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立ち飲み屋なのに、女性一人客が常連さんになってくれる理由。

「なんかさ~、うちの店、女性一人の人多くない?」
「うん、おれもそう思う。」

田端の小さな立ち飲み屋「タバタバー」から自宅へのいつもの帰り道。まだお店をオープンして1か月くらいのころ、マスターとわたしとで、うちのお店に来てくれるお客さんの傾向についての印象が一致した瞬間でした。

そうなんです。なぜだか女性のお一人飲みに遊びに来てくださる方がやたら多い。しかも一人飲みに慣れている方なのかと思いきや、みんなそろって「一人で飲みに来るの、初めてなんです…」と教えてくれる。

初めてマスターにお店をしたいと言われたとき、お店をやるのはいいけれど、立ち飲み? 足痛くなりそうだからいやだなぁ、とこぼしていたのはここだけの話。女性だから、というわけではないけれど、あまり立ち飲み屋になじみないのが、世の大半の女性なのではないでしょうか。

でも蓋を開けてみれば、女性の一人飲みが多い、という一つの気づきがあったので、自分たちなりにその理由を紐解いてみたいと思います。

仮説その1 入口がガラス張り、中の様子が丸見え。

物理的なことですが、まずなにより言えるのは、これでしょう。

タバタバーは長屋の一室をDIYしてつくられた小さな立ち飲み屋です。どんな人がお店をやっているのか、どんな雰囲気の店内なのか、どんなお客さんがいそうなのか。それはもう、丸見えです。

でもそれがかえって、初めての一人飲みチャレンジにまだ不安を覚える人たちの背中を押しているのだと信じたい。

仮説その2 マスターの顔の”見える化”

仮説その1でもあったように、その名の通りの「顔」もそうですが、もうひとつは、SNSの積極的な発信もあげられます。

マスターも、わたしも、二人そろってTwitterが大好きです。暇さえあれば「タバタバー」の単語をエゴサーチしていますし、個人的なできごとの発信も毎日怠らずにやろうと普段から意識をしています。

もちろん、「集客」という側面でやっている節もあるのですが、それ以上に大切だと感じているのはわたしたちの「人柄」を知ってほしいということ。だからかっこつけがちなInstagramやFacebookではなく、あえて個人の脳内がだだもれのTwitterを選択しているのもポイントの一つです。

できれば、自分たちと価値観の合うお客さんに来てほしい。そうすれば我々も居心地よく、楽しく、長くお店を続けていけると思うから。そう考えています。

実際に女性のお客さんの中には「Twitterを見ていて、他にはどんなことをやられている方なのか、話がしたくて勇気をだして来ました」という方もいました。

仮説その3 店側も、常連さんも、初めての人を排除しない

個人的に大きな理由は、もしかしたらこれかもしれません。

女性のお客様が来てくれた時に、特に意識していること。それは「絶対にあなたを受け入れる」という視線を送ることです。

以前真鶴にある真鶴出版という宿に泊まった際、宿主の方が街に古くからある真鶴の交流場の”角打ち”に連れて行ってくれたことがありました。最初は常連さんばかりで不安で照れくさくて何を話したのかはあまり覚えていません。でも強く印象に残っているのは、角打ちのマスターである年配のおばあさまが、私と友人がその場の輪に入れるようになるまで、絶対に目をそらさずに会話をしてくれたことでした。

「わたしはあなたを受け入れる」という強い信念がこもっているような、そんな印象をもったことを、今でも忘れられません。

現に、真鶴は現在都心から多くの方が移り住んでいて、みんなここの角打ち屋に集まって、夜な夜なお酒を飲み、仲間を作っているのだそう。わたしも自分が受け入れる側になってみて初めて、あの時のおばあさんのようになりたい、と強く思ったのです。

さらにもうひとつ。私たちのお店には強い味方がいます。それはすでに常連さんである方々の存在です。

彼らもはじめはみんな、「一人飲み」の初心者でした。だからこそ、初めて入ってきたお客さんの気持ちが痛いほどわかるので、手放しで受け入れてくれます。我々がドリンクを作ったりして忙しいときには、勝手に「どこから来たんですか? この辺に住んでいるんですか?」と会話をしていてくださる。だから初めての方も、疎外感を感じずに済むのではないかと思います。

お店の外装や内装、店主側の心構え、お客さんたちとの一体感、すべてがうまく重なり合っている状態が、今起きている、当初は想像もしていなかった予想外の結果につながっているのだなぁとしみじみ思うのです。

この記事が、タバタバーに入ってみたいけれど、なかなか勇気が出なくて扉を開けられない方に届けばいいな。

ホステルやゲストハウスなどの「地域コミュニティ」を創っている方々に会いに行って、勉強させてもらい、タバタバーに持ち帰ります!