「上を向いてアルコール」

 人気コラムニストの小田嶋隆さんが、二十代の終わりから三十代にかけてアル中だった経験について書いた本です。
 フリーランスで出勤する必要がない環境だったこともあり、一日中飲んでいるような生活をしていたが、反省したり体調が悪かったりで三日くらい酒を飲まないことが月に何回かあるので、自分はアル中ではないとずっと思っていたとのこと。
 アル中の人はシラフだと気分が悪いし、泥酔しても使いものにならないので、その間のほろ酔い期間だけが原稿を書いたりできるのだが、どんなに努力してもその期間がどんどん短くなっていく、という描写が生々しい。
 酒をやめたきっかけは、連続飲酒発作で何も食べられない飲めない状態になり、丸五日禁酒したが、その間一睡もできず、幻聴が聞こえるようになったので心療内科を受診し、アルコール依存と診断されたこと。
 アル中から脱け出すためには、音楽の聴き方や本の読み方、鑑賞するスポーツの種類も含めて、酒がない人生を一から組み直す必要があったという記述が興味深い。