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イラストレーター3.0の時代を切り開く

これから私は、プロ・イラストレーター団体「イラストレーターズ通信」(iratsu.com)の仲間たちと共に、イラストレーター3.0の時代を切り開いていこうと考えています。

イラストレーター3.0とは何か?
ここに、私の考えを書き記します。

■ イラストレーター1.0

イラストレーター1.0は、戦後間もなくから1990年代後半あたりまでのアナログの時代です。
イラストレーターは、電話で仕事を受け、ファックスでラフを送り、手渡しや宅配便で作品を納品していました。

■ イラストレーター2.0

イラストレーター2.0は、1990年代後半頃以降から最近までのパソコンとインターネットが普及した時代です。
イラストレーターは、電子メールで仕事を受け、電子メールでラフを送り、電子メールで納品するようになりました。

■ イラストレーター3.0

イラストレーター3.0は、これから私が「イラストレーターズ通信」(iratsu.com)の仲間達と共に、切り開こうとしている時代です。

この時代はーー
「マーケティングやブランディングの知識を駆使したイラストレーターが生き残っていくであろう」と考えています。

■ 「いい絵を描きさえすれば仕事がくる」は、幻想

「いい絵を描きさえすれば仕事がくる」そんなふうに信じる人は多いです。この言葉には、イラストレーターを目指すものなら誰もがすがりたくなる輝きがあります。
例え仕事が少なくとも、この言葉を呪文のように唱えると、なんだか自分を安心させることが出来ます。

でもーー
現実を見ると、それが事実ではないことは明白です。
とてもいい絵を描いているのに、イラストレーターとしては食べていけない人がたくさんいるのです。

かつてーー
絵さえ良ければ仕事が来た時代もありました。
昭和の時代です。
バブルの頃までは、いい絵を描きさえすれば、それなりに仕事が来ていました。
それは、なぜなのでしょう?
答えは簡単です。
まだ、イラストレーターの数が少なかったからなのです。

当時、出版界も広告業界も、新しい才能に飢えていました。
ベテラン・イラストレーターの方々に聞いたところでは、『イラストレーション』(玄光社)で作品が紹介されるだけで、仕事を依頼する電話が何本も来たそうです。
今活躍するベテラン・イラストレーターの多くは、マーケティングの知識に頼らなくとも、仕事がたくさん来ていたのです。
ですから、「マーケティングの知識なんて邪道だ」と考えている人もいるのかもしれません。

しかし、時代は変わりました。
いい絵を描くイラストレーターが増えすぎて、余っています。
供給が需要を大きく上回ってしまったのです。
今や、「いい絵を描きさえすれば仕事が来る」と言う考えは、幻想となっています。
『イラストレーション』誌に掲載されても、仕事が来ることは滅多にありません。
昭和の経験や知識が通用しない時代になっています。

社会に目を向けるとーー
昭和のやり方で通していた企業は、21世紀に入ってから窮地に陥っていることが多いですよね?

イラストレーターも、昭和の時代と同じことをやっていては生き残れないと考えています。

■ 「レッド・オーシャン」と「ブルー・オーシャン」

『ブルー・オーシャン戦略』(W・チャン・キム + レネ・モボルニュ・著)は、マーケティング関連の書籍として歴史的な名著です。

その書籍の中で、「レッド・オーシャン」「ブルー・オーシャン」という概念が提唱されています。

「レッド・オーシャン」とはーー
血で血を洗うような、多数の競合がひしめく市場を指します。
たくさんのライバルに勝つためには、値段を下げることになりがちです。
苦労が多いにもかかわらず、利益を上げることは難しいです。

「ブルー・オーシャン」とはーー
競合がいない、または少ない平和な市場を指します。
ライバルと戦う必要は、ありません。
苦労が少ないにもかかわらず、高利益を上げることが出来ます。

この概念を、イラストレーター業界に当てはめて考えてみましょう。

バブルの頃まで、イラストレーター業界はブルー・オーシャンでした。
イラストレーターの数が足りないので、いい絵を描きさえすれば、どんどん仕事が来ました。

しかし、バブルの頃から、イラストレーターを目指す若者がどっと増えました。
「日本グラフィック展」「ザ・チョイス」「JACA日本イラストレーション展」などの新人発掘のコンテストがコンテストが、次々登場したことも大きいです。
応募作品受付会場では、イラストレーターを目指す若者が長い列を作っていました。(私も並んでいた一人です)
こうしたコンテストから出てきたのが、日比野克彦さんをはじめとするスター・イラストレーターです。

あれから約40年が経ちました。
イラストレーター発掘のコンテストはさらに増えています。
そしてイラストレーションを教える教室等も増えました。
「青山塾」「MJイラストレーションズ」「F-SCHOOL OF ILLUSTRATION」などの教室が、多くの才能を輩出しています。
上手な卒業生が、本当に多いです。

