転がっていて、自分自身を次のステージにあげるというね。俺自身の制作方法、俺たちの制作方法はその瞬間からの脱却を目指してるんだ。俺たちはヘリコプターがどういうものかを知っている。警察の暴行もね。さらに重要なのは、俺たちはその中に光があって、俺たちの行動で結末が変わることを知っていることなんだ。

MARTIN: 疑問なのは、あなたが彼らを見る時に、あなたは...

GANG;OFF-BAILEY: 何?

MARTIN: 彼らの心とあなたの心がぴったりくっついているというか、あなたたちの作る音楽で可視化されるのかしら。

BAILEY: おぉ、その考察は素晴らしいね。リリックのコアな部分だ。学校というシステムで、生徒たちに今の現状を提供したんだよ。彼らに、「お前たちがそのシステムの対象になっていて、それがシステムのやり方なんだ」ってね。それでも俺は生徒たちに自分たちが見てきたものを見せたかった。クラスルームで、彼らが事の重要性に気付いてきたんだよ。

MARTIN: そういう点については、もう一つの曲をここで流したいと思います。"Brother"。

MARTIN: Karega、2014年にあなたは兄弟を亡くしている。Sacramento(というCalifornia州の州都)でアフリカンアメリカンによって撃たれたみたいだけど、まず初めに本当に残念なことが起きてしまった。そして私が聞きたいのは、あなたはこの曲で何を伝えたかったの?ということなの。

BAILEY: 俺たちの苦悩は繋がっている。とても固く繋がっているんだ。"愛"もそう。愛することを選択すること、自由の道を選択することもそう。自由になるという選択肢があって、よりよい結果が待ってるとしたら、俺は"その中"にいるかいないかを確かめなくちゃならない。いない場合に犯罪が起きる、きついよな。つまり、自分たちの愛や痛みは全て繋がっているんだ。どこかで、俺の兄弟を奪った人と俺は繋がってると思う。

MARTIN: 今日はBaileyとFeliciaに来てもらったわ。本当に来てくれてありがとう。

インタビュー終了。

実際に私がこのグループを知ったのは約1か月前のことである。とにかく分かりやすい英語を使っているのが第一印象だった。勝手に、生徒たちが聞いても理解できるようにあえてそういう言葉選びをしていると思っているのだが、実際に子供たちに世の中のことを知ってほしいということをインタビューで話しているため、あながち間違ってはいないのだろう。久々に期待のアーティストがいたため急遽実家に帰り、実家のパソコンで書き上げた。ぜひ、興味が湧いた読者は一聴してほしい。

今回和訳したサイト: https://www.npr.org/2019/03/17/703119553/oakland-collective-sol-development-preserves-the-the-sol-of-black-folk
*実際に彼らのインタビューが聞けて英語の文字お越しもされているのでぜひどうぞ!

                            Article by YA

私に生きる希望をください。