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脱北してロボットになった話

「ここは明るい監獄だ」
by期間工時代の先輩

「期間工」と聞いてみなさんはどんなイメージを持ちますか?

3K、底辺、地獄、タコ部屋、鬱不可避…
大体こんなもんでしょうか

今回は僕が2年間の期間工生活で感じたことを正直に書いていこうと思います

(あくまでも僕の経験であって、全メーカー、期間工全員が同じというわけではありません)

期間工か、マグロ漁船か

大学を休学し、煙草を買うお金すらなく、それでも札幌の実家を出たかった当時の僕はそう考えました

すぐに面接を受け、無事合格

期間工をやると決めてから某県に到着するまで約3週間
持ち物は服と貴重品のみ
いらないものは全部捨てました

さて、座学や簡単な研修、健康診断、諸々の必要書類記入を済ませ、配属工場と寮の発表

出勤初日は簡単な挨拶、そして安全教育と称した写経大会

配属は最もキツいと言われる組立課で、連続二交代制勤務

詳しくは言えませんが、車種毎に違うボルトの締付けや各種部品取り付け、調整が主な仕事でした

これを日勤と夜勤(以下1直、2直)で週替わりに繰り返します

1日の具体的な流れは以下の通りです

4:00 起床
4:30 朝食
5:00 送迎バスで出勤
5:30 工場着
5:30〜6:20 始業前の準備、朝礼

6:30〜8:30 ライン作業 第1ラウンド
(休憩)
8:40〜10:40 第2ラウンド
(昼休憩)
11:25〜12:55 第3ラウンド
(休憩)
13:05〜14:35 第4ラウンド
(休憩)
14:45〜15:15 第5ラウンド

17:30 帰宅、夕食、入浴
21:00 就寝

2時間、2時間、1.5時間、1.5時間と第5ラウンドの開始30分までが定時

2直の場合もほぼ同じタイムスケジュールで、15:30出勤の3:30退勤(4:00帰宅)です

え?15:15〜17:30まで時間が飛んでますか?
はい、残業と後片付けです

ライン残業は1直でMAX1時間、2直でMAX1.5時間(+ライン外残業はMAX30分間)

ここに関しては敢えて曖昧にしますが、僕らの口癖はこうでした

「もはや残業MAXが定時」
「もう半日以上ここにいる」
「今週まだ陽の光を浴びてない」


なぜかライン残業限界突破1.75時間の日もありました(噂では2時間が本当のMAXらしい)

でも安心して下さい、残業代はちゃんと出ます

休日出勤は1直週の土曜日のみ
これがあると、土曜早朝帰宅からの月曜早朝出勤でそこから週6勤務

とはいえ、慣れれば何てことありません
僕みたいなヒョロい男にもできました

確かに最初の3ヶ月間は地獄でしたが、
そのうちどんなに眠くても疲れていても身体が勝手に動く「自動車製造ロボット」になれます(◻私はロボットではありません)


ただし梅雨と真夏の暑さ、テメェらはダメだ

暑い、暑すぎる
スポットクーラーごときではどうにもならない
熱された車体が熱い
汗を拭く暇もポカリを飲む暇もない

自動車製造のライン作業は極限まで効率化され、1台につき何秒というタクトが決められています

流れによってはそれ以上の速さを求められます

ほぼ止まることのないライン上の作業でミスをすると一気に遅れ、それを取り戻すためにはより超スピードでの正確な動きが必要になります

もちろん、呼べば助けてくれる人はいますが基本的には一人でなんとかします

約1.3分/台、約360〜380台/日
ボルトの締付けだけでも約2200本/日
もちろんそれ以外の作業もある
工具やボルトを満載した重たい台車を動かしながらです

これを「真夏のビニールハウス内のような暑さ」の中で延々と続ける、外気温は38℃

熱中症で倒れて死ぬか、発狂して死ぬかの2択しかない

あたまが、おかしく、なる、よ

はい、ここで残念なお知らせです
「顔と首以外の肌の露出は基本認められません」


帽子、手袋、腕・手首カバー、腰布、安全靴の装備が必須です(○す気か)

