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「少しひどくはないですか」が好きな国。

東京入国管理局のこのツイートが「炎上」。またいつものTwitterが繰り広げられている。

~落書きは止めましょう~
11月19日早朝,港南大橋歩道上にて。
表現の自由は重要ですが,公共物です。
少しひどくはないですか。。。https://twitter.com/IMMI_TOKYO/status/1064810387797733376

このツイートを見て「当然、東京入国管理局がひどい」という当然な意見が多数あるものの、また例のごとく「ラクガキは犯罪だ」「こんなこと(ラクガキ)なんかしたら反感を買うだけ」「ラクガキを擁護するな」「清掃員だって大変なんだぞ」といった反応も登場している。

ほんと、いつも通りだなーって感じ。

この話はまったく単純だ。

①ラクガキ
②入管での移民対応
③東京入管がラクガキについて批判ツイート&それをプロフトップに固定

それぞれ話としてはまったく独立のことだ。

ラクガキは悪い。悪いというか違法だろう。「違法じゃない」なんて多分誰も言ってない。言ってる人もいるとは思うが無視していい意見だ。無視する。

他方でラクガキするかしないかに関わらず、②入管での対応はまったくひどいと言うことができるし、③東京入国管理局が「FREE REFUGEES」の意味がわからぬわけでもないだろうに「あまりにひどくないですか」とわざわざツイートすれば、そのこと自体の倫理性を問われ、強く批判されるのは当然のこととしか言いようがない。「あまりにひどくないですか」と。

......とここまで書いて、これで終わりなんだけど、Twitterでの「炎上」はいつも絶対にこれで終わらず、逆の相対化をしてくる。すなわち、

「入管が仮に悪いとしても、ラクガキは犯罪だ」
「ラクガキを擁護するな」
「犯罪を犯罪と言って何が悪い」

的な。

一見これは「コップに水が半分しかない」「コップに水が半分もある」といった表現方法、視点の問題に過ぎないように見えるが、そういうわけじゃない。

あまりにもバカバカしくて真顔で聞いてしまうんだが、ラクガキはしないほうがよいとして、難民の生死や人権が問題になってるときに「いや、ラクガキはいかんよ!」とだけ真顔で言えてしまうとしたら、一体それはなぜなんだろう。

Twitterを見ていると、いつも疑問に思うのだが、一体なぜこの国は(これは「少なくともこの国は」と読んでほしい。筆者には残念ながら外国で生活した経験がない。他の国も同じくらい「意識が低い」のかもしれない)「比較的軽微な、でも明確に違法な行為」と、「倫理的には到底許されない、がそれ自体は法律には明確に触れてるとは言えない行為」があったとき、前者のみを断罪するのが好きな人が、こんなに多いんだろうか。

今回の件で言えば、ラクガキは明らかに犯罪だと、小学生でも指摘できそうだ。でも、まあ、「明らかな難民を難民として認めない」「収容所で身柄を拘束する」といった日本の入管の対応に比べれば「比較的軽微」と言いやすいだろう(だいぶ譲歩した表現をしてみたぞ)。



他方で「表現の自由は守られるべきとしても、少しひどくはないですか」とSNSで訴える(別にお前らがラクガキ消す業務をしているわけでも、その責任者でもないのに)ことは、難民やその支援運動をしている人への悪印象をもたらす(『難民政策に反対してないやつがこんな「メッセージ」(そう、都合いいときだけ「ラクガキ」ではなく「メッセージ」)書くわけないだろう?』)。相対的に自分たちの行為を免罪し、現状の人権侵害を見えなくさせるという、クソな、じゃなかった、倫理的に見れば到底許されない、と言わざるをえない(婉曲表現)行為だが、まあ、Twitterに。投稿しただけ。文章を書いただけなんで。これ自体は違法でも何でもないわけだ。

なぜだかよくわからないが、この国の少なくない「国民」は、「それも大事ではありますが、少しひどくはないですか」的な物言いが大好きなのだ。礼儀正しい、穏当な、婉曲的な物言いで、他者を大きく傷つけることができることもあるとは、あまり思わないらしい。

東京都入国管理局がこんなツイートをした目的は明らかだ。難民や難民支援をする人に悪印象を植え付けること。これを見たTwitterユーザーに、監視カメラ、通報装置になってもらうこと。今後、路上に公共物にメッセージを残しにくくなれば、相手の「指し手」をまた一つ奪うことができる。もちろん批判もされるだろう。だが。炎上? 上等だ。どうせ入管批判してるやつは何したって批判してくるんだし、それでも多くの「日本人」は「確かに少しひどい」と同調してくれるだろう。

11月20日夜,Twitterにて。
公共物の保全は重要ですが,ことは人権問題です。
少しひどくはないですか。。。

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