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5.1.企業に求められているものとは

いよいよここからは、キャリコンのスキルとノウハウを活かしたスモールビジネスで稼ぐために、ターゲット別に具体的な稼ぎ方を説明していきます。

まずは企業領域から。私のオススメはここです。

対個人や研修講師もいいのですがここが一番稼げます。会社に対するコンサルタントですから、利益が多い会社であれば個人向けキャリアコンサルティングの数倍~数十倍の単価で契約してくれます。月数十万円の契約も夢ではありません。

また、厚生労働省もセルフ・キャリアドック導入支援事業やセルフ・キャリアドック普及拡大加速化事業を展開していますので、国としても本気で企業に向けて従業員へのキャリア支援を広めて定着させようとしているのが分かります。

数年前まではセルフ・キャリアドック助成金という、就業規則にセルフ・キャリアドック制度の導入(定期的にキャリアコンサルティングを従業員へ受けさせる等)を明記して、実際に従業員に受けさせると企業に数十万円の助成金が支給される制度も存在していましたからね。

これだけいろいろ施策を打っているのでさぞ企業もキャリコンを求めているんだな、と思いがちですが、企業領域でのキャリコンが普及しているかと言えば一部大企業のみというのが悲しいかな現実なのです。社内キャリコンでも、社外キャリコンでも。

セルフ・キャリアドックでは売れない

タイトルからして哀愁漂っていますが、残念ながらセルフ・キャリアドック導入支援では売れません。もし、あなたの商品がセルフ・キャリアドック導入支援という名前でしたら、ほぼ間違いなく買われないので諦めましょう。

理由は3つあります。1.一般にはほとんど知られていない。2.名称が何を意味しているのか分からない。3.どんな効果があるのか簡単に説明できない。

セルフ・キャリアドックの定義は厚生労働省のパンフレットによると、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組、また、そのための企業内の「仕組み」のことです、が。

国家資格化されたというのにキャリアコンサルタントの知名度のなさも嘆きたくなりますけど、いかんせんセルフ・キャリアドックのそれは資格名を遙かに上回ります。

まだジョブカード普及率の方が高いですよ、2020年度までに300万人の取得者数目標だから達成できても労働人口の5%に満たないものですが、それでもまだまし。キャリコン界隈では試験にも出題されるので必須知識ですが、一般的にはまったく知られていないですジョブカードもセルフ・キャリアドックも。

知っている経営者も「ああ、そんな助成金あったよね」程度です。そして、酷いこと書きますが商品にするには致命的なネーミングです。

セルフで、キャリアを、ドック???

企業の強みを引き出す言語化マイスターの弁理士にぜひダメ出しして欲しい、特徴は出てるけど専門的すぎる名前だ、業界内の人なら分かってくれるけど、買ってくれる顧客はそんな専門知識を持ち合わせていません、と。

業界内の私でも名前の意味がよく分かりません、人間ドックのキャリア版だということくらいしか。本当に申し訳ないですが、セルフの意味が不明でして。セルフ=自分自身でキャリア自律しろ、でいいですかね?キャリア自律するための、船の建造・修理などを行うために構築された設備でいいですかね?

さらにセルフ・キャリアドックという名称を知らない人にどんな制度なのか説明するのがとても大変です。商品やサービスの名前を一生懸命説明せざるを得ないこと自体がデメリットなのに。

あ、ここまでボロクソに言っていますけど、私はセルフ・キャリアドックの主旨に賛同していますし、これからの世の中で企業が生き残るためにも、人生100年時代のライフシフトに従業員の方が対応するためにも必要な制度だと思っています。実際、顧問先に制度導入していますし。

ですが、ですよ?その効果を説明できないんですよ、簡単には。それがセールスに最も大切なものなのに。

もしセルフ・キャリアドックを売るならば

セルフ・キャリアドックの効果は厚生労働省のパンフレットによると2つです。①従業員にとっては自らのキャリア意識や仕事に対するモチベーションの向上とキャリア充実。②企業にとっては人材の定着や活性化を通じた組織の活性化。

