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SDGs(持続可能な開発目標)とは何か

morioです。
とある会社でxRの研究をしています。

先日SDGsについてのセミナーに参加してきましたので、思考整理のためにまとめてみます。

■はじめに

SDGs(エス・ディー・ジーズ)は「持続可能な開発目標」と訳されています。
2030年までに解決すべき目標を国連が指針として掲げたものです。実際に解決できるかどうかは別としても、高く目標を設定してそれに向けて頑張っていこう、的なやつです。

まずは「持続可能な開発とは何か」を整理したあとで、SDGsについて説明していきます。

■1.そもそも「持続可能な開発」とはどういう意味か

• 持続可能と持続可能でない開発の違い
 持続可能でない開発
  →将来の世代がニーズを満たす能力を損ないかねない開発
 持続可能な開発
  →将来の世代がそのニーズを満たす能力を損なうことなく、現代のニーズを満たすような開発
「環境と開発に関する世界委員会 Our Common Future 1987年)

「持続可能」ということは、将来の世代のこと、20年後30年後の話をしています。
2,3年後の話ではありません。
今が幸せに暮らせていても、2050年に我々の子供の世代が苦労しているかもしれない。2100年には人類が生活できなくなっているかもしれない、それを阻止する必要があります。
将来の世代が困るようなこと(持続不可能な開発)はもうやめようぜ、ということですね。

• 現在の開発は持続可能か?
3つの視点で考えてみます。
①地球の限界
②地球温暖化
③格差と社会不安

①地球の限界(プラネタリーバウンダリー)

世界の人口は1900年に15億人くらいだったのが、2015年は70億人くらいに増えました。2050年に100億人と言われています。たった150年で何倍にも増えました。
それに伴って地球から様々な資源を取り出しています。
1900年を1とすると今は8倍の資源を使っているそうです。2050年には13倍くらいの資源を地球から取り出すことになると言われています。当然ですが、地球の数は増えません。

このプラネタリーバウンダリーで考えると、「気候変動」、「窒素の循環」、「生物多様性の損失」はすでに取り返しのつかないレベルに達してしまっているとのことです。残念!

世界中すべての人の生活を支えるためには地球が1.7個分必要と言われています。
仮に世界中の人が日本人並みの生活をしたら地球が2.9個必要ということです。
(WWFジャパン「日本のエコロジカル・フットプリント2017」

 ②地球温暖化

1880年から比べると、平均気温が0.85℃上昇しています。
何も対策しないで今の開発を続ければ、これから2100年に向けて最悪4.8℃上昇という予測もあるそうです(悲観的ケース)。
将来の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃に抑えるというのがパリ協定での目標です。
気温上昇が悲観的ケースの4.8℃だとすると、海面上昇は最高で82cm上昇。この数値は、江戸川区江東区は水没。北千住あたりが湾岸になるかもしれないという予測だそうです。

地球の温暖化は干ばつ、豪雨、水不足、食糧不足、健康被害に繋がります。
温暖化の理由は温室効果ガス(主にCO2)の増加です。
産業革命前まで65万年間ずっと二酸化炭素濃度が280ppmだったのが2013年時点で400ppm以上になりました。
その結果、気温の上昇を招いていると考えられています。

 ③格差と社会不安

「格差」は、不安定な社会の原因となると考えられています。
所得格差でいうと、現状は最富裕層の1%の人たちが世界資産の50%を持っているとのことです。

所得格差以外にも、下記のような格差による対立構造が生まれています。

高所得国 vs 低所得国
都市部 vs 農村部
高学歴 vs 低学歴
正規雇用 vs 非正規雇用
男性 vs 女性
マジョリティ vs マイノリティ

格差が不安定な社会につながるのであれば、これをある程度人為的に制御していくことで安定した社会を作れるかもしれません。

※2019/6/22追記※
格差が不安定な社会を生むというのがどういうことが考えていたのですが、今の高齢者とそれ以外の世代との年金格差とその反応を考えてるとたしかに説得力あるなと思いました。
※追記おわり※

これら①②③を解決した上で行う開発・発展の形が「持続可能な開発」であると理解しています。

■2.持続可能な開発目標(SDGs)とは何か

1で持続可能な開発とは何かについて考えたので、ここでSDGsについて整理します。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。 
SDGsは50年におよぶ長い年月をかけて幾多の議論を重ねて作られたものです。
長い議論の歴史があり、2000年に合意されたMDGs(ミレニアム開発目標)を引き継ぐ形で2015年9月の「持続可能な開発サミット」で採択されました。
17のゴール、169のターゲット、244の指標(重複を除くと232)で成り立っています。

