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『Google PAYウォレット戦略に見るブロックチェーン界隈に必要なアプローチ』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.6.4

■Googleがウォレットアプリの新しい活用方法を共有

Googleは、Androidの Google ウォレット アプリの5つの新しい活用方法を公式ブログで共有しました。この紹介の中では画像からパスを保存したり、メッセージからパスを保存する方法などが挙げられているほか、一部対象国・地域における健康保険カードやその他のプライベートパスの保存、ID・運転免許証を保存できるようになることなどが紹介されています。

例えば、画像からパスを保存するには、バーコードやQRコードが付いている物理カードなどの写真を撮影するだけで簡単に保存できるようになります。これは交通機関のQRチケットやジムのパスといったものまで含まれています。

ウォレット=財布ですが、今や現金を持ち歩く所謂「財布」よりスマホの方が確実に肌身離さず持ち歩いているという人も大勢だと思います。

GoogleはAndroidに内蔵しているGoogleウォレットをどんどん充実させる方針のようです。今回5つの新しい活用方法を発表しました。

ざっくり言うと「スマホだけでチケットやID管理が完結する」ことを目指すもので、すべてのチケットをGoogle PAYウォレットから参照できる世界観です。

現場でもらう駐車券、オンラインで買う鑑賞チケット、健康保険証、免許証、社員証などを全部スマホ1台で済ます。これは最高なビジョンです。

かたやNFTチケットもさまざまトライされていますし、NFTアートの所有がコミュニティの参加資格となるという使い方もされています。ブロックチェーン界隈だけが特殊に閉じてしまうと、今回Googleが提示している一般にウケそうな世界観から孤立してしまうと心配しています。


スマホウォレットの5つの新しい活用方法

1.画像から各種チケットを簡単に保存

たとえば、エクササイズに行くときに使用する物理的なジムメンバーシップカードを持っています。小さく、簡単に紛失する可能性がありますが、バーコードが付いているため、すぐにカードの写真を撮って安全なものを作成できます, ウォレットのデジタル版。これは、バーコードまたはQRコードを含むすべてのパスで機能し、トランジットQRチケット、パーキングパス、eコマースリターンQRコードなどのパスにも役立ちます。

従来はクレジットカードや「〇〇PAY」のような支払い方法をGoogle PAYで扱えるようにすることが主でしたが、会員証、入場券、駐車券、領収証などフィジカルで受け取るさまざまなチケット類を、写真を撮ることで格納できるようにするという活用方法が想定されています。

もちろんチケット発行側がGoogleが定める規格に則っている必要がありますが、ユーザーはスマホで写真を撮るだけで紙のチケットを持ち歩く必要がなくなります。また対応スマホを持っていない人は従来通り紙のチケットを使えばよく、大きなオペレーション変更が必要ありません。


2.健康保険カードやその他公的パスを安全に保存

覚えているので財布に持っていたのは健康保険証です。これをGoogleウォレットにも簡単に追加できます。GoogleとHumanaは、Googleウォレットに保存するために、健康保険カードのデジタル版を開発しています。これにより、ヒューマナのメンバーは、手のひらから迅速かつ安全に保険情報にアクセスするための便利な方法を提供します。また、英国では、HMRCアプリから国民保険番号をウォレットに保存できます。

日本でもマイナンバーカードに健康保険証を統合する法案が6月2日に可決成立しました。

そして先日Android端末でマイナンバーの格納が始まりました。

まだスマホにマイナカードを格納してもやれることは限定的なのですが、将来は健康保険証の機能がマイナカードに統合されればスマホだけで健康保険証を提示できるようになるはずです。


3.身分証明書をスマホに格納

IDをウォレットに保存できるように取り組んでいます。今日から、メリーランド州のIDまたは運転免許証を持っている人は、Android 8.0以降を実行していて、デバイスロックが有効になっている電話のIDをGoogleウォレットに追加できます。今後数か月以内に、アリゾナ、コロラド、ジョージアの居住者が参加します。

