バウムクーヘンの穴に灯油を注ぐ

引っ越して早々、私は部屋の片隅に置いてあったストーブを押し入れにしまった。至極当然な行動だと思う。誰だってそうする。私だってそうする。

だって六月だよ。これから七月、八月と灼熱地獄に突入してくんだよ。ストーブなんて砂漠のバウムクーヘンじゃん。いや、バウムクーヘンは良く言い過ぎたな。砂漠の湯たんぽ、サウナのホッカイロ、って、例えっていうか置き換えてるだけで意味ないから捻らずに言うと、暑い部屋でストーブなんか見たくもないわけですよ。

しかし現在、私はストーブをつけ、その真正面に陣取っています。


信じられないと思うけど、寒い。山で働いてたときも寒かったけど、あのときは「涼しい!」という感動のほうが大きくて気にならなかった。その山と比べると大した標高ではないし、そこまで寒くはならないだろうと舐めてかかってました。

長袖も薄手の服しか持ってこなかったし、エアコンいらずですよと聞いてはいたけど、「またまた誇張しおってからに・・・」と、状況次第では扇風機の現地調達も検討していました。

ストーブの世話になることはないだろう、と高を括っていたのに、このざまです。実家から上着と愛用のドテラを送ってもらうまで、ぶるぶる凍えていました。寒い。


私は暑さがだめで、夏が来るたびに太陽腐ってカビ生えないかなと願うタイプなのですが、寒けりゃ寒いで文句を言います。私が好きなのは涼しいと暖かいであり、寒いでも暑いでもないのです。そりゃそうか。

でもなあ。ストーブってなんか好きになれないんですよ。空気の質が下がるじゃないですか。せっかく大自然に囲まれてるのに、なんでこんな灯油まじりの空気を吸わなきゃならないんだ。

灯油やガソリンの匂い。私は結構好きなんですけど、それは一瞬嗅ぐ場合に限ります。ずっと吸ってたら普通に気分が悪くなってくる。タバコも吸わない上に田舎者の私は、汚い空気に耐性がない。しばらく北海道にいたこともあり、空気ソムリエのランクは確実に向上してます。第一回きき空気選手権が開催されたら、全問正解できるでしょう。

私が吸いたいのはぁー、こんな灯油臭のする空気ではー、ございません!

とまあ、文句を言いつつストーブは手放せない。夏になると適温に近づいてくと思うから、それまでの辛抱だよ。


ストーブと言えば、私は灯油を買いに行くのは好きだな。雪の吹きすさぶ中で、光だけがあたたかいガソリンスタンドでポリタンクに給油していると、寒いはずなのにほっとする。暖かさへの期待と安心感のせいかな。その時ふっと香る一瞬の灯油の匂いが、私は好きだと言ってるのですよ。

ここの灯油は勝手に補充されるシステムだからそんな手間ないけども、快晴のガソリンスタンドで灯油入れてる人の姿を思い浮かべると、ちょっと辟易とします。まるで砂漠でバウムクーヘンを食べてる人を見ているような・・・って、それはもういいか。

なんだかんだ言ってるけど、じつは暑いのも寒いのも好きなんですよ。バウムクーヘンも好き。結局は頻度の問題です。一瞬ならいい。継続されるならずっと適温がいい。ドラマチックな人生なんて望まない。望まなくてもドラマチックなことは勝手に巻き起こるし、ずっと波乱万丈なんて極寒と酷暑に常に身を置くような生活、私はしたくない。

つまり何が言いたいかというと、エアコンがほしいってことです。生態系狂ってもいいから、誰か地球にエアコンつけてくれないかな。

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