ううむ、いいこと言っているのは分かる、分かるけどそれが叶った理想の状態が見えない。セルフ・キャリアドックの実施形態を確認すれば見えるかもしれません。

実施形態はパンフレットによる事例を要約すると4つ。

①新卒採用者の離職率が高いという課題に対して、職場への定着や仕事への意欲を高めていくことが期待される。

②育児・介護休業者の職場復帰率が低いという課題に対して、職場復帰を円滑に行うことが期待される。

③中堅社員のモチベーションが下がっているという課題に対して、モチベーションの維持・向上を図り、キャリア充実の実践度合いを把握できる。

④シニア社員の長い生涯キャリアの設計とその実践という課題に対して、自分のキャリア開発に当事者意識と責任をもつ仕組みを確立できる。

ええい、聞き心地の良い声だが分かりにくい。しかも多岐に渡りすぎていますよね、その効果と言う名の価値が。これをもう少し細分化したら良いコンセプトと商品になるのですが、つまるところセルフ・キャリアドックとは名称がアレかつその定義と効果が広すぎて、商品には向いてないのです。

素晴らしい仕組みと取組みなのですし、「セルフ・キャリアドック入門:キャリアコンサルティングで個と組織を元気にする方法」も良い本なのですがねぇ。

もしセルフ・キャリアドックを商品にして導入支援を民間で頑張っている方がいらっしゃいましたら、どうその価値を、ベネフィットを顧客に伝えているのか興味があります。

ベネフィットとは商品を売るときのアピールポイントとして掲げる商品の特徴により、購買者にどのような体験をし、どのような変化が現れるのかを示すものでもあります。メリットの先にある満足感、嬉しい変化の表れ、プラスの体験などを指しますが、セルフ・キャリアドックをそのまま導入支援で売ろうとしたら、たくさんありすぎて拡散します。価値が届かないです。

もっとシンプルに、そしてニッチに提案できると、導入支援でもいけるかも知れません。しれませんが、条件としてはセルフ・キャリアドックという名称を使わないで導入することかと。私も顧問先に制度導入したとはいえ、提案時に商品名としてセルフ・キャリアドックという名称は一切用いませんでしたし。私も広めたいんですけどね、セルフ・キャリアドック。

企業領域は多岐にわたる

ここで忘れてはいけないのが、あなたのコンセプトと商品です。

どうもキャリコンの企業領域=セルフ・キャリアドック導入支援をしなけれならない、という思い込みが散見されます。あるいは採用支援や離職防止対策(この2つは私の本丸ですが)、女性活躍推進(私もやりますが)にシニア活躍推進、休職者の職場復帰、外国人や障害を持たれた方の雇用支援といった人材や組織に関することがキャリコンの企業領域だ、という勘違いが。

もちろん、キャリコンに向いているのはそれらを支援することでしょうが、一口に企業領域といっても、あなたが助けたい会社や所属する人の属性によって、もっと違う分野や分類も、細分化もできるはずです。あなたの価値ある知識と経験、やりたい&できる&稼げるコンセプトに基づいたキャリコン×◯◯×◯◯で。

もしキャリコン×FP×経理経験だったら中小企業の外部経理部長やりますという財務面の支援ができますし、キャリコン×営業マン×数値化だったら営業コンサルティングや売上向上コンサルティングができるでしょう。

前者は経理担当の方にキャリコンしてモチベーションを高めつつ経理部門全体の効率化を支援すればいいし、後者は営業マンにキャリコンしながら営業成績を数値化することで現状分析し、成績が伸びる箇所に対してこれまで培ってきた営業スキルをぶつけて売上増につなげればいいのです。

私のキャリコン×中小企業診断士×元SE×転職10回だったら、IT企業の離職率改善ができます、ですよね。掛け算が1つ多いですが、多いほどニッチになれるので潜在顧客がいることを前提に掛け算を足していきましょう。

別にキャリア支援に拘らなくてもいいのですよ、私たちは。コンセプトデザイン次第で、私たちキャリコンにとっての企業領域には無限の可能性が広がっているのです。

実際私も、人材育成ビジョン・方針の前に企業理念すらなかった顧問先だったので、その作成コンサルティングと広めるための研修と個別面談を組み合わせた制度を作り上げて導入したら、結果的にそれがセルフ・キャリアドックだったというだけです。入口はあくまでも、エンジニアの離職率改善からでしたね。