上記はアメリカの例なので「ID」が指すものが日本と少し違いますが、運転免許証は日本と共通の身分証明書の代表です。

先述の健康保険証に続いて、運転免許証もマイナンバーカードへの統合を既に閣議決定しており、2024年度末の施行を目指しています。

個人的にも車を運転する時に「わざわざ」免許証が入った財布を取りに行くのが非常に面倒に感じています。スマホは常に持っていますので、早く統合してほしいと願っています。


4.メッセージからチケットをスマホに格納

間もなく、RCSが有効になっているGoogleのメッセージアプリを使用するユーザーは、メッセージアプリで完全に旅行チェックインプロセスを完了することができます。搭乗券または列車のチケットはメッセージアプリで直接受け取り、そこからウォレットに保存できます。これは、ベトナム航空とスペインを代表する鉄道事業者であるレンフェで展開を開始します。同様に、レストランはTagMeなどの予約システムを使用して、予約の詳細を顧客に送信し、将来の使用のためにウォレットに保存できます。

こちらは格納する対象の話ではなく格納する手順の話です。

「1.画像から保存」はフィジカルなチケットを渡されるシーンを想定していますが、こちらはオンライン予約などを想定しています。

申し込み完了するとメッセージを受信、その受信をもってGoogle PAYウォレットにチケットが格納される、というものです。

映画館やライブ・演劇などで電子チケットを採用するところは増えていますが、今はそれぞれの運営主のサイトやアプリを開く必要があります。これをGoogle PAYウォレットに一本化しようというもので、「今回の電子チケットはどこから開くんだっけなー?」という迷子を防ぐことができるようになります。


5.社員証などローカルID向け仕様の提示

私たちは常に、世界中の人々が財布をさらに明るくし、セキュリティとプライバシーを優先しながらウォレットをより便利にするための新しい方法に取り組んでいます。たとえば、今年後半にGoogleウォレットに企業向けバッジの導入を開始し、従業員に建物やカフェテリアなどへの便利で安全なアクセスを提供します。

会社の入館証をスマホに格納するのは当然想定されるのですが、新しい活用方法として5項で提示しているのは入館システム自体の方ではないかと思います。

誰がいつ入館したかは各社のプライバシー管理によるものになりますので、既存の入館システムのID体系をそのままGoogle PAYウォレットに保存できるようにすることに不安を感じる企業もいるかもしれません。

そこでGoogleは「企業向けバッジ」と称して会社のID・入館証の規格仕様を提示するものだと上記を理解しました。企業向けバッジの仕様に合わせて入館システム側の認証を構築すればよくなるのでしょう。あまり詳しく書かれていないので推測ですが。。


NFTチケット、暗号資産ウォレットだけ孤立しないように

暗号資産ウォレットも、さまざまなコイン・トークンというFTや、アートからチケットまで幅広くなってきたNFTを参照・管理するものとして作られています。

ブロックチェーンサイドでも暗号資産での支払い・送金や、チケットNFTなどのユースケースの拡大が進んではいますが、今の使い勝手では一般普及は厳しいでしょう。

ニーモニックフレーズを忘れると永久に使えなくなる、チェーンを間違えると送金失敗してお金を失う、エアドロで「もらえる」と思って接続したら「奪われる」だった詐欺に遭いがち、など、一般人に使いこなせるものとは程遠い残念なUXなのが暗号資産ウォレットの現状ですが、KDDIの「αUウォレット」のように運営サイドが一定のサポートが可能になるUX改善例も出てきています。

暗号資産ウォレットの根本的なUXの悪さはもちろん改善が必要ですが、オンチェーン情報しか扱わないクリプトウォレットが解消するペインは「紙の駐車券を持ち歩きたくない」という日常の困りごとよりずっと狭く、一般にクリプトやNFTチケットを広めるにはもっと視野と懐を広げる必要があります。

チケットが「NFT」かどうか、ましてや「どのチェーンか」を一般人が意識する必要がない状態にすること、そしてGoogle PAYウォレットなどスマホのポータルに乗っかっていけるような、暗号資産ウォレットだけ孤立しないようなマーケティングアプローチも必要なのではないかと思います。

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