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ブレクスピラゾールとお砂糖ぺろぺろ療法 ~もるげんよもやま話~

noteをはじめて、気付いたらゆる言語学ラジオの記事が15スキももらえました。

フォロワーも増えてきて、嬉しい限りです。
これからも色々書いていきます。

それはそれとして、年内最後の記事には今年の総括について書こうと思っていました。
が、ちょっと面白いニュースが2つほどあったのでそれについて書いていきたいと思います。

ブレクスピラゾール、うつにも使えるようになる

ブレクスピラゾール(一般名:レキサルティ)という薬があります。
抗精神病薬と呼ばれる、統合失調症の治療薬です。
こいつが最近、うつ病へも適応が通りました。

今年の夏ぐらいから、
「ブレクスピラゾールが鬱にもいいぞ」
とtwitter(現X)で精神科医界隈で噂になっていました。

自分も数例、使ってみたのですが確かに効果を実感できました。
1mgでも効くか効かないかははっきりしていましたし、副作用もそんなに多くない。
いぶし銀的な使い心地でした。
これで大手を振って使えるわけです。

ところで、もともと統合失調症の治療薬が何でうつにも効くというのか。
これは(説明が長くなるし)まだまだよくわからないところでもあります。
昔から抗うつ薬+抗精神病薬が難治性うつに効果があることは分かっていました。
王道はオランザピンやアリピプラゾールとかですね。

最近は双極性障害でも初期からの気分安定薬+抗精神病薬による治療が推奨されています。
ドーパミンとかセロトニンの単一仮説では説明できない、脳の生理的な機能などがあるかもしれません。
このあたりは今後の研究を待ちましょうか。

しかし、抗うつ薬との併用で保険収載されたのですが、
「SSRIかSNRI、ミルタザピンに上乗せ」
なのでボルチオキセチン(一般名:トリンテリックス)とは厳密には使っちゃだめっぽいんですよね。
ボルチオキセチン+ブレクスピラゾールはいい組み合わせだったんですがね。

泉大津市、「お砂糖ぺろぺろ療法」を推してしまう

COVID-19感染症による急性期症状だけでなく、最近は後遺症について様々なことが分かってきました。
それに対して医療機関や行政が対応するのは当然なことです。
当然なことですが……

お砂糖ぺろぺろ療法!?
お砂糖ぺろぺろ療法じゃないか!!

レメディ(お砂糖の玉)に薬物や鉱物などの作用物質を極限までに薄め(ほぼその物質は含有されていない)て、それを含ませて治療する

ことで有名な、エセ医療代表格ことホメオパシー。
個人的には「代替医療」と呼ぶことすらおこがましい。
そんなホメオパシーくん。
どうエセなのかはサイモン・シンの「代替医療解剖」をご覧ください

しっかし、久々に見たなあ。
最近はTMSやら(こいつ自身は抑うつへの治験などがある)、波動やら、血液クレンジングやらに押されて姿を隠していましたからなあ。
ちょっと懐かしい気持ちにもなりました。

ホメオパシー自体への批判もあるのですが、今回最大の問題は
行政が科学的根拠のない医療を推進したこと
にあります。

我々は保険医療の中でやっています。
保険ではEvidence Based Medicineによって規定されています。
行政が「ちゃんと論拠あるものをやってね」と言って我々はやっているのに、効果がない治療を推進するのは、なんともなあ、というところ。

細かく話せば、エセ医療自体の確証バイアスと科学の姿勢とか
個人がエセ医療を推すことと行政が推すことの違いとか
それだけで話すことが山ほどになりそうです。

たまにトンチキをやらかす行政はありますが、久々にいい感じのトンチキ具合でしたね。
当該地域に住む人たちの健康が守られることを祈っています。
また、国家行政としてはこういったエセ医療に対しては厳しい姿勢で臨んでもらいたいものです。
いつまでも自由主義的な個人の責任に理由を付すのではなく、国家としての責任を果たしてほしいものです。

しかし、ホメオパシーは民俗学の見地からだとまた違うものの見方ができそうですね。
感染呪術と類感呪術のうち、感染呪術に類するもの。
そんな研究も興味深いです。

(タグにホメオパシーとかつけるのは、ちょっと怖いので「お砂糖ぺろぺろ療法」でつけておきます)

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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