外星通訳一族、”AKIMOTO”24


     『塩を8.486587928……あ、これ単位が違うやつね。』

 ———初代通訳官の妻、秋元 結がウルス料理を再現した時の現象———


——————地球 秋元家

「……首長め、あえて和久を困らせたな。」
 郷治はウルスとボル、そして通訳の和久、3種族の講話を【聴いて】いた。首長を注視して。
 
 ボルへの対応を、ウルス側は決めていた。

 だがそれの成否を一度『和久に問うた』。
秋元家が自分たちにとって重要な人間であると伝えるために、そして、だとしても『自分たちの意見が優先されている』と。
 地球人という種族を未だボル側は和久しか見ていない。
通訳官という「明らかに立場の低い者」しか見ていないのに「その者を重視する」、この『矛盾』に、相手がどう思うかだ。
 確かに和久は地球側の『脆弱さ』を話すだろう。だが、だとしてもボル側からすれば怪しいのだ、地球人というのは。

 髪、目、身長、全てが違う、にもかかわらず同じ格好をし同じ言葉を理解する者。地球人全てがウルスの言葉を理解していないという現状、「最初に遭遇した地球人の息子」というだけで優遇されている「一個人」。

 『明らかに怪しい』のだ、相手から見れば。
そうだ、ウルスの種族は『嘘をつかないし付けない、』だが『黙っていること』は出来る。全てを話す必要はない、ウルスの【感覚】拾える範囲を無暗に広げたくもない。
 ならば『黙っている』のと『そもそもの拾える言葉の範囲を抑える』、これが一番有効だ。

 相手は友人候補?そうだ、それがウルスの総意、ウルスの目指す場所。
だが『種族を預かる首長』としての考えは別だ。
 まだ危うい。相手は武器も技術も地球人よりはるかに高い。
故に『警戒』はせねばならない、しかし”ウルスの民意”がある。少なくとも衆目の前では『友人を迎え入れる形を取らねばならない。』
 嘘をつかず、しかし警戒する方法は『黙っていること』、『周りを誘導すること』。これだ。
 こうしてなんとか「ほぼ手つかずの未開地」に警戒対象を抑え込めた。
あとはゆっくりでも友好を築いていけばいい。支援は重荷にもならない。
高度な技術と物量、そして高い精神性と身体機能をもつウルスだからこそ受け入れられること。
 ……地球人を見て感じた自分たちの長所、それを最大限に利用しているのだ、彼は。

「賢くなったな、ウルスの民も。……否、元々我々よりもずっと賢い種族だったのだ、使い方を知らぬ、使う必要もない生き方だっただけでな。
……だが、それでも。」

 郷治は独り言ちた。
「我々は、対等でなければならない。」

——————地球 外務省 一室

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