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もりゆか最後の日

「あれ?今日ってもしかして、私もりゆか最後の日じゃない?」

冷蔵庫のあまりもので作った炒飯。ご飯がベタベタしていて、味が薄い。
早めのお昼を食べながらつぶやいた。

私は明日、入籍する。

3年付き合って、2年半一緒に住んでいた彼なので生活に何ら変わりはない。
恋人時代・婚約時代・そしておそらくこれからの結婚時代もそうだろう。

去年の終わりに、極寒の中でプロポーズしてもらって、とても嬉しかった。
嬉しさと寒さで体震えてたな。
それから両家顔合わせだ、婚姻届だ、と着々と進めてきたけれど、なんだかいつも他人事の感じ。
トントン進むねぇ。と思ってた。

でも今日になって「もり」姓が終わると思うと、一気に結婚がリアルになったんだ。

「もりゆか」
私のあだ名であり、本名であり、ただのフルネームである。
しかしそれも今日まで。

昨日、区役所で戸籍謄本をもらったとき父・母・わたし・妹たちの名前が並んでいるのを見て、喉の奥がひりついた。

うちの家族のメンバー表。

「私たちって付き合ってるよね」はあるけど
「私たちって家族だよね」とはあまり言わないように家族って、ふんわりとしたもので自覚がない。

戸籍謄本は、他者に「あなたたちは紛れもない家族ですよ」と言われる初めての経験だった。
でも私、ここから抜けるのか。

じいちゃんが死んだ4年前の夏、
じいちゃんの骨壷を墓下に入れているのを見ながら「私たちは一緒のお墓に入れないんだね」と妹に言ったことを思い出した。

姓が変わることが嫌なわけじゃない。
今の時代、こういうことを解決するいろんな方法があるのはぼんやり知ってる。
ただただ、寂しい気持ちが溢れてくる。
我が家のメンバー表から自分が外れる寂しさ。

つるつると鼻水と涙が出てきて止まらない。

「入籍前日 涙」で検索して出てきたのは

・男性も知ってほしい!辛いマリッジブルーの症状と原因ごとの解消法まとめ・入籍や結婚式が目前の時!どれくらいの方が不安を感じる?・マリッジブルー?(長文です)-Ozmall

なるほどこれはマリッジブルー、と一人で笑った。
自分のこのとんでもない昂ぶりは、ごくごく一般的なものであった。
何も自分は特別じゃないという小さながっかりと、自分は特別だと思っていたんだ、という恥ずかしさ。

目の前で仕事をしている彼は私が泣いていることにはまるで気づかない。
多分「私泣いてる」って言わないと気づかないと思う。
いいのよ、そこが好きなのだ。

なんて説明していいか分からなかったからシャワーを浴びて静かに泣いた。

彼を選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だ。

寂しいよ、と妹にLINEを送ったら返ってきたメッセージ。
それ、のび太の結婚前夜でお父さんが言ってたやつでしょ。
しずかちゃんが泣いてたのは、こういう気持ちだったのね。

なにもお別れじゃない。
ただキャパオーバーなだけだ。
もりゆか30歳。
人生、久しぶりの「初めての体験」。

今日に限って仕事は忙しい。

多分、明日はピンピンしてる。
今日だけのマリッジブルーを楽しもう。

そして明日からも「もりゆか」ってみんな呼んでね。
お気に入りのあだ名です。

(2019.5.29 お昼くらい)

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moriyuka

もりゆかです。

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