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2023.03.21 ざつツーリング-That's Touring-

ブックオフで『ざつ旅-That's Journey-』というマンガを買った。バナー広告で見たことあるやつで、宿の予約すらせずに当日行き当たりばったりで旅をするという内容。

さすがに宿の予約くらいはしておきたいが、ふわっとしている日程で気になっていたスポットに足を運んでみるというのに共感しながら読んでいた。

富山県にも来てくれていたようで、黒部市で海の幸を食べたり、宇奈月温泉に入ったりしていた。その中で、あの日本名水百選にも選ばれている「黒部川湧水群」にも来ていた。俺も行ったことある!と、ベタなことを思った。雑にフラフラしないと行かないようなスポットなのかな。

そこで登場人物が水を飲んで「味が濃い!」という感想を言ってたのだけ納得いかなかったけど。名水なんてどれを飲んでも同じよ。

このざつ旅に触発されて、14時くらいの昼下がりに原付でツーリングに出かけた。同じく日本名水百選の「穴の谷の霊水」※1 に行ってきた。もともと行きたいとは思っていたが、ざつ旅を読んで「行くなら今しかない」と感じたのだ。

原付で1時間ほどかけて、富山市→舟橋村→立山町→上市町と、市境を超えたツーリング。大通り1本を延々と東に走るコースだったから、分かりやすくて助かった。

特にここ数日は暖かくなって雪が溶けて外出しやすいのに、白く染まった立山連峰がくっきり大きく見えていた。往路は東へ走っていたから、立山連峰を眺めながらの走行にワクワクした。

ただ路肩に停めて写真を撮ってみたものの、カメラではうまく山々の雄大さを捉えきれないのはなぜだろう。もっとでかく見えたはずなのに。

舟橋の短い田舎道 ※2 や、上市の地元住民が集うようなレトロ商業施設(カミールという名前のお店)などいい景色を見ながら走っていた。特に上市の田んぼ道は、平野が広がり遠くに家々を見渡せて、気を抜くと泣いてしまいそうになるほどのエモい道だった。

停車して写真に撮ったし、走りながら感情が昂って「あーっ!」と奇声を発していた ※3。こみ上げてくるものがあったのだ。

車よりもゆっくりとしたスピード・ペースではあったが景色を楽しみながら、そんなこんなで穴の谷の霊水に着いた。

受付で駐車料金を支払うのだが、原付の料金が書いてなかったからとりあえずバイクの料金を支払った。なんだろうか、このぼったくられた感じ。

たしかに形状とかスペースの取り具合はバイクと同じようなもんだけど、排気量とか時速では確実にバイク(普通二輪)に劣るじゃんか。それをバイクと同じだけの金を払うって、なんだろうかこの、割に合わない感じ。まぁバイク駐輪料金もたかだか100円だったからいいんだけど。

受付から5分くらい歩いた所に湧き水があるのだが、その道中には祠が4つ5つくらい横並びになっている。そしてそういうのが点在しているのがなんか不気味なのだ。

地図に表示されない道に祠が沢山あるなんて、なんか村八分とかありそうなんだよ。幸い民家は無かったから村八分なんて起こらないんだけど。

しばらく歩くと谷に下る階段があり、そこには民宿っぽいレトロな建物と、数十個の祠がひしめき合っていた。「霊」水と言うだけあって心霊的にかなり怖かったし、その上受付のコワモテな男性はパーカーのフードを被っており、人間的にも怖かった。

むしろフードのせいで祠の怖さが消し飛んだ。中年がフードを被る方が、個人的には怖かった。月並みだけど、やっぱり人間の方が怖いのである。まぁ話してみたら全然怖くなかったんだけどね。

あと敷地内にラジカセが置いてあって、午後のラジオ番組が流れていた。ラジオが流れる名水スポットというのも初めてで、というか境内にラジオを流す寺社自体も初めてで。怖いし変だし珍スポットなのか?と思った。

湧き水の味はやっぱりどこも一緒で、むしろ直前にアルコールで手指消毒をしたから、そっちの方が気がかりだった。

ありがとうございましたの意味を込めて、お賽銭を入れて、2つほどゴミ拾いをして帰った。


※1 この洞窟にはかつて白蛇が住んでいたとされている。各地から修行僧が集い、難病に効く水と言われている。真偽のほどは不明。

※2 舟橋村は日本で最も小さい市区町村である。村そのものが小さいため、道自体も短くなるのだ。

※3 後述


ざつ旅、本当にいい内容のマンガなのだ。作者の方が実際にその地を訪れて観光したうえでマンガを描いているため、その土地の何気ない光景も逃さず収められている。

田舎特有の、両替機もないマイクロバスに乗って海へ向かうところとか、テレビの旅番組では見られないワンシーンだなぁと思う。

しかし宿の予約もせずに旅に出るそのバイタリティは凄いなぁって思う。宿泊地っていわば拠点となる場所だから、これを最初に設定しておかないと見知らぬ土地を延々とさまよいそうで怖いのだ。

1巻にはゴールデンウィーク真っ只中にざつ旅をする回もあった。さすがにどこも満室だろうと思ったら、最終的には空室のある宿を発見できてた。ざつ旅って勇気さえあれば何月だってできるのかも。

上市町の人気(ひとけ)のない田んぼ道を、奇声を発しながら走っていたのは覚えてる。のどかな風景が愛おしくてたまらなかった。

日記には「感情が昂って」と書いたけど、それ以外にも「人がいなくて開けてるから、大声を出したらストレス発散できるだろうなぁ」とか思ってたんじゃないかな。原付に乗ってるし、エンジン音にかき消されてバレないっしょ、みたいな。

原付がいいんだよ。一般道をスポーツカーで時速100キロ出すよりも、景色を眺めるくらいに余裕のある速度で走る方が、よっぽど人として魅力的だと思う。大人の余裕だよ。