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Be yourself〜立命の記憶I~33

◆第17章:見えている未来


翌朝、目が覚めた私は、落ち込みながら洗面台で鏡を見た。

「鏡を見ると人は冷静になれるんだってね。」

初日のカラオケスナックで、並んでいる女の子達の後ろ側が、横長の全面鏡だったのを見て、私がニノに言った言葉だ。
あれは、お店の女の子を簡単にお持ち帰りしないようにしているお店側の配慮なんだろうか。
テメーの面見てみろー、こんなタイの美人を気軽に誘える顔してるかー?って?

そして、自分の顔を鏡で見た時に、なんともひどい顔をしていたのに気付いた。
お酒を飲みすぎて、たばこも吸いすぎて、昨日髪を乾かさないで寝たから頭はボサボサ。
お世辞にもカワイイとは言えない、37歳の頭の悪そうな女が居る。
悲しいかな、女子とも言えないな、この人・・・。

その顔を見ながら、昨夜の出来事を思い出した時に、笑いが止まらなかったんだ。

だって、こんな女を、タイ人女性が、次々にわらわらと寄ってきて、彼と引き離すんだよ?
なんであんなに一生懸命、彼との距離が縮まるのを阻止してんのー?!

そんで、20年ぶりに再会してるのに、またすれ違ってるじゃん、私達!
なんだったの、あのトキメキタイム。www
すれ違い過ぎてるにも程があるでしょ。
元カレと会うって話を知っているみんなの期待に、まったく答えられてない、おバカな私。

そう考えると、ずっとすれ違いっぱなしの私達が面白くなってきた。
これが、運命ってものかと。

その時、私、この出来事をちゃんと本にしようと決めた。

だって、私、やっと昔の自分を取り戻したから。
本来の自分を取り戻したから、もう出来ると思った。

みんなは普通に「察する事」とか「嘘をつく事」とか「ごまかす事」とか「言葉の裏に意味を持たせる事」は出来るんだよね。
ADHD(発達障害)なのであろう私には、たぶん、まだ、上手には出来ない。
ここまで来ても、まだ、私、彼が私の事を好きだったのか理解してない。たぶん言葉で「好きだ」と言われてないからだと思う。
気付いても、すぐに忘れちゃう。

だから、出来ない事をムリしてやろうとせずに、私に出来る事だけを、一生懸命やろうと思った。
だって、私、これでも一応社長だし、子供もいて、ちゃんと働くママをやっている。
社会生活、ちゃんと出来てるよ。
まぁ、帰ってからも社長が出来るとは思えないけど、今は。

昔から、「よく考えなさい」と言われていた。「考えて行動しなさい」と。
でも、よく考えてから行動してるつもりなんだけどしょっちゅう失敗してたよね。
代わりに、何も考えないで行動したりもしてたから、うまくいく事もあったよ。
今回、私、すっごく考えた。2週間以上も前から。パワポで資料まで作って死ぬほど考えた。ベトナムについてからもまだ考えてた。

私、たぶん成長したんだ。
でも、だんだんと本来の自分を見失っていたんだ。

だから、私はこうやって旅に出た。
見えない何かに誘導されて。
元々こうなる事が決まっていたのかも知れないし、私か、誰かが変えたのかも知れない。

「運命は変えられる」「未来は変えられる」

私には、出来たって思った。
って事は、誰にでも、出来るはず。

Change your destiny. Change your future. I can, so you can.

妄想でもいいよ。見えたビジョンを、自分の信じた道を突き進んで。


ホテルを出た私は、空港行きの快適なリムジンタクシーに乗って、バンコクの空港へ行った。
相変わらず、タイ人用の出国ゲートに並んでしまっていて、空港でお土産を買う時間が無くなったりしていたけど。

飛行機に乗る直前に、椅子に座っていた私。書いた本をどうするか、考えていた時ね。
バンコクのオシャレなカフェで、LIINEに備忘録として送った「Change your destiny.」って、私への言葉だった事に気が付いた。
だから、私、ここから更に、自分の運命を変えようと思った。

