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CIA(公認内部監査人)資格の実務での活用と短期合格のコツ(2024年改正対応)

以前に出した「内部監査部門に配属されたら」の中の「CIA(Certified Internal Auditor、公認内部監査人)の資格を目指す」という章で、CIA試験については別のnoteで触れると記しました。本noteでは、資格がどのような役に立つかと、CIA試験合格のヒントをお伝えします。試験については他の方のnoteでも詳細な合格体験記が色々と出ており、また受験者のバックグラウンドによってどの程度の学習で合格できるかは様々なので、詳細なものではなく、私なりの気づきを中心にさせていただきます。おまけとして、私が受験時にまとめたIT分野のメモスライドを添付しておきます。(2023年11月6日追記、スライドのPPTをダウンロード可能にしました)
(2024年1月22日追記、IPPF改訂の試験に与える影響について記載しました)
(2024年2月3日追記、受験料の値上げについて記載しました)


CIA資格の概要

CIAの資格は国際機関であるThe Institute of Internal Auditors(略称 IIA:内部監査人協会)が認定するもので、IIAの日本代表機関である一般社団法人日本内部監査協会のウェブサイトでは下記のように説明しています。

「CIA (Certified Internal Auditor-公認内部監査人)は、資格認定試験に合格し、実務経験等の要件を満たした者に授与される称号です。CIA資格認定試験は、内部監査人の能力の証明と向上を目的とした世界水準の認定制度で、世界約190の国と地域で実施されています。」
https://www.iiajapan.com/leg/certifications/CIA/
なんだか仰々しいですが、弁護士、公認会計士や税理士のように独占業務があるわけではなく、試験に合格した一定の知識があることの保証という資格だと思えば良いでしょう。CIAの資格がなければ、内部監査の仕事ができないわけではありません。
また、IIAは「内部監査の専門職的実施の国際基準(内部監査基準)」など多くのガイドラインを出していますが、その適用は任意であり、強制力のあるものではありません。

試験は、試験会場を自分で予約して都合の良いときに受験するというスタイルで、パート1からパート3の3科目に合格することで最終合格となります
試験についてのより細かい情報は、USCPAの専門学校として有名なAbitusのウェブサイトに詳しいのでこちらをご参照ください。
https://www.abitus.co.jp/cia/about/
受験にあたって推薦人が必要などの要件がありますが、職場の上司などでも良く、USCPAと比較すれば出願のハードルははるかに低いです。また、試験は全て日本語に訳されており、日本語のみでの受験が可能です。この点もUSCPAより楽ですね。

CIAの資格としての有用性

上でも述べたように、IIAは「内部監査の専門職的実施の国際基準(内部監査基準)」など多くのガイドラインを出していますが、その適用は任意であり、強制力のあるものではありません。CIA試験合格にはIIAのガイドラインを理解して臨む必要がありますが、その知識は法律や会計基準のように、「IIAがこう言っているからこうしなきゃダメです」というものではありません。しかも、全科目の受験には最低13万円程度(2023年10月現在)のお金がかかります。「それではなんの意味もないのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、どういった状況で役に立つのかの私見を述べます。
(2024年2月追記、受験料の値上げがアナウンスされ、2024年7月以降だと合計168,000円かかることになるそうです)。

内部監査部門に転職する際の武器になる

まず、目に見える実利からお話ししましょう。2023年10月現在、J-SOX基準の改定の影響もあってか、内部監査の中途採用はかなり活発に見えます。下記は日本内部監査協会の求人情報ページの中からメルカリ及び三井海洋開の内部監査の募集を抜粋したものですが、必須条件もしくは歓迎条件の資格の筆頭はCIAとなっています。正直、試験はCPA(日米の公認会計士)のほうが圧倒的に難しいと思いますが、内部監査求人においてはCIAと同列以下の扱いとなっていることが伺われます。
https://www.iiajapan.com/leg/info/jobmarket.html
自らの市場価値を高め、いつでも転職可能な人材になるという観点から、CIAには一定の価値があると考えられます。

メルカリ

三井海洋開発

内部監査業務で問題が発生したときの考え方の指針を持つことができる

内部監査の手法はルールも不明確で、様々な問題が発生したときにどのように進めたらよいのか悩むことが多い仕事です。監査で発見した指摘事項に対して被監査部門の理解が得られない、当初計画していた出張が急なコスト削減で実施できない、人を採用しようとしても採用の許可が下りないなど、様々な悩みやトラブルが発生したときに、本来あるべき理想とはどういうものか、という考え方を学べることが、この資格の大きなメリットです。単に自分や内部監査部門としての希望、というだけでなくそれがIIAの考え方と方向性が一致していれば、より自信をもって自説を述べることができるでしょうし、逆に自説がIIAの考え方と一致しなければ、一歩引いて自説を再考するヒントになるでしょう。

内部監査規程を作成する際のベースになる

内部監査部門がある会社なら、通常は内部監査規程を持っていると思います。しかし、遠い昔に内部監査部門を設置したときから規程を見直していないという会社も少なくないでしょう。そもそも、規程に沿って業務が行われているかというのは、内部監査における重要なチェックポイントなのに、当の内部監査部門が実態と乖離した規程を放置するわけにはいきません。内部監査規程を新たに作成もしくは改定する際に、実際に現在行っている業務と整合させると同時に、IIAの内部監査基準を参照し、内部監査の品質向上や監査の独立性の確保などについての条項を織り込むと良いでしょう。CIAの学習はこのプロセスの助けになるはずです。内部監査基準の内容を会社に求めることは必ずしもできませんが、会社の規程に織り込み、会社内部でしかるべき承認プロセスを踏んでいれば、それは会社として守るべきルールとすることができます。
実は私は2社で内部監査規程の見直し業務をリードしたことがあるのですが、当時はまだCIAを取得しておらず、内部監査基準の理解も不十分でした。今ならもっと良い規程が作れたのにと残念に思っています。

内部監査部門全体の能力向上を促してくれる

CIAの試験問題にはケーススタディ形式で、自分が内部監査部門のトップ(IIAではChief Audit Executive, CAEと呼んでいる)や監査従事者であったらどうするべきか、というものも多く出題されます。こうした形式のトレーニングを重ねることは、内部監査部門のチームにおける自らや上司、部下、同僚の役割や思考を理解し、チームとしての力を高めるうえで有用です。
また、IIAは内部監査人に絶えざる学習とスキルの向上を求めています。そうした意識を部門のメンバーが共有していくことは、部門全体の能力の向上に欠かせません。

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