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水樹奈々警察だ! 武器を捨てて、その場に伏せろ!!/ライブにおけるコールについて。


大揉めである。元気があって大変よろしい。

「火事と喧嘩は江戸の華」とはいうが、水樹奈々ライブは、その両方を兼ね備えているので、実質江戸である。

火事とは、水樹奈々の代表曲「ETERNAL BLAZE」を披露中に吹き上がるのことを指す。

まことに景気がいい。

というか、アリーナの前のほうの席だと、ふつうに熱い。
暑いではなく、熱い。

では、喧嘩とはなんのことだろうか。
もちろん、水樹奈々がステージ上でオタクとタイマンをはるわけではない。

喧嘩とは、「水樹奈々オタク界隈でたびたびライブマナーや楽しみかたについて侃々諤々の議論が巻き起こること」を意味する。

水樹奈々オタク界隈は、ライブやイベントがあるたびに、とにかく荒れまくる
新たな「迷惑行為」「発見」されて、その是非についてさまざまな意見が飛び交う。

水樹奈々自身も歌手としてのキャリアが20年に迫ろうとしている。
当然、ファン層は幅広い。オタクの高齢化もすごい

老老老老老老老老若男男男男男男男男女(ろうろうろうろうろうろうろうろうにゃくなんなんなんなんなんなんにょ)という感じである。

だから、考え方も人によって、まるでちがう。
ファン層が広いとはつまり、価値観もまた多様であるということだ。
快・不快の基準さえ、千差万別である。

統一見解を出すことなど、絶対に不可能だ。
しかし、少しでもすり合わせようとして、あるい、己の不快を他者に共有し、共感してもらいたくて、「迷惑行為」「糾弾」する。

さっきから、「迷惑行為」にカギカッコをつけているのは、それが迷惑であるかどうかは、あくまで主観的な判断にすぎないからだ。

そんなこんなで、今日もまた水樹奈々オタクたちは、ツイッターというバトルフィールド不毛な闘争をくり広げる。

直近の例をあげよう。

GW終盤の5月5日。世間が新しい元号で盛り上がるなか、「幕張イベントホール座長公演 “水樹奈々大いに唄う 伍”」というイベントが開催された。

非オタクにはなんのこっちゃかわからないだろう。
説明しておく。

そもそも座長公演とは、歌と芝居を中心に構成される興業である。
ほとんどが2部制に別れており、1部では歌を、2部では芝居が披露されることが多い。
いまはなき、新宿コマ劇場などが代表的な会場である。

みんな大嫌い朝日新聞がわかりやすく要約しているので、コトバンクより孫引きしておく。


「座長公演」

芝居と歌謡ショーの2部構成が、歌手の座長公演の定型だ。新宿コマ劇場(1956~2008)は、その殿堂だった。『新宿コマ劇場52年史』(コマ・スタジアム発行)によると、同劇場初の歌手座長公演は61年の春日八郎さん。昭和の歌姫・美空ひばりさんは64年に初登場し86年まで毎年公演した。70年代は、ほとんどが歌手の座長公演だった年もある。東京では現在、明治座や新橋演舞場などで、舟木一夫さんや天童よしみさんらの公演がある。

(2014-09-22 朝日新聞 朝刊 ニュースの扉より)

要は歌謡曲の歌い手や、演歌歌手が主に行うステージのことだ。
水樹奈々も、もともとは演歌歌手を志していたこともあり、たびたび座長公演を行っている。初演は2009年。

その第5回公演が先日、幕張イベントホールで開催された。
キャパシティは約8000人。
どう考えても、座長公演をやる箱ではない。でかすぎである。

イベントは好評のうちに終了したのだが、そこである楽曲が物議を醸した。いや、ある楽曲に入れるオタクのコールが物議を醸した。

その名も、「なか卯コール」

水樹奈々に明るくない人の頭のなかには、たくさんの「?」が渦巻いているだろう。
順を追って、説明しよう。

まずそもそも、「コール」とはなんだろうか?

的確にまとめた記事がなかったので、乱暴に定義をしてしまうが、「ライブ中に客が入れるかけ声全般のこと」である。
ハロプロなどのアイドル界隈から声優アイドル現場へ輸入された。

語源はもちろん、「call」
オタ芸の一種という見方もあるが、このあたりはややこしいので立ち入らない。

ざっくり、アイドルのライブ映像や音楽番組などでオタクたちが叫んでいる奇声と思っておいてくれればいい。

参考動画を張っておく。ピンと来ない人はチェックしてみてほしい。

なお、こちらはアイドル現場のコールであり、声優ライブではもう少し控えめなコールであることが多い。


これでようやく前提の確認が終了した。

そんなのわかってるよ、はやく本題に入れよ――と思っているそこのオタクくん。そう思うのは、あなたがオタクだからです

「なか卯コール」とは、水樹奈々の楽曲「Hungry Hungry」の中に入るコールのことを指す。

もともと、「Hungry Hungry」がなか卯のCMソングだったことから、楽曲中に「なか卯ー!」と叫ぶというわけだ。

なお、この記事は、なか卯コールを宣伝するためのものではない。
それをきっかけにコール全般について考えてみようという主旨である。

だから、なか卯コールの具体的なやりかたについては説明しない。
気になる人は適当にググるなり、なんなりしてほしい。

話を戻す。「Hungry Hungry」は、昨年夏のツアー「LIVE ISLAND」で初披露された、まだ若い楽曲である。
その経緯について、簡易にまとめたツイートがあったので、引用する。

