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キミを撮りたくて📷☂

机の上にカメラを置いていた

次に歌う曲のPVを作りたくて

[あの曲に合う景色はないかしら?]

なんて考えながら
何故か制服姿になっていた私は

放課後の教室で独り、頬杖をついて
音もなく沈みゆく夕日を
眺めていた

膝上まで伸ばした紺色の靴下を
履いた両足は幼子のように揺らして

短めのスカートを
微かに漂う風で
たなびかせていた

目が覚めた

いつの間にか知らない少女が
隣に立っていた

私と同じような背格好で
私より長めの髪を揺らしていた

やたらと丸いフォルムをした
生地の傘を不意に渡された

特に言葉もなく彼女の顔も見えず
それでも昔どこかで会ったような
親近感をもたらす彼女

そんな彼女に渡された傘を見つめて
顔を再び上げると
もうそこに彼女はいなかった

ただカーテンだけが
風に靡いていた

目が覚めた

放課後の教室で独り
相変わらず夕日を眺めていた

右手には先程渡された傘を
持っていた

何を考えたのか、私は
座っていた椅子から勢いよく
立ち上がり、左手でカメラを握り

近くで小さく開いていた窓を
全開にして上履きを履いた右足で
窓の格子を蹴り飛ばしていた

7階程の高さから突然
飛び立ったのだ

重力に従う身体が
その落下速度を早めていく中で
右手に持っていた傘を開いた

ばんっ!

と凄まじい勢いで開いた傘の反動で
落下速度は急激に低下して
ふわりと身体が浮き上がる

重力から浮力へと
その従属対象をシフトさせた私は

左手にカメラを右手に傘を
各々持ち、沈みゆく夕日を
必死に撮っていた

広げた傘はその丸いフォルムの生地で
周りの空気を包み込み
私をゆらゆらと運んでくれる

まるでパラシュートを付けている
ような気分だ

だけど難点があった

イタズラな風が吹く度に
カメラの手元が揺れるのだ

そして教室から遠く離れた現在
私の眼下には黄金色に揺らめく
海が広がっていた

[無事に帰れるのかしら?]

なんて考えながらも
私は不思議と笑っていた

そんな私を透明な羽を持った
小柄なカマキリがケラケラと
笑いながら飛び回っていて

胸元のリボンバッチが
キラリと光った

目が覚めた

私は市場を歩いていた

先程までの爽快感は何処へやら?

少し裾の解けたカーディガンと
長めのスカートを履いて

その日の夕飯を作るために
豚肉とネギと生姜の入った袋を
右手首に引っ掛け

ガサガサと揺らしながら
夕日に照らされる帰り道を歩いていた

[先程までの感覚は白昼夢
だったのかな?]

[少し残念だけど楽しかったな!]

[そもそもあのままだと
私、どうなってたか
分からなかったし♪]

なんて心の中で思いながら
歩いていると、周りの人達が
空を見ながら急にざわつき始めた

「おい!あれ!!
人じゃないのか?」

「落ちてるぞ?!!」

「大丈夫なのか?!!」

「誰か助けてやれよ!!」

そんな声があちこちから
聞こえてくる

思わず何事かと思い
空を見上げると

人のような形をした何かが
遠くに見える夕空の中
海に向かって落ちていた

だが、その何かは
足らしき細い2つの棒の影が
下方に伸びていた

人の部位で最も重いのは頭だから
本来なら頭から落下するはずなのに、だ

つまり一般的に人が落下する場合は
丸い影が下方にあるはずなのだが

不思議なことに下方に広がる
その細い2つの棒の影は足先から
おちていることを示していた

私は不思議に思い、鞄に入れていた
メガネを掛けて再度見直した

すると
ゆらゆら揺れる短いスカート
膝上まで履いた紺色のニーハイソックス
そして胸元に光るリボンのバッチ
が見えた

[あ、あれは、、
さっきの白昼夢で見た私?!]

そう思った矢先、透明な羽をした
小さなカマキリが1匹、私の肩に
静かに止まった

[えっ?!]

