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手解き: リリック解読(中級)

前回の記事ではリリック解読する上で基本となるタイトルの考察と、Rapの中身には色々なテーマがある事を記載しました。英単語を覚える事を大切にしてもらえればと思います。

ある程度和訳が出来たり、「きっとこれはこういう事なんだ」なんて感じで自分で(自信はないかもしれないけど)分かるようになってきた時、次の壁が立ちはだかる事があります。残りの3割ぐらいの「これどういう意味?何言ってるの?」という部分を今回の記事では【中級】として英単語帳などにはなかなか載っていない、少し専門的な事に踏み込んで説明していけばと思います。では早速記述していきましょう。


1.アメリカのスポーツ
個人的に、アメリカ以上に1年中スポーツを楽しめる国はないと思っています。それだけアメリカでは年がら年中たくさんのスポーツが行われテレビ中継されています。その中で、4大スポーツに君臨するバスケットボール、野球、アメリカンフットボール、アイスホッケーはアメリカのスポーツを語る上で避けては通れません。

4大スポーツの中で、Rapに登場する多くはバスケットボールとアメリカンフットボールです。

バスケットボール: アメリカにはNBAというプロバスケットボールリーグが存在します。一度は↓のロゴを見た事があるでしょうか。

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ここ最近では日本人選手の八村 塁(はちむら るい)さんがNBAにドラフト指名を受けた事で、普段「NBA」というワードを見聞きしない読者でも何となく馴染みが出て来たでしょう。日本のテレビでも大々的に特集が組まれていましたね。

そんなNBAはアメリカとカナダ合わせて30チーム:その30チームが東西に分かれて頂点を目指します。NBA Final(決勝選)は世界中から注目され、なんと視聴者数は3億人以上と言われています。

Rapの中でNBAの選手やチーム、コーチ、そして監督の名前が登場する事があります。ある選手のプレイスタイル: ディフェンスがうまい選手であれば、その選手のように俺も堅実に◯◯をするという言い回しが出来ます。チームに関しては自分の地元のチーム名に言及し「俺は◯◯チームの下で育った」なんていう地元愛を語るアーティストがいます。”中身"だけではなくミックステープのジャケットで↓みたいな事をするアーティストもいます。

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上の画像は、New Yorkで生まれ現在はAtlantaを拠点に活動をしているWaka Flocka Flameというアーティストのミックステープのジャケットです。(雑コラもいいとこなんですが)彼がバスケットボール選手になりきっており、右側にはLeBron Flocka Jamesという記載があるのが分かるかと思います。*NBAのロゴを変えてるのにも注目。

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LeBron James(画像上)というNBA選手が実在しており、NIKEからLeBron という名前でスニーカーも出しています(NIKEのジョーダンみたいなもんです)。現在はNBAのLos Angels Lakersに所属しています。昨シーズンは怪我に悩まされましたがアメリカや世界のバスケットボールファンでその名を知らぬ物はいないほど、実力と名声を兼ね備えた人物です。LeBronは時折Instagramで好きなアーティストの曲を聴いている場面を配信し、Rap好きが伺える事があります。実際にアーティストのライブにも参加しています。

要するに、Waka Flocka FlameはLeBronの様な知名度や実力を見せつける為に、このようなジャケットを作成した という事です。


アメリカンフットボール: 通称"アメフト"と言われるスポーツですが、アメリカで最も人気があるスポーツと言われています。アメリカのNFL(アメフトのプロリーグ)のSuper Bowl(決勝戦)のハーフタイムショーは日本でも話題になります。

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NBA同様、一部のアーティストはNFLの選手やチーム名に言及してラップをする事があります。また、アメフトは様々な"ポジション"があり、それに言及する事もあります。例えばクォーターバック(QB)は攻撃時に様々な指令を出す役割で、身体的な強さだけではなくいついかなる時にパスを出すのかなど頭も常にフル回転で試合に臨みます。そういうポジションとアーティスト自身を掛け合わせて、「◯◯(選手名)の様に俺は鋭いRapができる」だったり、「△△(ポジション名)の◯◯(選手名)みたいに〜」なんて事をRapしてみたり。

NBAとNFLに関しては今でも多くのアフリカンアメリカンが多く活躍しています。逆に、アイスホッケーでは黒人の選手はNBAなどに比べると少ない現状があります。活躍する人種の傾向などもRapの中身を理解する時に勉強出来る面白いところです。

2. 様々な"ブランド"
Rapのテーマとなるものに酒や薬物などがあります。その中で、「俺は酒を飲む」ではなく「俺は◯◯(というブランド品の酒)を飲む」なんて事をラップする人々がたくさんいます。どのようなブランド品を言うのか少しリスト化します。

①ファッション
パリコレやミラノコレクションに登場する服、俗にいわれる"ブランド品"の名前が多く出て来るのがUS Mainstream Hip Hop。よく出て来るブランドの名前を記載します。

Louis Vuitton/ルイビトン
Dolce & Gabbana/ドルチェ アンド ガッバーナ
Chanel/シャネル
BALENCIAGA/バレンシアガ
CELINE/セリーヌ
Dior/ディオール
GUCCI/グッチ
FENDI/フェンディ
Givenchy/ジバンシィ
Prada/プラダ
VERSACE/ヴェルサーチ
Maison Martin Margiela/メイソン マルタン マルジェラ

上記はあくまでも一例です。普通にT-シャツで3万以上しちゃうブランドだらけ。自分がどれだけのブランド品を持っているのかをアピールし、財力の証明としてHip Hopを知らない人でも一度や二度見聞きした事があるブランドを中身に加えます

面白いのは、H&Mなどのファストファッションと言われる部類のファッションブランドは登場しないこと。仮にそういうブランドが出て来た場合は、自分がそれしか手に入れる事が出来なかった/出来ない貧乏さをアピールしています。

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↑Kanye WestとJay Zのライブ時の画像。ブランドはGivenchy

もっと色々なブランドを知りたい方は、ここをクリック!

