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前提

 科学は、経験的な観察や実験、論理的な推論に基づいて進化していくプロセスです。現代では、確固たる証拠と実験結果に基づいて構築された理論や法則によって、科学的事実が説明されています。これらの科学的事実は、現時点で入手可能な最良の知識とデータに基づいています。
 
 この世界は、科学の新発見によって常識が塗り替えられてきました。地球は太陽の周りを周り、大陸は移動し、ある種の病気は微生物によって引き起こされ、生物には細胞という単位があり、その中のDNAに遺伝情報があり、生物は少しずつ進化していくという考え方などです。また物理学では今までの物理法則では説明できない現象が相対性理論や量子力学の発展へと導きました。これらの新たな理論の発展によって、物理学の枠組みは進化し、より広範で包括的な理解が可能となりました。
 
 一方で、現在においては、素粒子などの超ミクロレベルの話題をはじめ、量子重力理論、暗黒物質・暗黒エネルギー、宇宙初期の理論など、未解決の物理現象が多々あります。そのため、まだ説明できない理論もあるのですから、それによって構成されているマクロな世界での科学的事実は絶対とは言い切れないことも存在していると言えます。しかし、尺度が違いすぎるということや複雑性の理由から、超ミクロレベルの理論や未解決の問題が存在していても、それがマクロな世界の科学的事実の信頼性を脅かすとは言い切れません。
 
 このように、一般的には信頼性の高い科学ですが、経験・観測・データが不十分な場合、実験して検証する事ができない場合などは科学的な信憑性が乏しくなります。科学的知識は確かな基盤を持っていますが、常に検証と改善の余地があります。科学は継続的な努力と検証によって進化する学問であり、新しいデータや洞察が得られるたびに、新たな発見や理論の発展によって私たちの理解が変化することもあります。
 
 ここで、科学的に証明しようがないものは多々あるかもしれませんが、サンプル数の違い、計算方法の違い、データの取り方などによって、事実にどれくらい近い結果が得られるかどうかの程度の差があります。当該事実を検討するにあたっての前提・仮定がどの程度妥当なものか、つまりどのような枠組みを設けるかによりますが、それでも、誰もはっきりと何パーセント事実に近いとは言いきれません。ですから証明する事が難しい場合、私たちには仮定や前提で枠組みを作り、言葉の定義を明確にして、その中で理論を進めて行くことが必要になってきます。仮定や前提が妥当なものであれば、その限定された条件下であれば、その後に続く論理も、現実の現象との整合性を持つ可能性が高まります。つまり、他者と同じページで議論を進める・共有するためには整合性を求める必要があり、整合性を求めるためには、前提や仮定・言葉の定義を共有する必要があります。
 
 ここでは、多くの研究者によって確立された議論など、できるだけ科学の事実に基づいた議論をしたいと思います。人の心の働きなどは、脳の非侵襲的な脳画像化技術による研究も進展してはいます。しかし私自身は科学者ではなく、これからお話しすることも信憑性を確実に担保するほどの客観的な経験・観測・データをすべて提示することは困難です。時々、人の間で前提が違うために話が噛み合わないことがありますが、私がただ思っていることを提示し続けるだけでは本当に伝えたいことが伝わらない可能性がありますので、これから書くことはできるだけ前提や言葉の定義をはっきりと明示したいと思います。

Last Update 2023.07.19
文章指導:金田一 志帆


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