思わず声を上げた私の耳元で
〈あの子は大丈夫〉と声が聞こえた

振り向くと白昼夢の中で
不思議な傘を渡してくれた
あの少女がそこに立っていた

[貴方は。。]

そう呟く私の周りで

「おぉ!なんかパラシュートみたいなのを
広げたぞ!!」

「ゆっくりと海に着水したみたいだ!」

「パチャパチャ泳いでるみたいだし
ひとまず良かった、良かった」

そんな安堵の声が
広がっていた

目が覚めた

私は台所に立っていた

家に持ち帰った豚肉とネギと生姜を
見つめて少しため息をついていた

【やりたい事に集中させてくれ!】

と言われて、あの人の居なくなった
部屋で1人分の料理を作っていた

日も沈んだ夜の暗さが
シンシンと部屋に染み渡る

[男性には、そーいう時期が
あるものよねー[

[でも良いの]

[あの人は私の事が大好きだもの
どうせ戻ってくるわ]

そんな強気な事を思いながらも

[弱っている心がキットあんな
白昼夢を見せたに違いないわね]

なんて二律背反みたいな考えを
堂々巡りさせていた

曖昧模糊な気持ちのまま食事を終え
自分の書斎に入っていくと

あの少女が立っていた

今度は顔も見える

少しキリッとした一重瞼
整えられた眉毛
鼻筋の通った顔立ち
薄紅色の唇

相変わらず長めの髪を
窓も空いていない部屋で
揺らしていた

〈ねぇ!一緒に行こう!!〉

[書斎に何故彼女が居るのか?]
と疑問に思いながらも

私の左手を握る彼女の右手が
柔らかくて暖かくて
気持ち良かった

目が覚めた

書斎は一瞬で美術館に
早変わりしていた

草間彌生が描くような
丸い模様があちこちに
散りばめられた空間

でも彼女の作品に見られるような
動的な印象ではなく

どちらかと言うと静的な雰囲気で
品が漂っていた

季節外れの鈴虫の鳴き声も何処からか
優しく聞こえてきて

部屋には青空に照りつける
太陽の光が眩く乱反射していた

辺りを見渡すと例の少女が
窓辺に立って私を見つめていた

〈さぁ、撮って♪〉

少しハニカミながら左手を
窓の格子に沿わせて微笑む彼女

青い空を白い雲が流れて
風がふんわりと吹いていた

いつの間にか手に持っていたカメラを
私は彼女に向けていた

パシャリ

1枚の写真が撮れた

柔らかい空気を纏った写真だった

彼女に見てもらおうとレンズから
目を離した途端、彼女は消えていた

やたら丸い、あの傘だけが
壁に立てかけられていた

目が覚めた。
リアルだ。。

隣ではあの人がスピスピと
寝息を立てている

私の頭を撫でながら
寝ていたからか

力の抜けた彼の左腕が
私の頭上でだらりと
横たわっている

静かにベッドを降りて
独り麦茶を飲む

相変わらず不思議な夢だったにゃ

と思いながら少し
夢の回想を始めた

今隣にいる人もずっといる訳ではにゃい

それは人生の終わりの時か
はたまた別のタイミングか

構築してきた関係性というのは
その構築にかけた時間とは反比例に
崩壊する時は刹那的にゃものだ

我々の関係性も全く問題がにゃい
訳ではにゃいし、いつかは何かの
きっかけて瓦解することも
あるのかも知れにゃい

それでも、あの少女が残してくれた
傘のように、そして優しい笑顔のように
何か心に遺せるものもあるかもしれにゃい

それは、あの人に限ったことではにゃい

こんにゃ私を見守ってくれている
貴方の心にも私の小さな足跡が遺せる
にゃらば本望だ

それはキット私の心ばかりの
生きた証ににゃるはずだ

そんにゃフィロソフイックにゃ
想いに浸っていると

<にゃんにゃんにゃんだね!>と
ベッドから声が聞こえた

時計の針が12:22を指していた

<お腹空いたァ>と言うので
2人でチャーシュー丼を用意して
美味しく食べた。

そんな春風の強く吹く
昼下がりだった🐈

日常と非日常を放浪し、その節々で見つけた一場面や思いをお伝えします♪♪ そんな旅するkonekoを支えて貰えたなら幸せです🌈🐈 闇深ければ、光もまた強し!がモットーです〇