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『TOEICスコアをブロックチェーン証明書化。資格のオンチェーン化Blockcerts規格とDID』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.2.1

■TOEICスコアやトヨタの知財管理、DX化で加速するブロックチェーン導入事例

日本でTOEICテストを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は31日、TOEIC® Program公開テストスコアに、ブロックチェーン技術を活用したデジタル公式認定証を導入することを発表した。

資格情報をブロックチェーンに刻むというアイディアは以前から出ていましたが、資格の中でも大御所本丸、TOEICでブロックチェーンによる資格証明を導入することが発表されました。

デジタル公式認定証の導入に先立ち、2023年11月の公開テストより紙の公式認定証は廃止され、デジタル公式認定証のみ発行する予定。これにより紙の公式認定証に必要な紙資源や、印刷・郵送に伴う排出ガスが削減され、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する利点もある。

しかも同時に紙の資格証明書の発行を廃止してデジタル公式認定証に一本化するという本気の見せようです。

私も採用面接をする側として応募されたたくさんの履歴書を見ますが、履歴書に書いてある卒業履歴や資格取得状況、TOEICの点数などの多くは真実が書かれていることを信用するしかないものが多くあります。

最終的に採用すると決まった際には大学の卒業証明書を提出してもらったり、経歴詐称が発覚した際には解雇事由となる旨を説明したりして不正の抑止に努めるのですが、ブロックチェーンに刻まれたデジタル公式認定証が確認できれば履歴書の信頼性が格段に上がります。


■資格証明の世界標準規格「Blockcers」

大学の卒業証明書もブロックチェーンに刻まれ始めています。

NFTのアーキテクチャーにはBlockcertsを導入している。
Blockcertsは書類が改ざんされていないことを担保する「完全性」、書類の発行元が正しいことを示す「真正性」に優れたW3Cに準拠したOSSで、ブロックチェーン証明書の世界標準規格とされており、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学も導入している。

千葉工業大学の学修歴証明書NFTは、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学でも採用されているブロックチェーン証明書の世界標準規格「Blockcerts」に準拠しています。そしてTOEICのデジタル公式認定証も同様にBlockcerts規格です。

BlockcertsはW3Cに準拠したブロックチェーン証明書の標準規格であり、その規格を満たすブロックチェーン証明書を発行するためのSDK(開発ツール)を含んだオープンソースのプラットフォームでもあります。

ブロックチェーンの基本的な機能を利用すれば、ブロックチェーン証明書を発行することは比較的容易です。しかし、第三者機関が証明書を検証する手間を省き、利便性を増すためには、
・その証明書が改ざんされていないか
・どのようなコードによって発行されたのか
・どのブロックチェーン公開鍵(ブロックチェーンID)と紐付いているのか
といった一連のプロセスが透明化され、誰でもそのシステム自体の挙動を検証できる仕組みが必要です。

これがオープン規格を採用しなければならない理由であり、トラストレスな証明書の検証を実現するファクターになります。
実際にBlockcertsのライブラリ・ツール・モバイルアプリはGithubで公開されており、誰でもその中身を検証及び利用可能です。

ブロックチェーンに刻むこと自体は誰でも簡単にできてしまいます。従ってブロックチェーンで証明書を発行したからといって資格が有効かどうかの証明にはなりません。

例)卒業証明書
紙で発行された場合、就職・転職活動等で卒業証明書を受け取った企業はそれが本物かどうかを判断できないため、学校側に確認を取らなければならないケースも発生しています。
(中略)
これらの本質的な問題は、「その証明書が正しいことを、証明書の発行元に確認しなければならない」という点であり、これは単にPDF等でデジタル化しても解決する問題ではありませんでした。

紙の証明書でもブロックチェーンに刻まれたデジタル証明書でも、発行元に事実確認しなければならないとしたら証明書としての役割を果たしません。

ブロックチェーン技術の特徴は、ブロックに記録されたトランザクションを改ざんできない点にあります。この機能によってデータを詐称することが困難になるため、発行元(上記例では教育機関)へ問い合わせることなく、その証明書の内容が正しいことを検証できるようになります。

今までアナログの証明書によって担保していた「任意の事実」をデジタル化し、ブロックチェーンというオープンなネットワークで電磁的記録として扱えるようになったという点において、Blockcertsは画期的な仕組みです。

トランザクションを改ざんできないということに加え、

「ISSUER」 = 証明書発行者
「Issuer’s public key」= 証明書発行者のID

発行者が登録制なうえオンチェーン上で発行者が確からしいこと(例えばこの発行者IDは確かにマサチューセッツ工科大学だろうこと)を確認できることと組み合わせることで資格の有効性を発揮しています。


■公的資格に限らないブロックチェーン証明書の使い道

学位や資格だけでなく、例えば「Youtubeのチャンネル登録者数が1万人以上」「twitterのフォロワーが10万人以上」といったカジュアルな実績もスマホで管理したり、自身のスペックとして外部にアピールしたりするといった、まったく新しい形での社会資本形成が可能

公的資格に限らず、上記のようにインフルエンサーとしての証明もブロックチェーンが役立ちます。

YouTubeやTwitterのフォロワー数は見に行けば確認可能ですが、なりすましだった場合に見破るのは困難かもしれません。またサービス終了したSNSでの過去の実績を証明することも困難です。

しかしその時々でブロックチェーン上に証明書を刻んでおけば、確かになりすましではない、確かに過去実績を挙げている、ということが証明できるようになります。特にサービス終了の影響を受けないという点は栄枯盛衰が激しいネットサービスにおいては重要度が増しそうです。

今後はより幅広く「〇〇に詳しい」という識者としての証明もブロックチェーンが活用されるようになるでしょう。


■自分が持っている資格を提示するUXに課題

自分の履歴や成績などを証明するのですから、「自分」を軸に持っている資格や成績などが全部ぶら下がっているのが理想です。

しかし今のところ、自分を軸に一覧表示するようなUXにはなっていません。

Blockcers準拠資格に関してはBlockcersのサイトで一元的に確認はできますが、取得資格の記録ごとに検索する必要があり面倒です。

また、先述の千葉工業大学の卒業証明書のようにNFT化すれば、(移転可能なNFTであれば)自分のMetaMaskなどウォレットに移動させて自分軸で保有資格を一覧で見せることが可能にはなります。

しかし他人の卒業証明書も自分のウォレットに入れることも可能になってしまいます。

では移転不可能なSBTならいいのかというと、大学が発行した時点で持っているウォレットに一度入れたら二度と移動ができなくなる不都合があります。

ウォレットのシードフレーズをなくしたら。
もっと使い勝手のいいウォレットが登場したら。
イーサリアムチェーンとソラナチェーンとに証明書が分散したら。
今後もっといいチェーンが登場したら。

など、一生モノである資格を自己管理型のウォレットに収納しておくにはまだまだ不安が多いのが現状です。

将来、分散型ID=DIDが技術的に確立した後なら、DIDの下に複数のウォレットをぶら下げることが一般的になり、取得した資格もDIDの下にぶら下げて所有するということになると予想しています。

そして公的資格からカジュアルなSNS活動履歴までさまざまな資格がブロックチェーン証明書化されていくに従って、DIDの需要が高まり開発が加速していくだろうと思います。

スマホをタッチするだけで支払い完了するキャッシュレス決済並みの手軽さで資格証明。自動車の運転免許情報が入ったスマホをクルマにタッチして運転開始したり、家のドアを開けるのも居住者の資格情報がカギになる。

そんなDID接続するだけで資格が提示完了する未来はそれほど遠くない時期に来るはず。何を資格化すると面白いかの競争は今もう始まっています。

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