②時計
富裕層のステータスとされている"時計"。スマートフォンなどで簡単に時間が分かってしまう時代ですが、Hip Hopの世界においても金持ちの証として時計がリリックの中に登場する事があります。どのような時計ブランドが登場するのか以下に記載します。

Rolex/ロレックス
Audemars Piguet(AP)/オーデマ ピゲ
Hublot/ウブロ

上記の3つのブランド、本当によく登場します。時計一本100万円はくだらない、まさに"裕福層"に相応しいブランド達です。

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↑New York出身のFabolous。画像でつけているものはAP。なお、こんなに時計をつける理由は全くない

③酒
ストロングゼロや大関ワンカップで"酔い"だけを求める私の様な低所得者ではなく、富裕は酒にも拘ります

Hennessy/ヘネシー
Moët & Chandon/モエ・エ・シャンドン

特にHennessyはMVの中でも頻繁に登場し、多くのラッパー達の憧れです。また、40oz(フォーティ オズ) という"ゲットーのビール"と言われるものがありそれも頻繁に登場します(画像↓)。味は、金麦を更に薄くしたような感じ。未成年者は飲んじゃダメだぞ!

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また、ラッパーの一部は自らアルコールをプロデュースしたり、それをMVで登場させたり一つの"商売"として戦略を立てています。ラッパーというより、最早実業家ですね。

④車
高級車が頻繁に登場するHip Hopの世界。90年代のNew YorkシーンではLexusなどの日本車が席巻、LAではスパニッシュ文化と融合しImpalaが主流、南部ではLAのImpalaを改造し、Candy-Paint (キャンディーのような色合い)をした車が主流でした。New OrleansのCash MoneyはMVの中でどんどんと高級車を登場させてきましたが、ここ10年でリリック/MV内で登場する車もはさらに高級化が進んでいます。

Maybach/マイバッハ *英語では"メイバック"の発音が近い
Bentley/ベントレー
Lamborghini/ランボルギーニ
Bugatti/ブガッティ
Rolls Royce/ロールス ロイス
Ferrari/フェラーリ
Mercedes-Benz/メルセデス ベンツ *英語では"ベンズ"と発音
Porche/ポルシェ *英語では"ポォゥシュ"の発音が近い

アメリカで興ったHip Hopの要素の1つであるRap:そのRapがアメリカで徐々に人気が出て、かつてはJeepやChevroletが多く登場しました。今ではスポーツカーや俗に言う"セレブ"が乗る車で自分の財力をアピールしている事に注目。また、高級車の中にもそれぞれで様々な種類がありまして、ベンツのSクラスとか、そういうのを具体的に登場させるアーティストもたくさんいます。まぁどちらにしろ、めちゃくちゃ高い車を所有している訳です。

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上の画像はMaybachに乗っているRick Ross。自らMaybach Musicというレーベルを立ち上げるほどのMaybach好きで有名。

⑤薬
普通に薬局で処方してもらう合法的なものから違法なものまで、US Mainstream Hip Hopと薬/ドラッグは切っても切れない関係です。

MDMA/Ecstacy/Molly
Cocaine/Crack Cocaine/Coke/Key/Powder
Oxycodone/OXY
Alprazolam/Xanax
Codeine/Syrup/Sizzurp/Purple/Lean

なお、Marijuana/Weed、つまりマリファナ/大麻は"薬物"ではないとされている意見が世界中で多い為ここでは一切言及しません。日本ではまだまだ"色々"と浸透してないしね

MollyとCrack、Leanは頻繁に曲中で聞く事が出来ます。ですが、実際にそれらを過剰摂取して亡くなったアーティストも多数いるので、日本語での呼び名や"隠語"は記載しません。調べなくていいですよ。

良い未来があるとはとても思えません

なお、実際にそれらの薬を摂取する理由として、"現実逃避"を述べている人もいます。周りの人が死んだり、貧困から抜け出せない状態で、自分ではどうする事も出来ないからそういう薬物に手を出すという訳です。

だいたいの"ブランド"に関してはこれくらいでしょうか。他にも銃の品名を言及するアーティストも多数存在します。数字が出て来たら大体は車の車種か銃の名前、または薬の量/品目についてです。毎回登場する新しい単語を調べる事で、アメリカやHip Hop界隈で流行るであろう/流行っているトレンドを知る事も出来ます。

ただ、それを真似しないように。

あくまでも"音楽"として楽しむ事を忘れないでください

以上、中級編でした。

「待って!?まだこれ以上に考えないといけない事があるの?」と思った中高生の皆さん。ご安心ください。Rapの8割はこれまでで大体理解する事が出来ます。【上級編】ではさらにディープな話に踏み込みます。

                            Article by YA

私に生きる希望をください。