コインハイブ事件のご報告とこれからのこと

ようやく気持ちが落ち着いてきて「これ自分のブログで書いたらいよいよ『モロ 犯罪』とかでGoogleにサジェストされてしまうのでは……?」と気を回せるようになり、そっとnoteに移行させていただきました。
モロ(@moro_is)です。

大変お騒がせしておりましたCoinhiveの件、3月27日に横浜地裁で行われた裁判にて、晴れて「無罪」となりました。
ご助力いただいたたくさんの方々のお力の賜物とひしひし感じております。
改めて、心からありがとうございました。

ここでは、これまでお伝えできていなかったことと、これからのことを簡単にご報告させてください。

無罪の判決について

今回わたしが言い渡された「無罪」の判決はざっくりと以下のようになっています。

- Coinhiveは不正指令電磁的記録(ウイルス)にあたるか
  - ユーザーの意図に反していたか
    - みんなCoinhiveなんて知らないのでNG
  - 不正なプログラムか
    - 広告と似たようなものなのでOK

よって、「Coinhiveはウイルスにあたらない」とした上で、もし仮にウイルスに相当するとしても、

- 実行の用に供する目的があったか
  - Coinhiveは賛否両論ありウイルスと思うはずもないのでOK
  - しかも警察の捜査が強引すぎる
- 故意があったか
  - Coinhiveが犯罪とは思いもよらないのでOK

ので、より「無罪」とのことでした。

「ユーザーの意図に反している」という点が認められてしまった点では不服の残る判決ではありますが、刑事事件の有罪率が99.9%と言われる中、争点の実に75%で無罪を認めていただく異例の判決を賜りました。
ご助力いただいたたくさんの方々のおかげと噛み締めております。

本当にありがとうございました。

伝えられなかったこと

今回、私が裁判を起こしたのは、昨年の6月に公開したブログの通り「他の人に自分と同じ思いをして欲しくないから」でした。

「不正指令電磁的記録に関する罪」はその名の通りコンピュータウイルスに対するもので、反意図性を論じるには順番からして違います。
「ドアをこじ開けたらNG」という決まりごとに自動ドアを含むようなもので、通りがかった誰もがあっという間に無法者です。

「魂が抜かれる」と囁かれた時点で国家権力にカメラ産業が潰されていたら、日本が誇るキヤノンはきっと生まれませんでした。

と、色々考えながら書き連ねてみたもの、どう考えても素人の私よりこの「不正指令電磁的記録に関する罪」の立法にも携わられた高木先生のブログが詳しいのでそちらをご覧ください。

閑話休題。
そうしたこともあり、この裁判はもはや私の意思とは半ば無関係に負けられない裁判だったと思います。

しかし、私の行いは違法でない一方、少なくともモラル・マナーを欠いた、炎上していても文句の言えない浅はかなものでした。

裁判の最中、「反省している」という言葉は故意を匂わせるものでもあり、迂闊にお伝えすることができず随分と謝罪が遅れてしまいました。
見ようによっては不届き者が居直っているようにも見えたかも知れません。
私の行いによって不快な思いをされたすべての方に心から謝罪させてください。

本当に申し訳ありませんでした。

今後はこれまで以上にユーザーの方に寄り添ったデザイナー、開発者として身を粉にして尽くしていく所存でおりますので何卒よろしくお願いいたします。

これからのこと

反意図性が認められてしまったことで将来に一抹の不安は残ったものの、私に限っていえば無罪の判決をいただいた時点でおおよそ十分に報われました。
たくさんの方に労っていただき、分不相応なまでに恵まれていると実感するばかりです。

一方、私以外に少なくとも20名の方が私と同じ目に遭い、そのままになってしまっているという事実もあります。

私自身、たまたま身柄拘束には至らず、たまたまフリーランスとして仕事が続けられて、たまたま優秀な弁護士の方に出会えて、たまたま妻や仕事仲間の支えを得られただけで、どれかひとつでも欠けていれば間違いなく本当の意味での致命傷となっていたでしょう。

そして、そうしたたまたまが重なっただけの私が報われてしまったことに罪悪感を覚えずにはいられません。
現時点で神奈川県警の方からは「コメントすることはありません」と声明が出たのみですが、今後何かしらの形で報われてほしいと強く願っています。

