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2019年に聴いたアーティスト/アルバム紹介 vol.1

皆さまお疲れ様でございます。More Than Noise管理人のYAです。中高生の読者の方々は冬休み間近で、クリスマスの妄想に耽っていることでしょう。社畜の方々は年納めに向けて出たくもない忘年会やらよくわからん書類に追い詰められていると思います。日々の業務お疲れ様です。

さて、管理人の1年を少し振り返ると、今年は転職して給料が大幅に増加、「働いたら働いた分だけ稼ぐことが出来る」という当たり前に気づけた年でした。

精神的にしんどかった前職からの解放で、自然とHip Hop/Rapと向き合える時間が増えたのですが、如何せん耳や目に飛び込んでくる音楽がとても(個人的に)"面白くなかった"1年でした。昔実家でHip Hopを流していた時、父親が「全部同じに聞こえる」と言っていましたが、この歳になって私も「だいたい同じかな」という感覚になっています。これが巷で言われている"老害"現象なのかは分かりません。

私の情報力不足、または食わず嫌いからきている事だとは思いますが、Trapと称されるHip Hopのサブジャンルの人気が保たれたと同時に、ついこの前まで猛威を振るっていたChicagoを中心とするDrill Musicは(US Mainstreamの中では)あまり振るわなかった1年だったと思います。また、相変わらずSNSや動画サイトでの"注目度"がそのまま人気に直結する時代に直面しており、音源ではなく"インパクト"で勝負というのも時代なのでしょうか。皆さんは何を聴いているのでしょうか。タトゥー入れた白人が高級車の上でお金ばら撒いている音楽ですか?

そんな2019年、個人的に聴いてて「いいなこれ」と思ったアーティスト/アルバムをいくつか紹介したいと思います。先に謝っておくと、深掘りはしていませんのでそこら中にある音楽紹介サイト記事のように薄っぺらい中身です。すいません。

1. Wynne/If I May..

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MC Lyteから始まるアメリカの女性ラッパーの系譜。Queen LatifahやFoxy Brown、Lil Kim、Missy Elliot、最近ではNicki Minajやオーストラリア出身のIggy Azaleaを経て2019年に満を辞してOregon州はPortlandから頭角を表したWynne。2019年10月、彼女はデビューミックステープの"If I May.."を発表。依然US Hip Hopではマイノリティー/少数派である"white female rapper"/"白人の女性ラッパー"であることに対する"答え"としてこのミックステープをドロップしたと語る。「タイトルにあるIf I May(= もし私なら)というのはHip Hopに対する本当の疑問が由来しているの。私は"これ"が出来るの?っていう疑問。白人がその中に入って、その要素を使用している。この文化のゲスト/来客者として、自分なりのHip Hopというの表現したかった」と、かなり真剣にこの"文化"と自分のマイノリティーさを考えているようだ。「この文化のゲスト」という表現: 2013年にLord Jamarが「白人はHip Hopのゲスト」という発言に関連していると思われる。

彼女が注目されたきっかけはフリースタイル: Snoop Doggがそれに注目し、多くのUSアーティストにInstagram上にてフォローされてから全てが始まる。一般リスナーからはどういうわけか「Eminemの娘」と誤解され、自分自身で「Eminemの娘ではない」と弁明。よくわからない噂が一人歩きしてしまったが、本作はThelonious Martin、Hit-BoyやDJ Dahiという超大物プロデューサーのビートを多数起用している。肝心のリリックだが、女性ラッパー、そして白人としての"謙虚さ"が伺える箇所が満載であると同時に韻をガチガチに踏んでいる。ここ最近のリーンやって高級車の上でヘラヘラしているラッパー達に飽きたリスナーにはとっておきの楽曲が満載。

2. Yugen Blakrok/Anima Mysterium画像2

Wynneに続きFemale Rapperの紹介。恐らく今年私が一番聴いたアルバムは彼女のAnima Mysteriumであろう。南アフリカのJohannesburg/ヨハネスブルグ、かつて世界中から治安の悪さを批判された犯罪都市に拠点を置く彼女がHip Hopリスナーの耳に止まったのはBlack Panther: The Album (Music from and Inspired By)でVince Staples、Kendrick Lamarと共演した時。

どうしてもKendrick LamarやVince Staplesに注目がいきがちだが、Yugen BlakrokのVerseはBillboardの【アルバムのベストVerse6選】で見事1位を獲得した

そんな彼女のセカンドアルバム Anima Mysteriumは、Kanif the JhatMasterというこれまた南アフリカに拠点を置くプロデューサーを中心に重低音が響き渡るビートがメイン。このアルバムを一言で表すなら"別次元"が最も適切であろう。宇宙的な壮大なテーマを掲げ、今後の更なる活躍に期待したいラッパーである。

3. Papoose/Underrated

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NYCの重鎮DJ、Kayslayに才能を見出されたBrooklyn出身のPapooseは本当に(いい意味で)細々とラップキャリアを積み上げている人物である。余談だが、過去にHot97主催の大型フェス Summer Jamに飛び込み参加してHot97を大激怒させたことがある。そんな彼は定期的にミックステープやアルバムを出し続け、女性ラッパーのRemy Maとの間に子を儲け父親としての顔も持つ。今回のアルバムもDJ PremierやStatik Selektahを揃えているが、相変わらず時代に取り残されている古臭いラップをかましてくれる(褒め言葉)

ハイライトは2曲目のNumerical Slaughterであろう。数字の1〜10に掛けながらのラップを展開する。過去にはアルファベット順にラップをしたこともある理、ラップスキルはお墨付き。

4. Jeezy/TM104: The Legend of the Snowman

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ミーハーと言われても構わない。Jeezyは今年もかっこいいアルバムをリリースしてくれた。Trapを全米に広げた功労者であり、デビューしてからビートとリリックに一切のブレがない。要するに、いついかなる時も"安心して"聴くことが出来るラッパーである。たまに「え、こんなはずじゃなかった?」というアルバムはありませんか?彼にそんな心配は無用。リリックの内容の大体は"hustle"、つまりドラッグやストリート系の話が十中八九なので好みは分かれるだろう。もしかすると、私がJ.U.S.T.I.C.E. Leagueのビートが好きなだけかもしれない

5. Fly Anakin & Big Kahuna Og/Holly Water

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高音を巧みに使うFly Anakinと淡々と言葉を紡ぎ出すBig Kahuna Ogの一枚。Virginia州はRichmondのアンダーグラウンド集団であるMutant Academyの2人によるこのLPもアメリカの各Hip Hopサイトから高評価を獲得した。各楽曲でのサイファーとも呼べる畳み掛けるラップは必聴。

Vol.1は以上。今回は主に2019年にリリースされた音源を紹介したが、次は古い音源も入れようと思う。

                             Article by YA

私に生きる希望をください。