みなさん知っていますか?
人間は肉体・精神共に限界を迎えるとまず「無」になります
無なので何も感じません

その後「ゾーン」や「ランナーズ・ハイ」のような状態になり、「肉体と精神の完全な調和」や「全能感」を味わいます

僕はこの状態になるとボルト回し(箱から決まった本数のボルトを取り、締め付けながら逆の手の中で向きを調整しインパクトにセットすること)のミスが一切なくなり、疲れを感じないどころか楽しかったです

まさに「最高にハイ!」ってやつです
これは多分、期間工あるある

冬?
早朝と深夜は寒すぎて身体が動きません
でも夏よりは100倍マシ


さて、お仕事ツラいツラいアピールはこのぐらいにして寮の話をします

基本的な情報は以下の通り

・1ドア4ルームのタコ部屋
・鍵付き約6畳
・家賃水道光熱費無料
・エアコン、冷蔵庫、テレビ、ベッド、ポット完備
・洗面台、トイレ共用
・寮内に浴場、食堂、コインランドリー、駐車場有り
・全室喫煙可

こんなもんでしょうか
寮によっては一人部屋(トイレや洗面台はフロア毎)だったりもします

暮らしやすさは隣人ガチャ次第
外れたら一生イヤホンをして過ごしましょう

食堂の支払いが従業員証(翌月天引き)だったので、無一文で入寮しても給料日まで余裕で暮らせました+αクレカ

何にせよ、住めば都
仕事と同じでそのうち慣れる

職場の人間関係も隣人と同じくガチャ

会話の9割は「お酒、煙草、ギャンブル、風俗、仕事の愚痴」

特に喫煙者率とギャンブラー率はとても高かった

期間工は人生をストレートに歩んでいない人が多い
とは言え、みんなある程度の年齢なのでヤンキーは少なかった

・元ホスト&保育士
・元アパレル勤務の自称DJ
・パチンコ&改造車&スピード狂い
・妻子持ち出稼ぎオジサン

みんな本当にいい人でした
仕事終わりにラーメン食べに行ったり、一緒にバイク弄ったり

真夏の仕事終わりにアイスを食べながら帰ったり、昼休みに抜け出して煙草を吸ったりしたのはいい思い出です

期間工だけではなく、社員の方たちにも恵まれていました

人間関係ってホントに大事

ちなみに、女性期間工はかなり少なかったです
1〜2割かな?


さて最後に金銭面と、これから期間工をやってみようと考えているみなさんへ簡単なアドバイスを

・お風呂、食事、睡眠を大切に
・入寮したら電子レンジとネット環境を揃える
・インパクトを使うのに握力はいらない
・ミスを隠すな流すな必ずバレる
・身体が痛くなったら正直に言う

・稼働中にトイレへ行くのを恥ずかしがらない
・虫対策はしっかりと


これらを守ればもう何も怖くありません

仕事はキツいし退屈、それはそうです
ただ、普通のアルバイトをするよりは確実にお金がもらえます

年末年始、GW、お盆にそれぞれ約10日間の休みもありました

僕は2年間でバイクの免許取得、購入、フルカスタム、長期休暇の度に旅行…等好き放題しましたが、それでも自然と約200万円残りました

忙しさ次第ですが、
月20〜30万+祝い金+期間ごとの満了金で手取り400万ほどでしょうか

ニートよりは断然マシ
やってみて無理なら辞めればいい、大丈夫なら社員になる手もある

「思ったよりは悪くなかった、でも二度とやりたくねぇ」
「確かに仕事はクソだけど、それでも誰かのために必死で働いてる姿はニートの1000倍カッコいい」

この2つが僕の言いたかったことです

余談ですが、このご時世で半導体の供給が少なくなり、工場がストップしているところもあるみたいです

これから応募する方、その辺りのチェックはしておいた方がいいかも知れません



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