嬉しかったこと

今回の裁判で検察側から「被告のやったことは金銭目的で身勝手かつ、反省の態度は希薄で再犯の恐れがある」とご指摘を受けました。

どう伝えていいものか悩ましいのですが、この言葉はどうやら私に非常によく効きました。
無罪の判決を得た今になっても、夜な夜なこの言葉が呪いのようにリフレインされるほどです。

そしてその言葉を誰より強く否定してくれたのは、意外にも裁判所でした。

「良質なコンテンツを生み出す上で収益は必要不可欠である」
「被告が収益を得ることで結果としてユーザーにも還元され、双方のメリットになりうる」

これは誇張なく、私にとって涙が出るほど嬉しい言葉でした。

当然ですが、Webサイトの制作・運営にはお金がかかります。
お金目的でやっているのかと言われると肯定し難いところではありますが、いわゆる「にわとりたまご」とでもいうのでしょうか。
事前に「一銭にもならないどころか費用だけかかるけどどうする?」と確認を受けられるのなら、産み出すことを躊躇するケースがあるのも事実です。

さらに、Web制作においてもっとも高い比率を占めるのは、何かとないがしろにされやすい「人件費」です。
「嫌なら作るな」と言われてもきっとやめられないだろうな、とも思うものの、こうした部分が正式に認めて貰えたことは私にとって何より喜ばしいことでした。

控訴について

現在「無罪」の判決を言い渡されてちょうど1週間ですが、2週間以内に検察側が「控訴」を選択した場合いわゆる「控訴審」、東京高等裁判所での二回戦がはじまります。

恥ずかしながら現時点ですでに資金は心許ない状況で、もし控訴されてしまった場合は恥を忍んでクラウドファンディング等でご支援をお願いすることになるかと思います。
本当にお恥ずかしい限りなのですが、その際は何卒ご助力のほどよろしくお願いいたします。

最後に

書きはじめてみたものの自分でも驚くほどまとまりません。
繰り返しになりますが、本当にありがとうございました!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

807

モロ

#エンジニア 系記事まとめ

noteに投稿されたエンジニア系の記事のまとめ。コーディングTIPSよりは、考察や意見などを中心に。
7つのマガジンに含まれています

コメント6件

控訴の際は微力ながらご支援させて頂きます。
検察の発言は警察へのブーメランで「警察のやったことは金銭(=ノルマ)目的で身勝手かつ、反省の態度は希薄で再犯の恐れがある」ですね。
今後、coinhive的なものが規制されるのか、されないのか、その点に興味があります。

今回の無罪判決は、法規制が追いついていなかった為に無罪となったのだと、私は考えています。

だからといって、今後も規制しなくて良いのかというと、不正利用の余地があるなら、規制するしかないと思います。

これは、何も消費者保護という面だけのことではありません。設置する側も規制されれば、責任の範囲が明確になり、法律で保護されるのです。

例えば、シンドラーエレベーターの2件の死亡事故では、シンドラージャパンはエレベーターの欠陥による処罰を受けていません。

港区による独自調査でいくつかの欠陥が指摘されましたが、当時の規制対象外であったので、処罰されず、国交省は規制強化に踏み切りました。

実際のところ、シンドラーエレベーターを国外追放にしたのはバッシングと市場原理であり、他の死亡事故と比べても、シンドラーエレベーターは大きな代償を支払いました。
「coinhive」が違法なモノでも、電磁ウィルスでもないことを司法が理解したという判例が出たことに安堵。

「coinhive」のような仕組みは広告モデルに次ぐWeb業界の収益モデルとなる可能性を秘めているので、業界としても喜ばしい結果です。ユーザのマシンパワーを間借りする仕組みは、今後ユーザの許可を得るのが必須か否か?という、個人情報の利用がたどったのと同じ道をたどることでしょう。

ただ、それは「coinhive」のような仕組みそのものが違法なモノと認定されていたら、なかった未来です。だから、そのような議論が進み出したら、歴史を振り返ったときにモロさんの行動が功績として讃えられる日が来るのではないかと想像しています。

まだ完全に安心はできないかもしれませんが、ひとまずはお疲れ様でした。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。