企業領域は以上のように業種業態により多種多様に支援するところがありますので、もし自分のコンセプトが通じなくなったら、他のコンセプトを考えればいいだけです。今は新型コロナウイルス感染症の影響で採用支援をメインでやっていたコンサルタントや会社は壊滅状態です、採用どころじゃなくなった会社が多いためにニーズがなくなったので。

そうしたら、違う支援領域を見つければいいのです。キャリアデザインは変幻自在、それと同じように過去のコンセプトが通じなくなったら変えれば良いだけです。企業領域で私たちが支援できるところは必ずありますから、また自己理解から進めましょう。

企業に求められるために

当たり前のことですが、私たちキャリコンの商品にニーズがなければ売れません。では、企業領域にはどんなニーズがあるのでしょうか?

改めて聞かなくても、コンセプトや商品の「何を(WHAT)」で検討していますよね、顧客の悩みや痛み、苦しみを。それがニーズなのですが、本当にコンセプトで想定している通りの悩みが企業にあるか、確かめないと私たちの商品が売れないですよね。悩みの解決と理想の状態へと連れて行くのが私たちのベネフィットですから。

市場分析として抱えている悩みを直接企業にヒアリングしたいところですが、できるのはまれです。私は最初まったくできなかったです。想定していた企業が持つ悩みが実際と余りズレてなかったのは幸いでしたが。IT業界で10回転職しているのは伊達じゃない、です(νガンダムの名台詞)。

それはともかく、何故かと言いますと、企業の悩みを話してくれるのは社長以外にいないからです。いくら従業員の方が自社の状況を説明してくれても、あくまで一社員の話なのでそれが本当かどうか判断できません。会社の過半数の社員からヒアリングできれば合っているような気もしますが、社長が従業員の抱えている悩みに気付いていない限り、企業にとっての悩みはないと同じです。

会社を経営している社長こそが悩みを把握し理解できる唯一の人間です。

だから社長に会わないと想定した悩みが本当に合っているのか分からないし、その悩みを解決できる商品も売れないのですが、では、私たちは社長にパッと会えますでしょうか?

そうそう会えないと思います、自社の社長にも大企業では会えないのに、他社の社長になんて難易度高い、高すぎる。そう思っているキャリコンの方が多いから、企業領域で活躍するキャリコンって少ないんですよ。

かくいう私も大企業の社長となんか会ったことありません。せいぜい同じセミナー会場や交流会で同席するくらいで、ご挨拶ができる程度です。よく友達とかと話す「おれ昨日、芸能人の◯◯と会ったんだぜ!」と実際は撮影現場に遭遇した程度の話を盛ったようなものです。

ですので、「誰に(WHAT)」で企業を選択した方は、大規模な会社ではなく中小企業を狙った方がいいです。

仮に大企業の社長に運良く会えて、信頼関係築いてニーズも把握でき「その商品いいね!うちの会社で買っても良いよ」とこれまた運良く言われても、実際に買ってくれることはまずありません。ある程度規模が大きくなると、社長の鶴の一声で何か買うことは組織構造上あり得なくなるからでして、セリフの続きは「買っても良いから、担当営業に資料渡しといてね」です。

で、担当営業の方に提案書を渡して信頼関係を築きニーズを把握しプレゼンにクロージング、これでOKがでたら次は担当主任と、さらに課長と、やっと担当部長と、ときてついに決済権限を持つ部門長に会える、という時間も労力も果てしなく使うものになります。以上、私の経験則です。

ですので、決裁権を持ち自分の判断で買う買わないを判断できる中小企業の社長に会うことを考えるのがオススメです。どうしてもペルソナを大企業にしたい方は、正直私にはやり方が分かりません。紹介を重ねていくくらいでしょうか?いずれ分かるとは思いますが、年1,000万稼ぐには、そこまで求められていません。

そうは言っても、大企業じゃないからって同じ社長なのだから、会える方法がさっぱり分からない。そんな声が聞こえてきますので、次回はどうやったら中小企業の社長と会えるのか、経験と本質からその方法をお伝えします。

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