今も、イラストレーター志望の若者は、ますます増え続けていいます。
ネット上を見ると、驚くほどたくさんの自称イラストレーターがいます。
みんな「お仕事募集中」などと掲げています。
一体何人のイラストレーターがいるのか、正確な数字は誰にもわかりません。
「イラストレーターという職種で確定申告している人は、1万人程度」だそうです。
ランサーズの調査では80万人(?)という数字も出ているようです。
参考ページ:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13235619998

これほどたくさんの競合がいる業界は、そう多くはありません。
今のイラストレーション業界は、究極の「レッド・オーシャン」なのです。

■ 運ではなく、ブランディングやマーケティングなどの知識に頼る

これだけたくさんいる競合の中から選ばれるのは、ほとんど宝くじを当てるようなものです。
でも、宝くじのように運に頼るしかないのでしょうか?
究極のレッド・オーシャンで食べていく方法はないのでしょうか?

その方法はあります!
レッド・オーシャンで成功している企業は存在するのです。

ビール業界で、異例のヒットを飛ばしたのがビール・サーバです。
〈「買って終わり」からの脱却。キリンビールがサブスクリプションで目指す「New Beer Experience」とは〉
https://exp-d.com/interview/4628/

お菓子業界で異例のヒットを飛ばしているのが湖池屋です。
〈「人の生活の一部になる」。ヒット商品を連発する湖池屋のマーケティング部長が考えるマーケティングという仕事の「本質」〉
https://lab.re-katsu.jp/special/detail/id=581

チョコレート業界で異例のヒットとなったのが、「ザ・チョコレート」です。
〈なぜ明治「ザ・チョコレート」は成功したのか?元日経MJ編集長が語る、ヒット商品の条件とは〉
https://www.bil.jp/blog/details/34

私はイラストレーターを引退してから、マーケティング・ブランディング・経営戦略・営業・宣伝等に関する書籍を読み漁りました。
そこにあったのは、私の全く知らなかった世界でした。
これまでにたくさんの天才が、事業が成功する秘訣を考察し、数々の名著を残しています。
『ブルー・オーシャン戦略』もその1冊ですよね。

それらの書籍を読んで、世界の見方が変わりました。
事業が成功するかどうかは、運ではなかったのです。
イラストレーターも、事業の一種です。
イラストレーターも企業と同様に、運だけで成功できるわけではないのです。
時に運に恵まれることもあるかもしれませんが、運が永遠に続くことはあり得ません。
宝くじで毎年高額賞金を当て続ける人がいないように、運だけで、イラストレーターとして継続的に食べていくことは難しいのです。

本当にイラストレーションで食べていきたいのならーー
運ではなく、ブランディングやマーケティングなどの知識に頼るべきなのです。

■ インボイス制度、画像生成AIの台頭で、さらなる激変期に

イラストレーターの数が増えただけではありません。
残念ながら、インボイス制度が始まることになりそうです。
さらに、画像生成AIも、驚くような進化を続けています。

イラストレーション業界は、かつてない激変期となるでしょう。
イラストレーターが生き残っていくのは、容易ではない予感がします。

そんな荒波の中で、ブランディングやマーケティングなどの知識は、羅針盤であり、海洋図であり、頼もしいエンジンともなるはずです。

■ そうして、イラストレーションという名の小さな幸せが世の中を巡回する

私たちは、天才的な頭脳の持ち主が必死に考え抜いた知識を、書物から得ることが出来ます。
天才たちの考えたことを実行することで、自分だけでできることの限界を超えることが出来ます。
私たちにとって、天才たちが書き記した書物の知識は、限界の壁も飛び越えることのできる翼です。

私は、天才たちの書物から学んだ知識をもとに、イラストレーターに特化したマーケティング・ブランディング手法を考案しました。
それは、究極のレッド・オーシャンで生き残っていくための秘策です。

この秘策を「イラストレーターズ通信・スクール」(https://www.illustrators-tsushin-school.com/)の講義として書き残すことが、今の私のライフワークとなっています。

私が書いたものから学んだ「イラストレーターズ通信」会員や「イラストレーターズ通信・スクール」の卒業生たちが、イラストレーションという名の小さな幸せを世に送り出しーー
商品やサービスの売上に貢献することでクライアント様が豊かになりーー
消費者にも喜んでいただくーー
そうして、世の中全体にたくさんの小さな幸せが巡回するーー

そんなイラストレーター3.0の時代をイメージしながら、日々活動しています。

文:「イラストレーターズ通信」主宰 森 流一郎


「イラストレーターズ通信」は経済的にとても苦しく、森流一郎は借金をしてなんとか運営を続けております。もしよろしければ、サポート(投げ銭)をお願いします。団体の活動資金とさせていただきます。