外星通訳一族、”AKIMOTO”20


    『彼らは敵ではない。私はそれに賭け、当たった。』

———『ボル』の戦艦の艦長『”サー”・ヴォティス・ウォン』の答え———


———— 宇宙 『ボル』の戦艦内艦橋


「正気ですか、艦長!?我々の、この”移民船”を、奴らの船に入れるなどと!!」
 彼ら、ウルス人と「艦長」との直接の接触、その直後のボルの種族は、大混乱に見舞われた。艦長が奴らの言葉を体得し、彼らの言う『交渉』のためにこの船を相手の要塞……いや、船に着艦させるというのだから。

「ああ、本気だとも。」
「あなたが敵に……いえ、奴らに操られていない確証がありません。私は承服しかねます。」
 副長が、その艦の副長が、艦長、「ヴォティス・ウォン」異を唱えた。

「あなたにだけ突然、奴らの声が聞こえるようになったのもそうです!!『奴ら』によってそれが齎(もたら)されたというのならッ!それが奴らの作戦かもしれない!!」
 それもそのはずだ。
先の接触で、ウルス人の声が聞こえるようになったのは、艦長『だけ』なのだ。要するに艦長を、彼らボルの『秋元家』にしたのだ。彼らの悪意の有無など、【声】の聞こえぬ周りには解りようもないし、測りようもない。
 よしんば聞こえていたとしても「仮想敵の言う『敵ではない』」という
発言、それが真実だと断定するにはいささか総計が過ぎる。

 だが。

「奴らは、1種族ではないとしてもか?」
「……は?」
 副長は、艦長が何を言っているのか解らなかった。
いや、1種族ではない?何が?奴ら?

「奴らの中に背の低い……といっても、我々の倍近い高さがあったがな。そういった者が1体……いや、”一人”、いたのだ。見ていたか?」
「は、はい……モニターで確認していましたが。」
「ヤツは、その一人は少なくとも彼ら、「ウルス人」のウチの1人ではない、そうだ。」
「では……」
「そうだよ、副長。」
 ヴォティス艦長は、顔を手で覆いながら言った。

「彼ら、『銀髪銀目の巨人たち』、それを敵に回すと、少なくとももう一種族も敵になるのだ。勝てるかね?この移民船……いや、『脱出船一隻』と我らボルの総力だけで。」

 副長は、黙っていた。

————『ボル』の戦艦、『カタパルト前ハンガー』

「大成功とはこういうことを言うんだよ、なァサラン?」
【相手が冷静だったからでしょうに。調子に乗ると郷治と夕子に怒られるわよ?誠児が見習ったらどうするの?あなたももう大人でしょう?】
「え、なんか厳しい……。」
【私は結と同じく、貴方の母親として接している以上ね。】
「あ、はい……。」
【【【【和久、お疲れーーーー。】】】】
「あ、どうも……。」
 仕事の前段階は十全に果たしたらもう一人の母親たるサランには注意をうけ、さらにウルスの民たちからはまるで近所の子供を見かけた叔父さんのような反応を示される一児の父たる40代。
中々にクルものがある。辛い。
 しかして父は挫けぬぞ誠児。貴様は孫扱いなのだからな!!今この場にはいないけど。

 さて、しかしまだ前段階が終わっただけだ。『交渉』は始まっていない。
だが……。

「相手、この船の艦長かァ……。」

 現状いる相手の中で最も最高位に値する者を交渉に出すことになってしまったとは。しかし!この場で判断が出るというのは良いコト!!
 それこそ、彼を通じてかれの『本星』や『王』、『政治家』などに話が通れば、遠からず事は収集する!!

 彼らウルス、そして地球側はそう思っていた。

————ウルス宇宙船『対講話用』艦船 第4ハンガー

「うおっ……。」
「あれが、相手の戦艦?」
「マジで動いてるのかよ……これもそうだが、どういう技術で……!!」
【前の残骸と同じ規格サイズ、やはり小さいですね。】
「「「「あんたらから見ればそうかもね。」」」」

 地球人、そしてウルス人の殆どが、その艦を見れる窓(のようなもの)、あるいはモニターに釘付けになっていた。
 なにせ両種族にとっても新たな出会い。そして地球にとっては未知の技術で動く『宇宙戦艦』。そして(ウルス人は【感覚】を通して見ているが)
見たこともない宇宙人。気にもなる。
 
 というか、地球人から見れば『大きすぎる』のだ。宇宙に出るには。
これを、情報では自分たちの半分ぐらいの体長を持つ種族が扱う?
 一体どうやって?何のためにここまで大きく?解らない。予測は出来ても、真実までは。
 それが今、解ろうとしている。
交渉以前に————相手が一体どういった者であるのか、それが解らなさすぎる。
 そして、戦艦が収容され、止まる。
「戦艦を止めたのはどちら側の技術なんだ?」
 オウは、近くにいたウルスの男性技術者に聞いた。
【あちら側だね。】
「こちらにもそう言った技術が?」
【あるよ?あちら側のアレとは少し違うけどね。】
 当然、そうなるか。
彼我の技術さはやはり隔絶している。

「……そうか。ありがとう。」
【いや?問題ないよ?機密でもないからね。……出てきたよ。】
「…………本当に、小さいな。」
「護衛もいるな。……こうみると通訳官殿も小さく見えるから不思議だ。」
【僕らやニックさんぐらいの身長を持ってるとね。あ、でもユーヤさんなら……】
「僕は平均身長だよ!!」
「遠回しに日本人の身長を下げるのは辞めな、バディ。」
「チクショオおおおおお!!」
 かくして、小さき客人はウルスの船に降りたった。
挨拶の時間だ。

————ウルス宇宙船『対講話用』艦船 廊下

「こちらに、艦長。」
 和久は、あの戦艦の艦長の横を歩いていた。
交渉の場に連れていくために、案内をしていたのだ。
「ああ、済まないな……アキモト・ツーヤクカン?」
「秋元は苗字で、通訳官は役職ですよ。」
「ははは、そうか。そうだろうな。すまない。……しかし、『コレ』は一体何なのです?彼らの【声】が急に聞こえるようになった。
貴方の言葉は解らないが……【もう一つの言葉】は解るようになった。
……翻訳機のようなものですか?」
「鋭いですね、その通りです。……っとと。」
 和久と艦長の間に護衛が割って入る。
「やめろ、彼は私に危害を加えるつもりはないよ。」
「…………gらkれf、ふmい。」
「済まない。」
「当然ですよ、良い護衛だ。」
【ほ、本当は僕が案内とかをやるべきなのに……。】
 クース青年がつぶやく。
【私たちの身長差じゃ相手の首とこちらの腰を痛めるわよ。】
 サランが諭す。
【あと、悪口ではなく現実として、その、踏みそうになるから……。】
 そして付け加える。
「そうなったら一たまりまりもありませんな。」
「ああ、そうだろうな。俺もそうだった。」
【和久、後で話があります。】
 サランが不機嫌そうに返す。そして————

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