「料理の四面体」

 この本を読むまで筆者のことは何も知らなかったのですが、エッセイスト・画家・ワイナリーオーナーなど多方面で活躍されているようです。
 筆者はまえがきで「世界のあらゆる料理に共通する単純で明快な原理を指摘した」と書かれているが、その原理が本の題名であり、表紙の絵にも描かれている「料理の四面体」です。
 料理の基本要素は、火、空気、水、油だとし、三角錐の上の頂点が「火」、底面の三角形の頂点がそれぞれ「空気」、「水(だし汁等も含む)」、「油」です。四面体の表面および内部のすべてがある料理法に対応します。
 実はこの料理の四面体について語られるのは最後の第6章で、それまでの5章にわたって世界の52の料理のつくり方を紹介しながら、様々な料理の分類、分析が述べられていてこれが興味深いでです。例えば「魚と火(熱源)の距離を変えていくと色々な料理になるが、最も距離を離したのが太陽を熱源とする干物である」とか「さしみは醤油にわさびを混ぜたものをドレッシングとしたサラダである」とか、なるほどという言葉がたくさん出てきます。
 筆者はこの基本原理を知っていれば新たな料理を工夫したり、好みに応じて不必要なプロセスを省略したりするのに役立つだろうと述べています。私は料理をしないので実用的に役立てることはありませんが、とても面白い本でした。