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『JR西日本「サイコロきっぷ」販売総数28万枚!NFTチケットと相性がいい考察』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.30

■“人気すぎて”発売中止 JR西日本「サイコロきっぷ」 エントリー済なら2/12までに予約を

JR西日本が2023年1月27日(金)23時半をもって、急きょ「サイコロきっぷ」の新規エントリーを中止しました。「大変なご好評をいただいた」ためとしています。

「サイコロきっぷ」とは、スマートフォンの専用アプリ上でエントリーのうえサイコロを振り、出た目によって旅先が決定するというもの。旅先決定後に利用日と列車を指定し、きっぷを購入します。代金は往復きっぷ代込みで5000円です。きっぷは2023年1月時点で計3回発売されており、27日までは大阪市内発が販売中でした。

リアル「水曜どうでしょう」のようなJR西日本の「サイコロきっぷ」が大人気を博しているそうです。

「きっぷの販売総数は第1弾と第2弾(広島発)を合計すると約28万枚」と、どこに行くことになるのかわからないミステリーツアーな仕組みにも関わらず28万枚規模はすごい。

JR西日本からすると混む路線から混まない路線に乗客を分散させ稼働を平準化させる効果も期待できますし、「サイコロ」きっかけで発見された穴場がクチコミで広まるような波及効果も期待できます。

この規模感でチケットが売れるとなればJR西日本に限らず他の鉄道会社も同様の企画を立ててくるでしょうし、航空会社、バス会社、フェリー会社などの参加もあり得そうです。鉄道単一ルートに限らずさまざまな交通手段を組み合わせて、行き先のホテルや自治体も巻き込んで、サイコロで作られる旅の種類を拡張することもできます。

このようにJR西日本の単独企画ではなく複数の事業者が同様の企画を立て始めた時に役立つのがNFTチケット化です。

まだ実現されていないものも多くありますが、一般論として言われるチケットのNFT化の利点を挙げ、サイコロ旅に当てはめてみたいと思います。


NFTのメリット1:流動性を高める

NFTチケットは特定のチケット販売システムに依存せずに売りやすい、流通させやすい、が実現されることが期待されています。

サイコロでランダムに決まった旅程まるごとをNFTチケットにし、二次流通をアリにした場合、サイコロによって奇跡的に絶妙な旅程の組み合わせが出て高値が付くことも起きるかもしれません。

急に行けなくなってもキャンセルではなく代わりに行ける人に譲るという選択肢もアリでしょう。(飛行機や宿の利用者の変更は個別に必要ですが。)

このように二次流通しやすくなる流動性の高さがNFTのメリットです。


NFTのメリット2:共通規格化

相互運用性、インターオペラビリティとも言われますが、既存のチケット販売システムと違って複数事業者にまたがる共通規格として使用されることが期待されています。

JR西日本単独でチケット販売する場合は互換性や相互運用性を意識する必要はないのですが、複数事業者にまたがった旅程を組む際にはチケットの販売や利用に関する規格の統一化が必要なケースがあります。

NFTに統一されることで、チケットを持っているかどうかをウォレット接続のみで確認できるシステムが構築できます。

全事業者で同じSaaSシステムなどに統一する話し合いはなかなかまとまらないでしょう。チケットの所有確認システムの共通化だけでもNFTのメリットはあります。


NFTのメリット3:参加履歴の記録と証明

いわゆるトークングラフマーケティングと呼ばれる分野です。

今回のJR西日本のサイコロ企画に参加した人は旅行好き and または or 鉄道好きという方だろうと思います。

今後JR西日本以外の鉄道事業者が同様の企画を立てた時も、また参加してくれる可能性がとても高いと目されます。

事業者から見ると、サイコロ企画に参加した経験がある人を優先して声掛けすればチケット販売計画も立ちやすく売り切れるかどうかの心配が軽減されそうなのは大きなメリットです。

個人情報保護の観点からJR西日本が顧客データを開放してくれはしませんが、NFTであれば公開されているオンチェーンデータを参照して個人を特定しないかたちで過去の参加者に優先案内することは可能です。

参加者から見ても、「水曜どうでしょう」のように旅先に到着したあと次の旅先もサイコロで決める、サイコロ旅を継続する履歴をNFTで作ってみたり、旅仲間同士で参加履歴を見せ合ったり、同じ行き先の人同士がつながるきっかけにするなど、オンチェーン記録された参加履歴を使った楽しみ方が拡張されます。

JR西日本、JR東日本、私鉄各社、バス会社などバラバラに実施されているサイコロ旅企画の参加履歴を統一的に扱えれば、旅好き・鉄道旅好きなどが集まる良いきっかけになるはずです。


■NFTらしさはこの3つの組み合わせ

NFTアートの投機性に注目が集まりがちだった昨年初頭までのブームは暗号資産市場の暴落で見る影もなくなり、NFTに実用性を持たせようという方向に向きつつあるのが最近の流れです。

とはいえ

ポルシェの世界の舞台裏へのアクセス、Discordでの投票、物理的ノベルティ配布、コミュニティ投票で選出されたデザインで実物のポルシェ作成、限定イベントへの参加権、パートナーアーティストのNFTがエアドロされる、

というさまざまなユーティリティを予定していたのに一次販売で売れ残り多数、mint割れ(その後投機的に爆謄したが)など大失敗した事例もあり、ファンに実用的ユーティリティを提供するだけでは成功しないのも確か。

今回NFTの3つの特長・メリットを挙げましたが、特に共通規格化や相互運用性を活かした実用性・ユーティリティを実現できるかがカギではないかと考えています。

単独1社でユーティリティを提供するならNFTである必然性がないからです。

売り買いしやすい流動性の高さ、いろんなところで使える相互運用性、参加履歴や参加証明、これら3つを使った実用性が実現すればNFTらしい・NFTである必然性がある、という企画になります。ポルシェのようにNFTである必然性が見えないものは流動性のみに注目され投機的売り買いに終始してしまいます。

JR西日本のサイコロ旅企画は企画自体が非常に面白いのはもちろん、今後鉄道チケットだけでなく他の移動手段、旅先の宿や観光施設などさまざまな人たちを巻き込んで相互運用していくとより面白くなりそう。ということはNFTチケットである必然性も作りやすいと感じます。

ウォレットの扱いが難しいなど課題は多いのですが、NFTチケット化は今後NFTの可能性をわかりやすく見せてくれる分野のひとつとして注目です。

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