本気で、本出版しようって。映画にもしようって。
とにかく私決めた。これから自分がどうなるかが見えたから。

だって、私、この時に、「映画監督と私が向き合って話をしているシーンと、本を読んだ監督に何て言われるか」が見えたんだもの。
何て?って?
それは後ほどお話しますね。
(ニノみたいに、気になるなー、って思っているんでしょう?分かるよ。)

すぐに、紙に書いておきたくなって、隣のおじさん二人に、「すみません、何か紙をお持ちでないですか?突然申し訳ありません。私、ペンはあるんですけど、何か書ける紙を持っておりませんでして。結構長い文章を書き留めておきたいものですから、ノートか何かあればいいんですけど、持っていなくて困ってしまって。」って聞いたんだけど、二人共なかった。
チケットをチェックするカウンターの人が居る事に気付いたから、
「あ、あちらに聞けばあるかも知れませんね。すみません、失礼しました、ありがとう。」と言って、紙貰ってきたんだけど、戻ってきてもまだおじさんたち、まだ紙探してた。

私、また何か勘違いさせるような事言ったかな・・・。まだ、全然理解してないけど、とりあえず男の人の気持ち、ちょっと分かった気がする。

そのまま、係の人の指示に従って、飛行機に乗った。
搭乗口のところで、男性が私を見ているのに気付いたけど、声をかけられたワケじゃないから、無視したよ。
昔、お姉ちゃんに、「自分を見ている人に微笑み返すと面倒くさい事になるからシカトしなさい。」と教えられたから。

飛行機の中では、ずっと、今回の旅の事を忘れないようにメモしたよ。
JALの機内食はとても美味しかったのに、相変わらず食欲が少なくてあんまり食べられなくて残念だった。
あ、いや、シンハービールを4本以上飲んでたせいだな。自分のせいよ。

羽田空港についた私は、ワイホーのWi-Fi機器の返却を忘れて、リムジンバスのりばと空港の2階とをいったり来たりしたけど、夕方に到着したから余裕があった。
いや、時間の余裕だけじゃないかも。

だって、飛行機に預けた手荷物がベルトコンベアーから出てくるのを待っている間、喫煙所の前で、私、ニノにメッセンジャーでこう送ったから。

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2016/11/2 18:04
日本の羽田に着きました。

言い忘れてた!

人は、脳内で、
良い記憶8割、嫌な記憶2割
にしようとするんですって。
だから、あなたも、私も、
嫌な記憶は、忘れてるんでしょうね。

あの時電話が来たのは本当。
あなた、酔っ払ってなんか無かったよ。
ただ、私は彼氏が居ないと嘘がつけなかっただけなんです。(バカだから嘘つけないの。)

今までたくさんあなたを傷付けてしまって、本当にごめんなさい。。。

私、バンコクに謝りに行くつもりだったの忘れてました。
逆に怒ってゴメンナサイ。


ニノ
2016/11/2 18:09
はい、大丈夫です



2016/11/2 18:20
あと、お土産の説明忘れてた!
お醤油!ウチの母親が買ったキッコーマン。父親が買ってきたやつが、移し替えたボトル2つがカネヨ。どちらも鹿児島のだけど、食べ比べてみたら味違うかも。

あなたの為に、私の両親まで加担するんだから、
たぶん、私達は家族ごと魂で繋がっているんでしょうね。

子供が産まれたら必ず教えてください。
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こう送った8分後、私は、野口から高校の時の写真が届いていたのを思い出したので、ニノに写真を送ってあげた。
女子だけ9人で写っている写真と、1-6の全員で写っている写真の2枚。
全員写真は、私が、高校1年の終業式の後、学校を辞めて音楽をやる為に上京すると、みんなの前で挨拶をした後に撮った写真だ。

当時、終業式後の帰りの会が終わった後、担任の高見先生が、クラス全員の前で、私が高校を辞める事を発表した。音楽でプロになるという事を実現する為に、東京に行く事も説明してくれた。

