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第50話 それぞれの道

それぞれの道

年を明けると卒業論文である事業構想計画書の提出期限が迫り、個別指導に追われるのだが、院生個々人と直接じっくりと話ができて案外楽しいものだ。
そして2月最初の土曜日に行われる最終審査会を通過すると後は修業式を迎えるばかりなる。

お正月を過ぎるとなんとなく春を感じる。迎春とは言ったものである。
年始を迎えて、僕の担当する院生や研究員や塾生の皆さんには、今年の抱負を漢字一文字で語ってもらうことにしている。
心機一転、新たな誓いをするのだろうが、すぐに忘れてしまうかも知れない。
それでも、自分は何をすべきかを一年の初めに考えること自体が大切だと思う。

院生は勿論のこと、親しくなった人や先輩や後輩も、春を迎えてそれぞれ自分の選んだ道を歩み出し旅立っていく。
離れても繋がっている人もいれば、音信不通になる人、そして2度と会えなくなる人もいる。
それでも、僕は何かをきっかけに忘れかけていた人を思い出し、元気でいてくれたらいいなと思うのである。

良いことも悪いことも楽しいことも悲しいこともあるだろう。
でも、自分で選んだ道だから、人のせいにすることなしに、どんな時も顔を上げ胸を張り進んで欲しいと思うのだ。
自分に責任をもって自分の意思で生きている人は素敵なのである。

還暦を迎えた時に、益々自分の意志に従い頑固になって固い石の様に意志の塊になりたいと思った。
その結果、山の頂の凍えそうな寒さの中に聳える一本の木に立つ気高い鳥の様に、孤独でも孤高でありたいと思った。
そこには、自己の意志と自己責任があり、逆説的に感じるかも知れないが結果として他利に行き着くのである。

勇気をもってそれぞれの道を歩み出す人は、自分の意志を貫こうとすると前途多難であろう。
だからこそ、余計に自分の視点、自分の意志、そして自分が背負う責任をもって、他の人達を思いやりで包みながら助けてあげて欲しいと思う。
相手の幸せを思える強くて優しい人であって欲しい。
もし、他の人が幸せになってくれる姿を見ることができるなら、それ以上の幸せはないと思うから。

さて、僕も悠々として新しい道を見つけて急ぐことにしよう。
残された時間は限られているのだから。


追記 
第50話を迎えて森の黒ひげ塾としての連載はおしまいにすることとします。
塾生以外にも多くの人が読んでくれたこと感謝しております。
既にnoteの題名が変わっているのを気づいた人がいるかも知れません。
これからは「屋久島の深い静かな森で考えたこと」として、不定期に掲載は続けていきたいとは思っています。FBも同名でアップしていきますので、気が向いたらご一読頂ければ嬉しいものです。

屋久島の深い静かな森の塾
塾長 早川典重



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