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コミュニケーションツールとしてのTシャツ考

「お父さんTシャツもうやめんの?」

と息子から問われ、まぁそうなるなぁ。と答えると大変残念そうにされた。
そっかぁ…と落ち込む息子に妻が、「また機械集めてやりだすような人だから安心しな」と励まし(?) 
改めて自作Tシャツを作り続けてきたことが一体どういった現象だったのかを振り返りたい。私自身がTシャツの人で認知されたのは間違いなくて、15年ぶりにONLINEで集まったのだが、私への関心事は音楽やってるのか?Tシャツ作ってるのか?ということだった。進化がないというか、しつこいというか印象が変わっていないようだった。終いには息子のピアノの先生からも「Tシャツの人」で認識されてしまっていて面白い。もともと、Tシャツ稼業を突然に引き継いだというのは既に書いた通りだが、セッカチで飽きっぽくて人と同じであることが悪とするねじ曲がった性分がこの稼業にマッチしたのだろう。テーマも何もないので、気になったモノをそのままTシャツにしているというのも特徴だと思う。

<これまでに作ったTシャツとTシャツ稼業を引き継ぐキッカケ>

この2年で特に力を入れているのが#フォント泥棒。身の回りにあるフォントをTシャツにプリントして、その違和感を楽しむという活動で何でもありなところが個人的に気に入っている。
例えば、大須商店街のバキバキに経年劣化していい感じになったマッサージ屋の看板。フォントの間隔が窮屈なのと「ジ」が奇形になっているのがとてもよい。

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これを早速#フォント泥棒してTシャツにする。

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重ね貼りすると無駄に立体感が出るのでいい。別に俺はアーティストでもないし、Tシャツをプリントすることに快感を得ているので題材にはこだわりがない。オリジナル糞くらえ!盗めるものは正々堂々と盗む。もう20年以上の付き合いになる熊本でフランス語を教えている週刊ラズベリー所属のラフィケン先生も相変わらずスーパーで半額チーズを見つけては、旨そうな料理を作っている。半額チーズの件が無くても成立すると思うのだが、力点が半額の方に完全にいっているのがとても良い。(写真はラフィケン先生のFBから無断掲載(泥棒))

ラフィケン

今読んでいるゲンロン12の 論考 無料はパリから始まった 1836年の広告革命(鹿島茂)がバリクソに面白くて、#フォント泥棒にも繋がる。新聞王ジラルダンが新コンセプトの新聞を創刊する時に資金、創刊した後のことも考えてタイトルにこだわった話。ジラルダンが共同経営者のロトゥール=メズレーが新創刊誌のタイトルは「ランテルヌ・マジック(幻灯)」はどう?といういい感じのタイトルを提案された時に、なんば言いよっとね。そんなふわっとしたタイトルだめやろが!と一喝した件が痺れる。

「そんなゆるふわなテーマじゃ、子供騙しだ。我々の新聞が成功するかどうかは本当のことを言う勇気があるか否かにかかっている。そうだ、タイトルはズバリ「ヴォルール(盗人、泥棒、剽窃者)」でいこう」
(→かぁー、たまらん。たまらんすぎる。ジラルダン)


著者の鹿島茂はジラルダンこそ、今でいうまとめサイトの発明者だったのだ。と結んでいる。(「新聞王ジラルダン」(1997年、ちくま文庫 鹿島茂著)読みたすぎる)

「オリジナリティがあって凄いですねぇ」 じゃなくて、
「うまいこと盗みましたね」
これじゃないすかね。最高の誉め言葉は。こっそり盗んで、オリジナル気取りで後からバレるのがダサいし下品なんだよ!(と誰かにキレてみる)

最近作ったモノも作者不明のまま泥棒したら、まさかの人が作者で直談判で公認をいただくという面白い展開があった。(ものまね芸人が直接本人に公認をもらうのと同じ手法を泥棒)

広島 横川で絶賛公開中の「犬ころたちの唄
前田多美監督に犬ころ非公式前掛けを作ったのでお渡ししようと突撃して、まずは監督に良かったらと手渡す。

犬ころたちの唄

素材はワークマンで購入して、日本酒のラベルっぽくしたくて大吟醸のフォントを酒のラベルを泥棒して、ベージュ色のシートでプリント。

多美監督

偶然に誕生日だった多美監督とcosi u casu軍団

あとは、題字を書いた本人に許可をもらえば完全犯罪成立なのだが、情報筋により、この題字って。。。と2021年2月24日に投稿されたTwitterのリンク先を確認してビックリ仰天。

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原画はなんと森男役 ミカカさんの手によるものです

本人からもう作っちゃいましたが、いいですよね。と許可をもらい無事に非公式グッズの公認をいただく。
ちなみにミカカさんに以前送った台所前掛けだが、「骨盤が安定して楽なんです」という健康番組のモニターみたいな感想を得ることができて、やはり現場取材に勝るものはなし。

と、まぁほんの一例だがコミュニケーションツールとしての可能性が大きいというのは立証されたわけで、稼業を引き継いでいただいた【Tシャツを彫る】も正々堂々と盗んでコミュニケーションツールとしてのTシャツを立証していただきたい。(大いに期待しておりますよ)




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