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『自分の時間を他者と交換、世界110カ国10万人が登録するタイムバンク「TimeRepublik」と仮想通貨の相性』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.6.25

■自分の時間を他者と交換、世界110カ国10万人が登録するタイムバンク「TimeRepublik」とは

TimeRepublik では、ユーザは15分の時間に相当する仮想通貨、タイムコインと引き換えにサービスを提供することができる。ユーザは、犬の散歩や家事の手伝いなどのリアルのサービス、カウンセリングや専門的なアドバイスなどのオンラインサービスを提供することでタイムコインを獲得できる。そして、このタイムコインを使って他のユーザからサービスを購入することができる。

「TimeRepublik」は一言でいうと「時間あたりの労働を内容問わず等価交換する、仮想通貨払いのランサーズ」でしょうか。

いわゆるクラウドソーシングサービスと呼ばれるものを、案件単位ではなく15分毎の時間単位に表現をしなおして「自分の時間を他者と交換」という表現にしているのがキャッチーです。


TimeRepublikの基本的な流れ

基本的な流れは以下の通りです。

1.ユーザーは、最初に5時間分の「サービスを受ける権利」を受け取る
2.15分単位で登録された「〇〇を教える」「〇〇を作る」などの労働を、手元にある5時間分の時間払いで購入します。
3.自分自身も15分単位の労働を登録し、発注を受けることができます。

株式投資のイロハを教えてもらうことも、草むしりであっても、労働内容に時給単価の差を設定せず、15分の労働を等価交換するという「時間」の交換のみで実現させているところがユニークです。

1920年(大正9年)に大阪で生まれた主婦で発明家の水島照子氏(故人)は、時間はお金よりも価値のある資源であり、時間を交換することで人々は助け合い、より強固なコミュニティを築くことができることに気づき、1973年(昭和48年)、世界初のタイムバンク「ボランティア労力銀行(現在のボランティア労力ネットワーク)」を設立した。

この銀行のコンセプトはシンプルで、各人が1時間のサービスを他の人に提供し、将来同じ時間のサービスを他の人に依頼できるというものだ。水島氏の行動は、世界中にタイムバンクを作るきっかけとなった。現在、50カ国以上にタイムバンクがある。

タイムバンクの発想は1973年に日本の主婦から生まれたものとされており、現在では50か国以上にタイムバンクがあるそうです。


労働時間を表すトークン「TimeCoin」

タイムバンクは労働内容に単価の差を設けず時間量の交換のみで受発注します。その支払いに使用できる「時間」の量を表すのが「TimeCoin」という独自トークンです。

つまり1時間働くと「1時間分のTimeCoin」が受け取れますし、「1時間分のTimeCoin」を支払うことで労働を買い取ることができます。このように間に「お金」を介在させることで「労働と労働」を交換する必要をなくし、後日お願いする時間差を発生させることができるようになります。

お金には、交換機能、価値保存機能、価値尺度機能の3つの機能と役割があります。

価値尺度、つまりお金に換算して高い・安いで比較できるようにする機能はタイムバンクである「TimeRepublik」では時間あたりの労働は等価だとしていますが、残り2つの「価値の交換」と「価値の保存」についてはTimeCoinというトークンで実現しています。

TimeCoin払いで労働を依頼でき、TimeCoinを貯めることで必要な量の労働を買えるようになります。


TimeCoinは時間交換を崩さないか?

どんな労働内容でも時間あたりは等価、なので時間を軸に交換が可能だとするのがタイムバンクという仕組みの特徴なはずなのですが、TimeCoinで払えるならTimeCoinを市場で買ってきて払うこともできてしまいます。

仕事を依頼したい人が増えればTimeCoinの買い圧が増えます。TimeCoinあたりの労働内容が高いか安いかで価値を判断するようになれば、時間あたりの労働は等価であるというタイムバンクの原則が崩れてしまいます。

自分自身では労働力を提供するつもりのない人が、TimeCoinを外部から買って仕事を発注する。逆にTimeCoinあたりで割安に労働力を提供する価格競争が起きる。

このいずれもタイムバンクのコンセプトを崩すものだろうと思います。しかしTimeCoinのトークノミクスを考えるとむしろTimeCoinの値上がりにつながる行為であるため、一般的には運営はこれらの行為を推奨します。

こうなってくると、冒頭でお伝えした「時間あたりの労働を内容問わず等価交換する、仮想通貨払いのランサーズ」からタイムバンクのコンセプトを抜いた「仮想通貨払いのランサーズ」そのものになってしまいます。

世界中でかなり長い期間タイムバンクのコンセプトは成立していたことに着目すれば時間を軸にした労働の交換はニーズもあるし成立しうるものなのかもしれませんが、トークンが中心になるWeb3のシステムと相性の悪さを感じます。

「TimeRepublik」は

「不完全なお金」としての デジタルトークン 鳩貝淳一郎 東京大学大学院経済学研究科・金融教育研究センター特任研究員 2019年6月(PDF)

で2019年に研究対象とされています。現在までサービスが続けられているということは、単なる「仮想通貨払いのランサーズ」にならないような工夫がなされているのかもしれませんが、今回はニュースの拾い読みに留まり深掘りが不十分です。

タイムバンクのコンセプトとトークン経済の組み合わせはとても興味深いと感じます。MMORPGなどゲームの世界でもギルドの中で応用できそうですし、DAOなどコミュニティでも労働に対する報酬の設定方法に応用できるかもしれません。引き続き研究してみます。

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