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Be yourself〜立命の記憶I~25

◆第16章:初めてのデート(1)


ホテルの部屋に無事に戻って来れた私は、彼に連絡した。
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2016/11/1 11:19
よし、ホテルに戻れました!

ニノ
2016/11/1 11:33
飯どうしょうか?


2016/11/1 11:33
あれ、エビ食べるんじゃないの?

まだ、待てるよ。

ニノ
2016/11/1 11:47
もうちょっと待ってて

こっちまで来れないよね?


2016/11/1 11:48
あー、タクシーになんて言えばいいか、わかれば行けると思うよ。

ニノ
2016/11/1 11:48
今住んでるとこから一駅なんだけどね

タクシー難しいかな

ちょっと着替えに戻るね


2016/11/1 11:49
ホテルの人に呼んでもらえば行けるんじゃない?
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そしたら、彼から通話の呼び出しが鳴った。
わーぉ、彼から電話なんて何年ぶり?w

電話を取った。けど何か、通話品質が悪いのか、彼の声が聞こえない。
たまに「聞こえる??」って途切れ途切れ言ってるだけ。
私、「あー、ちょっと聞こえにくいからかけ直すね。一旦切ってー。」って言って切ると、かけ直すボタンを押した。

彼の声は聞こえなくて、私の声だけ届いてる感じだった。

かけ直すと、彼が言った。

「飯どうする?」
「え、だってこれからエビ食べるでしょ。」
「いや・・、飯どうする?」
「いや、だからエビでしょ?」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・俺、一旦家帰ってから着替えて行こうと思ってるからさ。」
「あ、うん、分かった。えーとタクシーでどこかまで行く?」
「いや、こっちのタクシーやめたほういい。ウチのほうまで歩いてこれない?」
「あー、歩ける距離なら大丈夫だと思うよ。遠い?」
「ちょうど、さっきのカフェから歩いたくらいの距離。反対方向に。俺も歩いていくから途中で会えると思う。」
「あ、分かった。じゃぁ大丈夫、歩けるよ。さっきと反対方向に行けばいいのね。」
「そうそう。じゃぁ、俺着替えて来るから。」
(・・・デートみたい。)
「俺、着替えて来るから。」

2回言われてハッとした私は、こう答えた。

「はい・・・。ぜひ。」
「じゃぁ、後で」
「うん、後でね。」

よし!これはデートですね?ほぼデートですね?
20年経ってようやく初デートなワケですね、私達?

17歳で初めてキスして、37歳で初めてデートしてるって事は、普通の人が2日でする事に20年かかってますから!
って事は、仮に最後までしてしまうとしても、普通の人が1ヶ月だとして計算したら、私達の場合、300年以上先だな!
よーし、大丈夫!ヘンな事にはならないですね、これ!
とにかく、本日は、何も考えずに楽しくエビを食べさせてくださーい。

よし、出かけよう!

彼に言われたとおり、さっきの道を右側に曲がった。
曲がる前に横断歩道があったけど、相変わらず信号が無かった。
隣に居る女性2人組が渡るのを待っていたけど、ずっと喋っていて全然渡る気配がない。
私は、もういいもんっ、っと、車の途切れた隙を狙って、1人で渡った。

よーし、出来るじゃん、出来るじゃん。そんなに躊躇しなくたって、そこまで勇気を出さなくたって、いいんじゃん。

迷った時は、自分の気持ちに従えばいい。

私、何でも出来る気がした。

で、ひたすら真っ直ぐ歩く。
でも、さっき歩いていたのとは、全然気分が違う。私、ものすごくゴキゲンだった。

右側に曲がった方角の歩道は、人も少なくて、広くて歩きやすかった。

ショーウィンドウに映る自分の姿を、何度も眺めたりして。
黒のロングワンピースに、黒いつばの大きな帽子をかぶってサングラスをしている。
オレンジの花柄のショールを掛けてはいるけど、うーん、真っ黒だな、私。

本当は、デートには普段こんな格好で行かないんだけど(いやデートなんて何年もしてないけど)、彼にローカルな場所だから黒でって言われたんだし、仕方ない。
でも、これはこれでカワイイかな?ちょっと女優みたいかな?
とか、勝手に解釈して、歩いていた。

歩いていると、右側に目を見張るような美しい門があった。
車一台分が通れるくらいの門で、黒を貴重としたフレームに、金色の装飾。
いかにも、タイの伝統的な歴史ある何かの模様のようだ。
近くに警察官の制服を着た人がいたけど、警察署なのかな?

