私は貴方と一緒にいるわ

貴方の髪の毛に触れ

耳をコショコショして

鼻には美味しい香りを届けて

お洋服を揺らしてあげる

”カーディガンがマントみたいになってる"
なんて心の中ではしゃいでいる貴方の横顔を
見つめるのは楽しいわ

でも、”美味しそうなパンの香りがするからっ”て
道路の真ん中なのに目を閉じて歩く癖は直しなさいよね

危なっかしいたら、ありゃしない

ほら、そうやって、また直ぐにクルクル回る

今度は何を見ているの？

あぁ、私の妹たちが運んでいる雲を見ているのね

確かに夕日に染まる朱色の曇って素敵よね
踊りたくなる気持ちも分かるわ

そういえば、貴方といると
発見が多いのよね

例えば

街には、色々な道があるわね

大きい道、小さい道、秘密の路

各々に、色々な人や生き物もいるわ

乳母車を愛おしい顔で見つめる人達
お散歩しているワンちゃん
寝そべっている貴方のお仲間さん
木の上で鳴いてる鳥さん

彼らの表情や声を貴方と共に見ている

時々大きい音もするわね

バスのゴォーっていう音
自転車のシャリシャリした音
人のシュタシュタ走る音
車がヒューんと走る音
バイクのけたたましい音

貴方は音の気配を感じると耳をピンと立てて
今度はその耳を肉球で隠すけど
実は聞いてる私も一緒に驚いているのよ

人にはなかなか聞いて貰えない
人にはなかなか見ては貰えない

有機物でも無機物でもない
それでも確かに存在してる

貴方が歩いている時
瞳を閉じている時
何かを思い出している時
空を見上げている時

貴方の傍に
貴方の心に

さぁ、私は、誰でしょう？

貴方にもいつか私の声が聞こえたら良いのに
そしたら、沢山お話しましょう

花の話
街の話
海の話
山の話

時の話

私は風