『TikTokが「役立つ検索エンジン」ブランディング開始。Z世代とタイムスマート志向』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.20

■TikTokは検索エンジンとしても使える!? 60秒のプロモーション動画を英TikTokがYouTubeに公開

30 分も 1 時間もある動画をのんびりと観ていられないですよね。
また、PR 動画で親子が探しているような「○○の仕方」や「○○の方法」といったハウツー系の調べものは TikTok 動画の検索と相性が良さそうです。

何か調べものをするときにYouTubeを使うことがよくあります。

ググって出てきたWebサイトでは文章を読むのに時間がかかったり、動きや操作などは動画の方がわかりやすかったりします。つまりYouTubeは検索エンジンとして機能していますし、多くの方が検索エンジンとして使っていると思います。

しかしYouTube動画は収益化目的の動画だと10分を超える必要があることもあり、正直知りたい情報を知るためだけに視聴にかかる時間が長すぎます。10分に合わせるために要点以外の話で引っ張られたり、最後まで見てもらうために結論を先に言わなかったりと、無駄に時間が長くかかります。

かたやTikTokはショート動画がメインコンテンツですが、「踊ってみた」動画に代表される役には立たない面白動画が多数投稿されています。

実は生活のTips動画など役立つ動画もたくさんあるのですが、TikTok未体験の世間一般のイメージは「役には立たないがノリがいいショート動画で無駄に時間を溶かす」だと思います。

その先入観を覆し、「YouTubeのように無駄に長時間かからず短時間で知りたい情報が受動消費できる動画で手軽に得られますよ」というイメージを新たに付加することで、これまでTikTokを避けていた層から新規ユーザーを獲得しようという施策がイギリスから始まったようです。


■タイムスマートという価値観の広まり

TIME SMART(タイム・スマート)という書籍を通じて、時間の大切さに改めて注目が集まっています。

お金より時間が大事、タイムリッチという考え方が改めて言語化され、時間を有効活用するためにVoicyやポッドキャストなど音声コンテンツを「ながら」でインプットすることがブームになりつつあります。

TikTokの今回の新規獲得マーケティング施策は、ショート動画というフォーマットに「役立つコンテンツ」を組み合わせることでタイムスマートという現代的価値観にフィットさせてきたとも言えます。

また、「TikTokを長時間ダラダラと見続けてしまって時間を無駄にしてしまった」という徒労感をユーザーに与えてしまうことが「TikTok封印」という極端なかたちのユーザー離れを促していることにも気づいているはずです。

広告をたくさん閲覧させることがTikTokのビジネスモデルなので「時間を溶かす」ことはTikTokにとっては良いことですが、「TikTok封印」が風潮化することは避けなければなりません。


■Something goodな「ながら」コンテンツが密かなブーム

「ながら」時間を役立たないコンテンツで埋めるのではなく、何か役立つコンテンツで埋めようとするのも最近のトレンドです。

Spotify Podcastの日本でのランキングを見ると、ラジオ番組由来のポッドキャストを省いた場合、語学・歴史・経済・時事ニュースなど役立つ系コンテンツがランクインしていることがわかります。

これらが地上波ラジオ局が制作する芸能人番組を抑えて上位にランクしていることからも、隙間時間を埋める「ながら」には新たな発見や学びがある役立つ、自分にとっての「Something good」なコンテンツが求められているようです。

これもタイムスマートのトレンドと合致します。


■タイパ志向が顕著なZ世代

タイパを求める人々の根底には『時間が惜しい』という共通した感覚があります。大切なのは、時間が惜しいという感覚を持つ人が『時間がないから時間を大切にしたい人』と『待ちたくない、今すぐ楽しみたい人』の2種類に分けられることです。前者は『時短型』、後者は『バラエティ型』といえます。

Z世代は「バラエティ型」のタイパ志向と分析し、さまざまなコンテンツを効率よく摂取することがデフォルトの発想になりつつあるとしています。このダイヤモンドの記事の論考は非常に参考になります。

TikTokはZ世代など若年層から火が付いたSNSですが、ショート動画というフォーマットのタイパの良さが当初受け入れられたものの「役立たないコンテンツに大量の時間を溶かす」ことへの忌避感覚も生まれつつあります。

Instagramの「盛る」ことへの時間浪費感覚から、仲間内だけにリアルを共有する「盛れない」写真共有SNS「BeReal」が流行ったのもタイパ志向の表れの部分があります。

そんなトレンドの移り変わりを感じ取り、TikTokが「役立つショート動画コンテンツを見つけられる検索エンジン」というブランディングに注目しはじめた、というのが今回の動きだと捉えています。

リキッド消費では製品やサービスが“役に立つこと”に価値が置かれる。たとえば、絵画などの芸術品は、本来その存在自体に価値がある。しかしリキッド消費傾向の強い人は「絵画を見ていると癒やされるから価値がある」という見方をする。つまりツールとしての価値が重視されるのだ。

楽しいTikTokから使えるTikTokへ。ツールとしての価値が重視されていけばその他のSNSやWebサービスにも波及するでしょう。TikTok影響で今後のWebサービスは「タイパ×Something good」=ツールとして使える方向にトレンドシフトするはず。そしてゲームなどエンタメにも「タイパ×Something good」の流れが及ぶのではないかと予想しています。

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