少し補足しておく必要があるだろう。

「LIVE ISLAND」ツアーの途中で考案された「なか卯コール」は、当初は少数のオタクのなかで楽しまれていたマイナーなコールに過ぎなかった。

風向きが変わったのは、今年4月に「LIVE ISLAND」を映像化したソフトが発売されてからである。

そこに収録された、ツアーの追加公演という形で実施された上海ライブ。
水樹奈々初の中国公演ということで、何人かのオタクたちは現地へ応援に向かった。

だが、この公演は日本人ファン向けに公式ツアーなどが組まれていない。ライブビューイングも実施されていないので、見届けることができた国内のオタクは、そう多くはない。

ゆえに、映像になってはじめて、その全容を知ったオタクがほとんどである。

そして、そこではじめて知ったオタクが多かった。
そう、「なか卯コール」を、である。

僕自身、上海ライブには参加していない。
だから、いまの説明は、僕の経験談である。
しかし、けっこうなオタクがおなじルートをたどっているはずだ。

先ほどのツイートに「上海公演に行ったオタクがハッキリ円盤収録されるくらい楽しんでたそれ(=なか卯コール)」とあったが、たしかに「なか卯コール」はかなりはっきりと聞こえた

これは、非常に重要な指摘である。

なぜなら、昨今の声優ライブにおいては、運営がそぐなわないと判断したコールはディスク化されるときに削除されることがあるからだ。

しかし、今回でいえば、「なか卯コール」は、かなりはっきりと収録された。
つまり、先ほどのツイートは、「なか卯コールは削除されていない=運営から容認されている」ことを示唆している。

もちろん、その1点をもって、「なか卯コール」の正当性を擁護するつもりはない。
だがしかし、主張としては一定の説得力があることは疑えないだろう。

そして、それを観た多くのオタクたちが、日本の座長公演において、さっそく真似をした。

当然、ごく少数による控えめなコールは、大きく存在感を増した。
僕自身、座長公演に参加していたが、「Hungry Hungry」のときに、やけにオタクの大きな声が聞こえるな、と思ったポイントがあった。

当時は存在自体を知らなかったが、いま思えば、あれが「なか卯コール」だったのだろう。

はじめに、「なか卯コール」はマイナーなコールであるといった。
しかし、先日の座長公演において、それがはじめてメジャーになった、少なくとも、その萌芽にはなったのだ。

それは、まちがいないことだ。

そして、新しい文化が発生する場には、かならず摩擦が生じる。
ここでようやく、話は冒頭に戻ってくる。

座長公演が開催されてから数日、水樹奈々オタク界隈は、摩擦=喧嘩が巻き起こっているというわけだ。

断っておくが、僕は「なか卯コール」については賛成・反対どちらの立場もとらない。
というか、そんなことをジャッジする権限は、僕にはない。

ただ、僕自身は、そもそもあまり積極的にコールをするタイプではない。
だから、「Hungry Hungry」がまたどこかで歌われても、コールは入れない。

しかし、その選択を「正義」として誰かに押しつけるつもりもない。
やりたい人は勝手にすればいい。やらない人は勝手に無視すればいい。

ただ、それだけの話である。

そもそも、すべてのコールは、やるもやらないもオタクの自由である。
たとえば、冒頭で話題にだした「ETERNAL BLAZE」には、多くのコールポイントがある。

より正確にいえば、ジャンプ+声を出すポイントではあるが、まあ、大したちがいではない。

ほとんどの人がエタブレではコールをする。どメジャーコールである
しかし、べつに全員が全員、それを真似する必要はない。

僕たちは軍隊に入ったわけでも、マスゲームに参加したわけでもない。
ライブを観に来たのだ

個人的な感覚をいえば、ライブとは「己を解放する場所」である。
ただ、自分がやりたいように、自分がいちばん気持ちのいい方法で音に乗ればいい。

それがコールを入れることならば叫べばいいし、じっと目をつむって聴く地蔵スタイルがいいなら、そうすればいい。

僕たちは自由だ。
それを忘れてはいけない。

しかし、こう書くと、こんなまっとうなツッコミが飛んでくる。

「では、レギュレーションなしの無法地帯でもいいってことか?」

そうはいってない。
すべての共同体には、一定の規律が必要だ。
それが国家になると法律に、ライブになるとマナーやルールになる。

法律をつくるのは、立法府の代表たる国会である。
それがまっとうに運用されているか、そもそも国家の基盤たる憲法に違反していないかを監査するのが、司法権の代表たる裁判所である。

