プラネタリウムに字幕を付ける

1.概要

今回は、字幕を見るのが難しい「プラネタリウム」に字幕を付けてみたいと思います。

今回この字幕を付ける、という企画は、焼津市難聴者・中途失聴者の会の代表 望月美香さんから「何とか実現できないか?」と相談を受けた所から始まります。

プラネタリウムは、あの大きなスクリーンで宇宙に迫るダイナミックな映像をみたり、今日の星空解説を聞いたり…と、宇宙に思いを馳せるエンタテイメント性の高いイベントです。
 
CG作品であれば、ある程度字幕をつけられるものの、当日の星空解説となると、毎日状況は変わりますから、なかなか手ごわい。これはきっと面白い!と思い、トライすることになりました。

2.誰と手を組んだのか

実際に字幕を付けようとなると、プラネタリウムを上映する天文台の理解を得ることは欠かせない要件になります。

今回は、ディスカバリーパーク焼津 天文科学館で解説員をされている 原さんに相談をもちかけ、天文科学館の全面バックアップのもと、進めることになりました。

字幕付与にも、最新技術を用いることにしました。字幕を作成するシステムには、NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)の字幕作成システム「おこ助」を使いました。

また、字幕の投影指示には、静岡福祉大学が開発した「まあちゃん」を応用。

字幕投影には、株式会社パラブラの「UDCast」をプロジェクターに繋いで使用します。

そして、今回の醍醐味でもある「音声解説」を即興で字幕に直してくれるのがShamrock Records,Incの音声認識アプリ「UDトーク®」です。

音声認識システムのオペレーション(誤字修正等)としては、技術検証チーム「Project EXTRA」が支援することにしました。

これらを動かすために、ディスカバリーパーク焼津と赤い羽根共同募金の基金にも協力して頂きました。

これらのシステムをすべて繋げて、字幕投影システムを実現しています。

3.システム構成図

構成図はこのようになっています。星空解説をしている場合には音声認識(UDトーク®)、CG字幕には映画字幕投影システム(UDCast)というように
使い分けるため、映像ミキサーを入れて、スクリーン投影しています。
 
なにかトラブルが起きても、字幕を一時的に消すことで修正行動をとることができる、という運営上のリスクヘッジもこのシステムで賄っています。
(イベントが始まってしまうと、画面操作などができないというのはリカバリーするうえでかなり大変です。)
 
会場には、インターネット回線(モバイルルーター)をおいて音声認識を活用しています。

4.運営上の課題

プラネタリウムの会場は 防音設備や遮光設備がしっかりしているので
人が入って扉が閉まったとたん、無線が弱くなります。

結果、通信が遅くなり、音声認識がもたつきます。

今回もそのケースがおきたので、モバイルルーターにモバイルバッテリーを付けて、扉に一番近い場所におくことで通信速度を維持することにしました。

また、プロジェクターの光がとても強いことがわかりました。たとえば、この画面では、黒い部分の境がわかりますね。

明るい場面と暗い場面のコントラスト差がはっきりしている環境なので
調整がとても難しい現場でした。

今回は3000lmのプロジェクタを使っています。明るいほうが文字が読みやすいですが、フレームが見えるとエンタテイメントとしては残念な感じをうけてしまいます。

そこで、フィルターを付けることで、境をなくすことにしました。
赤、緑、黄を投影した結果、赤が一番丁度良く光を吸収することが分かりました。

文字が赤くなる背反もありましたが、星空が夕方から夜になる場面から始まったこともあり、「夕焼けに近い色」は見やすかった、との声もありました。

CG作品は、通常スイートスポットと呼ばれる 「仰角45度」あたりにメインがくるよう、作成されているそうです。

45度に目がいくものの、そこに文字を重ねてしまうと本来見せたいものがみえないため、今回は仰角50~60度を目標にして投射しています。

5.当日、なんとかうまくいきました。

星空解説は、今日の星空から順に夕焼け、夜と時間を進めていきました。
音声認識をつかっているので、字幕は少し行数を多めにしてあります。

解説員の原さんの声は、ゆっくりで甘い声。かなりの確率で認識しました。
 
もちろん、どうしても出ない単語は登録をして誤変換を減らしたり、出た瞬間に修正をかけて、本来の意味がとりやすいように工夫しています。

投影機器は、Windows設定でハイコントラストに設定しています。また、まあちゃん2017の暗色設定を併用して、星空解説のときにパソコンの明かりが邪魔にならないようにしています。

6.字幕付きプラネタリウムに参加しませんか?

以上、先日おこなった字幕付きプラネタリウムのレポートでした。

このような方法は、機材の使い方が分かっていれば、それほど難しい作業・操作ではありません。

むしろ、「実現したい!」という意欲があればなんとか形になるものです。

静岡での実践例はこれが1回目になろうかと思いますが、好評であれば、今後も継続することが実現かもしれません。ぜひ、ディスカバリーパーク焼津天文台へ声を届けてあげてください。

また、県内の他の天文台でも投影できないか?など模索しています。もしかすると今年、新たな事例が作れるかもしれません。

ぜひ、機会があれば、字幕付きプラネタリウムにご参加ください。きっと、新たな発見があるはずです。


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Mori Naoyuki

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