外星通訳一族、”AKIMOTO”16


 

 『サラン、何度も言うけど俺は石は食べれない。病気でもない。』

 ————初代通訳官 秋元 郷治 が断った最初の食事————


————ウルス宇宙船『対講話用』艦船 ハンガー内、収容艦

         「「【【全然わからん。】】」」

  その場にいるウルス人と地球人は現在、同じ問題に直面し、同じ答えを出していた。

「なんだこの文明の文字は……?数字、あるのか?いや、これはただの文章ってだけ……?」
【違う文字が多すぎる……。繰り返し使っている文字が、少なすぎるのでは……?こちらの形式と、文字が違いすぎる。】
「英語みたいに組み合わせる形式じゃなさそうだな。……日本の様に、数種類の文字を使う形式か?」
「だとしたら厄介が過ぎるよ、ニック。」
 ユーヤは、頭を抱える。法則のつかめない、日本語と同じかそれ以上に文字を使い分ける、『ルーツの全く違う言葉を解読しろ』と言われているようなものなのだから。

「……あるいは、なんだが。」
 ニックが、右手で顎のあたりを触りながら言おうとしたことを、
【同じ意味の言葉を、別の言葉で書いている?】
 ウルスの研究員が、言い当てる。そしてそちらに向かって笑みを浮かべながら彼は答える。

「ああ、そう思う。」
「……語訳がしてある?一つの船に、いくつかの言語で?でも————」
「まだそうと決まったわけじゃないがね?こいつら、この戦艦みたいなのに乗ってんだろ?80cmくらいの、人型に近い奴らが。」
【はい、そうですね。】
「船には武器が積んであった。それに、武器も携帯している。」
【間違いなく。】
「なら、この船は戦艦だろうな。んで、じゃあなんで戦艦位に武装詰め込んだ船に乗ってんのかって話だ。」
「……戦争じゃないか?」
 ユーヤが答える。

「何処との。」
 それにニックは素早く質問する。

「え?」
「何処との戦争なんだよ。そいつら同士なのか、それとも、違うのか。」
「ソレを今、調べてるんじゃ……」
「ああそうだよ。でもこの文字を見てみろよ。この文字の多さを。」
 ニックが指をさす。長々と書いてある、異文明の文字を。

「一つ一つの列は法則性があるが、下の列になった途端に別のモノになる。これが語訳してるんだとしたら自然だ。上の列の言葉を、数種類の文字、
言語で説明してる。地球でもやってることだ。じゃあ、仮にそれが正解だとして、何でそんな必要がある?『国』で戦争してるわけじゃないから、じゃないか?いや、それは解らんな。少なくとも……。」
 ニックは続ける。

「多種多様な言語の奴らが乗り合わせる必要がある、言語での表記が必要である、戦艦だとしたら?地球で考えてみろよ。英語と中国語と日本語とフランス語とヘブライ語で表記しなきゃいけない戦艦って状況をさ。」
【地球に必要あると思えませんね。】

「……地球だけじゃ、必要ない。でも他に星があるなら……。」
 ユーヤが、呟く。
【【【はい?】】】
 ウルスの民が一様に首をかしげる。
「そうだよ、バディ。この戦艦は他の星か、文明と戦争してると思うんだよ。それも多言語を喋れない者たちを乗せる前提だ。あるいは決まっている統一言語を話せない前提の乗組員……。」
 ニックは、一息ついて、その先を発した。

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