これが、三権分立というものだ(あとは行政権の代表たる内閣があります)。

突然、話がデカくなったと思うかもしれない。
しかし、ライブもおなじである。
ただし、三権分立は保証されていない。

ライブにおけるマナーやルールを策定するのは、誰か?
そう、運営である。

運営が立法するのである。
では、今回のテーマである水樹奈々立法府の見解を見てみよう。

ライブマナーについて、運営はこう書いている。
引用は、最新のライブ「NANA MIZUKI LIVE GRACE 2019 -OPUSⅢ-」より行う。

他のお客様へのご迷惑になる行為や、ライブに支障を来すような下記の行為はご遠慮ください。
 ・ステージに向かって、プレゼント等の物を投げる行為
 ・ご自身の座席を離れての通路等での応援や、ステージへ押し寄せたり、上がる行為
 ・体を必要以上に大きく動かしたり、周囲のお客様に接触するような過剰な応援
 ・他のお客様の観覧を妨げるような手拍子(特に曲が静かになっているときに大きな音を鳴らす行為)
 ・ペンライト・ケミカルライトを投げたり、液漏れ等を引き起こす行為
 ・前後左右のお客様の観覧を妨げるような帽子・衣類の着用

「NANA MIZUKI LIVE GRACE 2019 -OPUS Ⅲ-」特設サイト「ATTENTION」ページより引用(https://www.mizukinana.jp/special/2019_livegrace_3/attention.html)

さあ、どうだろうか?

「なか卯コール」はルール違反だろうか?

順番に見ていこう。
まず、「ライブに支障を来すような下記の行為」として、いくつかの行動が明確にルール違反として定義されている。

ギリギリ当てはまるとすれば、
「他のお客様の観覧を妨げるような手拍子(特に曲が静かになっているときに大きな音を鳴らす行為)」
ではあるが、そもそもなか卯は手拍子ではない。

カギカッコ内の「行為」を拡大解釈すれば、大きな音を鳴らす行為全般に敷衍(ふえん)することも可能だが、構造上、カッコ内は手拍子にかかっていると判断することが妥当だろう。

つまり、声を出すコールは、そもそもこの条文には当てはまらないということになる。

では、「なか卯コール」は晴れて無罪なのだろうか。
残念ながら、ここで話は終わらない。

先ほどの公式文書をもういちど子細に確認してほしい。
ライブに支障を来すような下記の行為」の前にこんな文章が配置されていることに気づくはずだ。

他のお客様へのご迷惑になる行為

あ、あいまいすぎる……………………!
しかも、具体例はなにも列挙されていない。
これでは、判断のしようもないだろう。

つまり、「なか卯コール」が「ご迷惑になる行為」なるものかを、判断することは不可能だ。
そして、僕は冒頭でこんなことを述べた。

さっきから、「迷惑行為」にカギカッコをつけているのは、それが迷惑であるかどうかは、あくまで主観的な判断にすぎないからだ。

そして、こうも述べた。

断っておくが、僕は「なか卯コール」については賛成・反対どちらかの立場をそもそもとらない。
というか、そんなことをジャッジする権限は、僕にはない。

だから、僕は運営がいう「ご迷惑になる行為」の正体を解き明かすことはできない。

なぜなら、僕たちオタクは、ライブ司法権も、オタク違憲立法審査権も、持っていないからだ。

ところで僕はこのテキストのタイトルに「水樹奈々警察」という言葉を用いた。

「水樹奈々警察」とは、「他者のライブマナーについてあれこれとケチをつけるオタク」のことを揶揄的に表現した言葉である。

多様な価値観があふれる水樹奈々現場においては、ことのほか、警察は多い。

しかし、これまでの話に即していうならば、彼らは「警察権」を有していないにもかかわらず、司法権力を行使しようとする存在である。

端的に表現すれば、「私刑」を行う集団である。
気持ちはわかるが、僕はそれを看過することができない。

もし許しがたい「マナー違反」があるならば、立法府=運営に申し立てるしかないのである。つまりは、お手紙である

長くなってしまった。
僕なりにライブマナーについて思うことを書いたつもりだ。

いいたいことは、伝わっただろうか?

(付記)

当記事は、本文中に引用した、ろぶ氏(@ky_nm7)のツイートをきっかけに執筆されている。

感謝してその旨を記しておく。
また、当記事を受けて、ろぶ氏が補足のテキストを寄せてくれた。

こちらを全文引用して、締めとしたい。
なお、noteでの読みやすさを考慮して、こちらで適宜、改行を加えた。

“好きか嫌いか”という意見に関してはそのどちらも正しいと思います。
ただライブにおける自由は必要最低限の規制の中でも可能な限り確保されるべきであり、
本来こんな主観的な問題の域を出ないはずなものを、さも“善か悪か”という客観的な問題であるかのような言い方をして、
誰もが担保されるべき多様性をオタク自ら不必要に狭めることはしないで欲しいです。

(終わり)




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コメント1件

はぐはぐだけにいれてるうちはまだいいけど、ファンタズムや恋想花火もなか卯タイアップなんだよなぁ…飛び火したら辛いなぁ
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