1. 貧困をなくそう
• 貧困削減
• 適切な社会保護
• 基礎的サービス
2. 飢餓をゼロに
• 飢餓の撲滅
• 栄養不良の解消
• 農業生産性向上
3. すべての人に健康と福祉を
• 妊産婦と新生児
• 感染症と非感染症
• リプロダクティブヘルス
4. 質の高い教育をみんなに
• 初等 中等教育
• 技術 職業教育
• 成人の識字、計算能力
5. ジェンダー平等を実現しよう
• 女性差別撤廃
• 女性への暴力排除
• 有害な慣行の排除
6. 安全な水とトイレを世界中に
• 飲料水と衛生設備
• 水利用の効率化
• 水資源の管理
7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに(主に電気)
• 安価なエネルギー
• 再生可能エネルギー
• エネルギー効率改善
8. 働きがいも経済成長も(ブラック企業や強制労働の根絶)
• 高い経済成長
• 働きがいのある仕事
• 安全安心な労働環境
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
• 質の高いインフラ
• 工業化と市場アクセス
• イノベーション
10. 人や国の不平等をなくそう(一番達成が難しいと言われている)
• 所得格差縮小
• 差別の撤廃
• 途上国の発言力拡大
11. 住み続けられるまちづくりを
• スラム住居の改善
• 公共交通機関の改善
• 持続可能な都市化
12. つくる責任つかう責任(企業や市民の話)
• 天然資源の効率的利用
• 食品ロス減少
• 廃棄物削減、再利用
13. 気候変動に具体的な対策を(気候変動を起こさないではなく、起きたらどうするかの話。防災観点)
• 災害への強靭性
• 気候変動対策
• 早期警戒体制
14. 海の豊かさを守ろう
• 海洋汚染防止
• 海の生態系回復
• 過剰漁業対策
15. 陸の豊かさも守ろう
• 森林減少、砂漠化対応
• 陸の生態系の保全
• 絶滅危惧種の保護
16. 平和と公正をすべての人に(暴力撲滅やガバナンスの話)
• 暴力、虐待の撲滅
• 司法への平等なアクセス
• 汚職、賄賂の減少
17. パートナーシップで目標を達成しよう(1から16を達成するためにみんなで協力するという話)
• 資金の動員
• 技術開発
• 能力構築等

17だけが少し異質ですね。
全部を一国、一企業、一団体が取り組むわけではなく、ステークホルダーが連携して1から16を達成していこう、というものです。

ここで一点、書籍「SDGsの基礎」から引用します。

SDGsに掲げられた目標、ターゲットはいずれも口を挟む余地のない正義であるが、すべての人にとっての最優先事項であるとは限らない。
そもそも、野放図な宇宙開発の抑制や核の平和利用、あるいは地雷・爆発性戦争残存物(ERW)の除去などといった、国連という文脈では極めて重要な課題が2030アジェンダではまったく触れられていないし、LGBTへの言及もない。宗教は差別されないという文脈で現れるのみだし、人口動態に関する目標もないところをみると、価値観によって意見が大きく分かれるデリケートな問題は避けられている様に受け止められる。

利害が真っ向からぶつかるところは避け、みんなが満場一致で「それは正しい!」と言えるようなものでしか目標設定ができなかったことがうかがい知れます。採択されたのが国連という場であることを考えると当然なのでしょうか。

SDGsに対応する具体的な数値目標は「総務省 SDGs指標」で検索すると出てきます。
議論が繰り返されているため、指標は2015年からとは変わってきているそうです。総務省が四半期くらいごとに指標の見直しを和訳して反映しているそうです。

指標まで見ると具体的に何にフォーカスされているのかをわかりやすいので、一通り読んでみることをおすすめします。

SDGs合意後の日本での動き

SDGs合意後の日本の反応は下記のようなものです。
 ・ 2015年 GPIFによる責任投資原則署名
   ※年金積立金の運用にESGの視点を反映させる
 ・ 2016年 内閣府SDGs推進本部設立
 ・2017年 経団連 企業行動憲章の改訂→SDGs取り組みを柱。Society5.0提唱。
 ・2018年 SDGs未来都市選定

注目すべきは2015年のGPIFによる署名でしょうか。
GPIFは年金の運用をする巨大な機関であり、その投資対象にESG(環境、社会、ガバナンス)の視点を反映させるということから、機関投資家、個人投資家の流れも引き寄せたものと考えられます。
投資家の動きは当然上場企業であれば気にしますので、企業が経営の中にSDGsを取り入れる動機につながったものと予想します。

■3.民間企業とSDGsとの接点

SDGsというものの概要がわかっても、「なんでそんな世界規模の目標を一企業、一個人が意識しないといけないの?」と思うでしょう。
それについてをここから説明します。
「急に企業の心が綺麗になった」わけではありません。取り組むメリット、取り組まないデメリットがあるから取り組んでいます。なぜ民間ビジネスとつながるのかを考えます。

①地球温暖化対策からのつながり

気温上昇を2℃未満に抑制(パリ協定)
  →CO2の排出抑制→化石燃料の利用抑制。たとえ地中に存在しても利用できない化石燃料(座礁資産)。仮にあったとしても使うべきではないということ。
○ 化石燃料に依存するビジネス=持続不可能
○ 再生可能エネルギー等を活用するビジネス=持続可能

