テキスト版 金返せ! 第1話 お試し購入と思ったら定期購入だったの巻 その1 出題編

アチキの名前は大葉道子(おおばみちこ)
人呼んでグレーゾーンのセールスレディーだべ。
ただのセールスレディーだと思ったら大間違いだべ。
アチキの取り扱う品物はグレーゾーンの詐欺商品、詐欺商品ばかりだべ!

この世は老いも若きも男も女も頭が空っぽの人間ばかりだべ。

そんな情報弱者の心の悩みに答える振りをするべ。あくまで、「振り」だべ。

んまあ、タダってわけにはいかないけどナ、
ちょ~っくら高い授業料をいただくことになるけれど、
アチキも霞食って生きている仙人じゃないから、手数料で稼がないと食っていけないべ。
さて今回のカモは…

痩田伊予(やせたいよ)

ひぃ~っひっひっひっひっひっ!

お試し購入だと思ったら定期購入だったの巻

事務員の痩田伊予は悩んでいた。
働いている会社の業績が悪く、
事務員の人数を減らしたために、
残った人間に莫大な量の仕事が回ってきた。
仕事が終わるのは夜の9時。

余裕がなくなって、人間関係がギスギスしていた。痩田伊予は先輩の御局様に細かいことできつく怒られる毎日。

ストレスで食べる量が増えてしまい、
ズボンのボタンが閉まりにくくなり、
ファスナーが上がらず、パカっとズボンの前が開く始末だった。
歳とともに腹ばかり出てきて、可愛いと思って買った洋服を着ても、モデル着用の写真とはまるで違う。
鏡を見ても、歳をとったもっさり妊婦がニタニタ顎の下に贅肉をダボつかせて笑っている。

ストレスフルの職場から転職したいが、どこも採用は若くて綺麗な女を欲しがる。ハローワークに行ってみたが、年齢で引っかかる。
せめて見た目でも若くて綺麗で、下っ腹が出てなければ、転職を決められるのだが…

太っていると転職出来ないわけではないが、
痩田伊予は、本当に悩んでいた。
しかし、食べる量を減らすのは、お腹が減るとイライラするし、運動は嫌いだ。

痩せたい気持ちばかり先走り、
今日もスマホで検索して時間を無駄遣いする羽目になるのかなぁ、と、懲りずに検索していたが、気になる広告が目に止まった。

「松本・デッカイナァ絶賛!驚きの美容サプリ『麸としじみの生葉酸!』」

サプリかぁ、
タップすると、
アフリエイトっぽいサイトだった。

(アフリエイトとは、広告した品物が売れたら収入になるサイト)

美容サプリを紹介する、
漫画で語るエピソードが胡散臭い。
「デブだった私が、
食べるの大好きなのに痩せている友達から貰った、
科学雑誌『ネーチャン』に載った成分を使ったサプリを飲んだら、
フルマラソン並の脂肪燃焼で、1ヶ月でマイナス18キロも痩せて、
ハイスペック彼氏をゲット!
公式サイトはこちらから!」

通信教育「神経ゼミ」の案内の漫画みたい。
「申し込んだら、勉強も部活も両立!たちどころに成績アップ!志望校に合格できてモテモテ!」
みたい。

昔、親に頼んで「神経ゼミ」の定期購入したが、すぐに放ったらかしにして、無駄なお金を使わせてしまった苦い思い出がチラリと蘇ったが、

公式サイトの「お試しゼロ円」の文字を見て、
「タダなら申し込んでみるか。
効かなくても、タダだったらいいよね」と、住所やメルアドを打ち込んでいった。
購入ボタンを押すと、「この内容で申し込みますか?」と、確認ページが出ない。
あれ?「注文をありがとうございます」メールも届かないし、買っていないのかな?買ったのか、買っていないのか、よく分からない。
そして、毎日大量の仕事と残業で生きるのに必死だったため、
すっかり忘れていた。

1ヶ月後、痩田伊予のアパートの郵便受けに品物が届いていた。

「あれ、頼んでいたんだ。請求書は0円になっているし、飲んでみようかな。」

ところが、次の日の午前、仕事中なのにお腹がゴロゴロする。パソコンのキーボードを大きく叩きながらすかしっぺで何度か誤魔化したが、バレてなきゃいいが。
午後は尻の穴が悲鳴を上げ、何度もトイレに駆け込んだ。「ちょっと、痩田さん、私にばっかり電話を取らせないでよ!忙しいんだから!」
御局様に嫌味を言われるし、下痢は臭いし、最低な1日だ。

アパートに帰宅した伊予は、
頭にきて袋に入った残りサプリと、0円の請求書をゴミ箱にぶち込んだ。
「インチキ商品め!タダで良かった!」
ちょっと勿体ないかも、と、思ったが開封した食品類はフリマサイトのシバカリで出品禁止なので、ゴミの日に出してしまった。

伊予はこれでおしまいと思ったが、
まだまだ地獄の一丁目、悲劇は終わっていなかった。

出題編その2に続く。

注意
この話はフィクションです。
ただし、類似の手口、
耳障りのいい言葉で読者諸君を惑わすサイトに出会ったら、この話を思い出してください。

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