みんなに挨拶をしなさい、と指名されて壇上に立たされた16歳の私は、全員がシーンとして私を見ている中、何を言えばいいか分からなくなって、こう言った。

「えー・・・、ビッグになって帰ってきます。」

クラスのみんな爆笑。
私、何でウケたのか良く分からなかったけど、エヘヘヘと笑った。

その後、私、「絶対デビューするから!みんな応援してください!」と強く言ったと思う。
みんなは拍手をしてくれた。

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2016/11/2 18:29
上の写真の一番右が野口。


ニノ
2016/11/2 18:33
おお、思い出した。
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そう、私も思い出した。
クラス全員の写真を見ると、右端でヨシノリが横を向いている。
その隣で、指をくわえてヨシノリを見つめているのはミゾ。

ミゾは、その時、私が貰った色紙に、「あのー、好きでした。」と書いていた。
超オシャレマンだった彼らしい、個性的な筆跡で。
他の女子が、それを見て、「キャー♪」って言っていたけど、私100%冗談だと思ったから、

「あ、ミゾー!私も好きだよー!」

と、軽~いノリで彼のほうに手を振りながら言った。
あら?あれ、本気だったの?いやいや、冗談でしょう?

あと、私の事を嫌いだった原田君。
私が遅刻して教室に入る度に、何か怒っていて、ブツブツ文句を言っていた人。
「また、遅刻かよ・・・。」とか何とか言われてたと思う。

原田くんはクラスで1,2位を争うくらい頭が良くて、顔もイケメンだったから、私、ひそかに尊敬していたのに、あまりに彼が冷たいので、一度、誰だったか、彼と仲の良い男友達に聞いた事があった。あ、いつも優しい平嶺君だったかな?ウッチーだったかな?
とにかく、とても優しい男子だったのを覚えてる。

「ねぇ、原田くんって、何で私にあんなにイチイチ文句言ってくるの?私、何か嫌われるような事した?」

そしたら、

「あー、うーん。まぁ、ほら、遅刻してくる事とかさ、ちゃんとしてない事が嫌な人も居るんだよ。」

と言われた。

私は、当時、歌詞を書いたり、曲を作ったり、シンセに楽曲打ち込んだりするのに明け方まで夢中になっていたから、常に寝不足だった。
よく遅刻してたのは、そのせいであって、それをちゃんとしろって言われても、無理だった。
「ちゃんとする」って何?
朝は早く起きて、一日中勉強する事?自分のやりたい事を我慢して?

そんなの無理だよ、嫌だよ。私の人生は私の物だもん。
何で、周りに合わせて生きていかなきゃならないの?
そう思った私は、進学校のトップクラスである、ここに、私の居場所は無いって思って、辞める決意を固めたんだった。

原田君は、背が高かったから、一番後ろで、横を向いている。
写真を貰った当時も、今も、ホントこの人、私の事嫌いなんだなって思った。

ニノに至っては、誰かの後ろに隠れてやがる。頭しか写ってないし。

もう、ホント高校生男子って、何考えてんのか、さっぱり分からない。

それに引き換え、私にあげる物を考えてくれたのであろう、女子のみんな、サイコー!
ガーベラが好きな私への花束と、いつも疲れていた私へのアリナミンAの錠剤。
欲しい物と必要な物、良く分かってくれている!ステキ過ぎるよ、女子のみんな!!

それを思い出した、私は、ニコニコしながら、リムジンバスのりばへ向かった。

心の余裕って、自分を理解してくれる人が居てこそ、初めて生まれるものなのかも知れない。

そして、空港を出たバスの中で、私は、スマホを開こうとしたのを止めて、外の景色を眺める事にした。

窓を触ると、日本の冬が近づく頃の寒さを感じる。
真っ暗な空の下で、東京の夜を彩る幾つもの光が、目の前を通り過ぎていった。
ささやかな、それでいて、一生懸命、都会のコンクリートに根を張って生きている樹木達も。

それを見て、私は、自分の経験した事をまた紙に書いていった。

続き→◆第18章:覚醒の時

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