このように、「化石燃料を使うということはビジネスとして淘汰されていく」という恐れがあります。

②格差、社会不安からのつながり

ダッカ近郊ビル崩落事故(2013年)の教訓。
ファーストファッションは身近であったが、それをささえる人たちの労働環境が劣悪であることが露見した。

このように低賃金労働者の労働力に依存するビジネスの在り方はどうか、という疑問。
英国現代奴隷法やフランスデューデリジェンス法等により、ある程度売り上げのある企業はサプライチェーンの中に奴隷労働が無いかどうかを調査し、開示しなくてはならなくなった国も。
仮に日本企業がイギリスのスーパーに服を納品していると、その日本企業も自社のバリューチェーンの中に奴隷がいないかどうかを調査しないといけない。
他にも、仮にイギリス向けに紅茶の茶葉を納入している会社があったとしたら、紅茶農園で子供が働いていた(児童労働)ら、それも報告しないといけない。この流れは世界に広がっている。
強制労働に無関心な企業は世界のバリューチェーンから外されていく時代になる。
○ 劣悪労働環境に依存するビジネス=持続不可能
○ 適正な労働環境や雇用を提供できるビジネス=持続可能

このように、企業の持続性と地域・社会の持続性が繋がっていく流れがあります。

③資金調達からのつながり

機関投資家の意思決定プロセスにESG課題を反映させる流れ(前述のGPIFの運用方針参照)。
ESG課題に無関心なビジネスは中長期的なリスクに備えていないと判断される。
  →将来持続しないという判断が課される。化石燃料を使っている企業が資金提供を拒否されたり、保険の引き受け停止があったりといった実質的な影響が出ている時代。
○ ESG課題に取り組まないビジネス=持続不可能
○ ESG課題に積極的に取り組むビジネス=持続可能

このように、 SDGsは企業に「心をきれいにしてくれ」と言っているわけではなく、
持続可能なビジネスであるかの判断基準にSDGsのような目標に対してどの程度関心を持って取り組んでいるかを見られ、その結果が企業自体の持続性に関わる時代になってきています。取り組まないことがリスクになってきているのです。

SDGsには下記の2つのアプローチがあります。
エントリーポイントA:取り組まないことでのデメリットを取り除く観点(マイナスをプラマイゼロへ)
エントリーポイントB:取り組むことで追加的な貢献を生み出す観点(プラマイゼロをプラスへ)

前述のファストファッションの例での「劣悪な労働環境をやめよう」というのは、エントリーポイントAです。
下記、ボルボの「2020年までにボルボ車での交通事故による死亡者、重傷者をゼロにする」はエントリーポイントBでしょう。

どのようなアプローチをしていくのか、していけるのかは各企業によりますが、根幹事業にSDGsの考え方を組み込むことで、視点が「持続可能なビジネス」に転換し、健全な経営を行えるのではと思います。

こちらも参考。

■4.xRに関わる人間としてSDGsをどう捉えるか

私はxRという技術を使ってビジネスを創ろうとしていますので、xRとSDGsについても何らかの記述をしておこうと思います。

xRとSDGsの繋がりについては以前の記事で考えてみました。

移動を削減することで働き方への好影響、都市のエネルギー負荷軽減が見込めるのでは。
また、身体的な移動を削減し、存在感のみを自在に移動させるということは新しい働き方をストレスなく提供できるのでは、というのが私の妄想です。

課題としては「SDGsはCSRやメセナと異なり、根幹事業へ取り込むことで持続可能な取り組みとなる」という点です。
私が所属している会社は今のところxRを主力事業としていませんので、先は遠そうです。

よって、直近では、下記の考えで取り組んでみようと思います。

①SDGsを市場機会として捉える

いやらしい話ですが、SDGsが流行りもののようになっているのであれば、そこに商機があると考えます。
「SDGs的なアプローチ」を訴求することで、顧客へのフックになるかもしれません。
SDGsの達成に向けた市場は巨大です。
公的セクターとの接点も大量にあるでしょう。
ここをxRという移動手段の変革によって開拓していけるのではと考えています。
これから発展する市場にフリーライダーとして乗るのではなく、初めから参画することで競争優位性を持てるかもしれません。

②ルールを作る側へ

前述の書籍「SDGsの基礎」にも記載されていたのですが、指標はつど見直されているようです。
この指標に対して働きかけ、「ルールを作る側」に回りたいと考えています。

SDGsの目標11は都市の計画に関するものです。
私はここにxRによる移動削減、エネルギー削減を指標として加えたいです。
また、目標8のディーセントワークについてはxRによる遠隔就労の実現を指標として加えたいです。

どうしたら実現できるかはまったくわかりません。
情報を集めるところから細々やっていきます。
成功すれば、未来のxR市場に貢献できるのではと考えています。

ファニー・ヴァレンタイン大統領のいう「ナプキンを取れる者」が決めたルールにただ従順に従うのではなく、自分がナプキンを取れる側になっていきたいですね。

では。

2019/6/21 morio


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