私はあまりの美しさに、つい写真を撮った。

それからまた歩き出した。

ショーウィンドウに映る自分を見ていると、ちょっと太った2歳くらいの男の子が後ろ向きに歩いている。ウチの次男くらいかな?と微笑ましく見ていたら、ちょうど私とすれ違うとこで、足を引っ掛けたのか、尻もちをペタンとついた。
わーん!と泣いてしまって、あらあらと思ったんだけど、その姿が可愛すぎて、ニコニコしてしまった。通り過ぎた後も。
後ろから子供の泣き声が聞こえていた。

あぁ、子供の泣き声がこんなに気にならなかったの、久しぶりだ。
いや、自分の子供以外の子供の泣き声だったらあまり気にしてはいなかったけれど。
でも、子供の泣き声で、ついソワソワしてしまっていた前の私。

タイに来て、私、変わったな。
なんだか、とても、ニコニコしている。
私、「いつも元気な愛ちゃん」だったんだよね、私、今そんな自分に戻ってる。

だって、これからデートだもん!
バッグは旅行用でダッサいけど、いいよ!彼はそんな事気にしないでしょ!
うん、他のカワイイとこ見てもらおう!

よーし、デートだ、デートだー!!!

私は、すっかり舞い上がって、20年ぶりのデートに浮かれた。

ちょっとカワイコぶりながら、ウキウキの気分で街を眺めながら歩いている私の目線の先に、白いシャツの中に黒のTシャツを覗かせて、白いストレッチパンツを履いた、オシャレな男性が居た。

あ!彼だ!

私は、顔が確認できるくらいの距離まで近づいた時に、あ、やっぱり!というリアクションで大きく手を振った。
うーん、もうちょっと女らしく美しい所作が出来ないもんかね、私・・・。

彼に駆け寄ると、彼は真顔で「おぉ」と言った。
もう、私、彼がどんな顔してても気にしない事にした。
だって、昨日の夜、心を開いてくれた瞬間があったもんね。なんとなくだけど、私の事、嫌いでは無いのは分かった。

反対側からタクシーに乗っていくから、と言った彼と横断歩道に並んで待つ。
私は、掛けていたサングラスを外して、彼を見て、つい我慢出来なくて言ってしまった。

「もぅ、あなたホント、カッコよくなったね!」

あ、そう?と照れる彼。
もう!そういうとこも、カワイイ!

横断歩道を渡って、反対側の歩道に着く。
タクシーが通るのを待っている間、私はやっぱり自分が黒づくめなのが残念になったのでこう言った。

「なんか、黒でっていうから、借りた服になっちゃってオシャレ出来なかったんだけど、サンダルはベトナムで買ってきたんだー。」
「ベトナムで?」
「そう、荷物になるから日本から持って来なかったの。ほら!」

そう言って、私は、足先を10cmくらい上にあげて、スワロフスキー調のストーンがたくさんついた、ベージュのサンダルを見せた。Konamiさんとお揃いのやつ。
ブランド物じゃなくてもいい、カワイイものはカワイイのだ。

「カワイイでしょ?」
「うん。」

彼はとても優しそうに笑って答えてくれた。
私、笑顔になる。「君がね」って言われたみたいに嬉しかった。

ほどなくして、彼が白いタクシーを止めて、運転手に何かを話すと、車はそのまま去っていった。

「あれ?何で乗らないの?」
「こっちのタクシー、行き先によっては乗せてくれない事があるんだよ。乗車拒否は当たり前。」
「へぇー。」

私、乗車拒否なんかされたら、何で?何で?って、イチイチすごい悲しくなってしまうから、こっちのタクシー絶対乗れないわ・・・って思った。

続いて、ピンクのタクシーが来た。
彼は行き先を告げると、「乗って」とドアを開けてくれた。

乗り込んだ私達を乗せて、タクシーは走り出した。
彼がタイ語で何かを色々説明している。結構長く説明している。
伝え終わるのを、見計らって、私はこう言った。

「さっき、忙しいのに、道に迷って、たくさん連絡してごめんね?」

私、彼を見上げながら、申し訳ないと思って、困った顔で伝えた。

「あ、いやいや、沢山写真送ってくれて、やっと分かったよ。あのカフェ色んなところにあるからさ。途中までどこか分からなかったんだよね、最初、別な場所の同じお店だと思ってたんだけど、あー、あそこかなーと思ってたところと違うみたいで、最後の番地書いてあった標識みて、やっと分かったんだよね。あの店さぁ・・・」

・・・なんか、ずっと喋ってるな・・・。まぁ、困らせた訳じゃないなら良かった。

「そうだ、私、今朝、思い出したんだ」
「何を?」
「私、受験の時のホテルのロビーで、あなたに着替えておいでよって言ったんでしょう?覚えてないけど。」
「言ったね。」
「それね、私、デート=おめかしして気合い入れるもの、っていう認識があるから、あなたにそう言っただけだと思う。」
「どういう事?」
「つまり、私はあなたとデートがしたくて、デート=着替えてするもの、って思ってるワケ。だから、軽い気持ちで冗談で言ったんだと思うよ。『あ、着替えてきちゃう?』みたいな意味で。」
「そうなの?」
「そう、だから誤解だったね。ごめんなさい。」
「そうなのかよー。」
「でも、何でマック?」
「高校生のデートって言ったら、マックでしょ・・・。」
「そういう事か・・・、なんだよー。」
「ハハハ・・・ごめんなさい・・・。」
「ま、でも今こうしてるからいいんじゃないの?」
「・・・そうだね。なんか、ホントはもっとオシャレしたかったんだけど、旅行だから出来なかったー。残念。」
「気にしないよ。」

そういって、ニコっと笑う彼。
えへ。良かった。やっぱりそうだよね。

街中を走っているのを見て思い出した私は、こう言った。

「さっき、デパートの中で3人組の日本人の女の子に話しかけたら、こっちに住んでるって言ってたー。」
「あぁ、現地の駐在員の奥さんとかでしょ。」
「え、でもすごい若かったよ。たぶん20代とか。1人は30代かな?」
「そうでしょ、最近若い人すごく多いよ。こっちメーカーの工場が多いからね。」
「へー。日本の若くて優秀な人材はどんどん海外に行っているんですねぇ。日本大丈夫かなぁ・・・。
あ!私、さっき地元の方なんですねー、とか言っちゃったけど違うじゃん。やっぱ変な人だよね、私・・・。」
「そんな事ないよ。」

彼は優しく笑った。
やっぱり優しいじゃん、彼・・・。

そして、私は昨日、高校の仲良し4人グループのLINEに送った内容の事を話した。

「そうそう、昨日、真理子達から連絡あって、高校中退したなんて言ってないって。」
「でしょー?俺、2人とは、同じクラスだったんだから。」
「だよねー、ホントごめん、なんか勘違いして。冷遇してないよって言っといて、って連絡来た。あと、なんか面白い事も言ってたよ。」

そう言って、バッグからスマホを取り出す。

「ほら、真理子とか、[あんなにギラギラした目で、とがった語り口の彼は、存在感ありすぎなくらいでしたっ]とか言ってて。」
「美鈴も、[ニノを冷遇してないと思うけど‥]だって。」
「野口は、[2年からクラス変わっちゃったから、あなたの影うすうすです、なので、冷遇もしておりません]だって。」

「あなた、冷遇されてたんじゃなくて、ただモテなかっただけでしょ。w」
「モテたじゃん。」
「誰に?」
「あなたに。」
「あぁ~まぁ、あたし、変わってるから。」
「ま、最後の2年間は勉強ばっかりしてたしね。」
「モテなかったからだね。」
「おい。」
「ハハハハ。」

彼も笑いながら、言った。

「あ、SNSで高校中退になってた理由が分かったよ」

続き→第16章:初めてのデート(2)

サポート頂けるなんて、そんな素敵な事をしてくださるあなたに、 いつかお目にかかりたいという気持ちと共に、沢山のハグとキスを✨✨ 直接お会いした時に、魂の声もお伝えできるかも知れません♪ これからもよろしくお願いします!✨✨