2018年新日ベストバウト

最近めっきりプロレス関係のネタを書いてないので、リハビリの意味も込めてのプロレス記事です。1.4を目前に控えた年末なので気分を高めていきたいですよね。今回は独断と偏見で今年のベストバウトを書いてみようかと思います。あくまで筆者の好みによるものなので、他の人の評価とは少しズレるかもしれませんがあしからず。

・第5位
7月14日「G-1 CLIMAX 28」Aブロック公式戦 棚橋弘至vs鈴木みのる

スタイルも思想も対極に位置する二人なのですが、両者ともに「最前線」でいることに強いこだわりを持っており、そんな両者のぶつかり合いは毎回死闘になるんですよね。その期待に違わず、今回も名勝負でした。

開始前は、負傷を心配される棚橋と、年齢的な衰えを不安視されるみのるという、謂わば旬を過ぎた選手同士の戦いという風に捉えられていたかもしれません。しかしそんなヌルい思考は試合開始から中盤までの、鈴木みのるの関節技蟻地獄で打ち砕かれてしまいました。膝がボロボロの棚橋を見るのは痛々しいのですが、そこに対する慈悲は一切なく、また棚橋の格や立場を尊重して見せ場のターンを与えようという考えもなく、鈴木みのるは棚橋を蹂躙します。単なるヒールモードではない「ついていけないならここで死ね」とでも言わんばかりの攻めで、見てる側は打開策を思いつかないどころか、棚橋の終わりさえ予期したんですよね。この「終わり」というのは単なるレフェリーストップとかではなく、よしんば逆転できたとしても、観客の納得できるような形になっているのかという不安で、プロレス観戦歴が長ければ、推誰もが抱いたことのある不安の一つではないでしょうか?プヲタは優しいもので、多少の無理でも脳内補正と理論武装でどうにかなるものではあるのですが、それを自覚してやるのは心苦しいものなのです。鈴木みのる相手に「勝たせてもらった」試合になってはいけないーーそうした意味でハラハラしながら見ていたのですが、その考えは棚橋の逆回転ドラゴンスクリュー一発で文字通り「逆転」してしまいました。

呻き声をあげて崩れ落ちた鈴木みのるは一流の役者であり、批判されることもありますが鈴木みのるって憎々しい分その「やられっぷり」には定評があるのですよ。回転=受け身というのが刷り込まれているプヲタには戦慄の一撃でした。そこから動けなくなった鈴木みのるにハイフライ投下で勝利と、棚橋の逆転勝利に終わりましたが、逆転勝利につきもののカタルシスとは少し違った、手負いの獅子が牙を剥いたような凄みがありつつ、生き残りを賭けた一戦のようにも感じたんですよね。

あと評価する点としてはこの試合が尺も含めて非常に「ロジカル」であったことで、鈴木の5分に渡る一方的な攻めという風に構成にバランスを欠きながらも、終わってみれば両者ともに攻めの帳尻が合っているという論理性に感服してしまったんですよ。以前の抗争で、棚橋のドラスクを踏ん張って腕ひしぎで返したみのる相手だからこそ選んだ一撃であり、張り手で棚橋をタコ殴りにしたみのるも、以前棚橋の張り手一発でグラつかされたからこその距離潰しという、水面下での読み合いが発生していたんですよね。普段見えない棚橋の怖さを見せた逆転勝利という結末から逆算してもこれ以上は思いつかない素晴らしい一戦でした。13分59秒という短さが嘘のように濃密で、ロングランになりがちな新日名勝負の中では短くまとまった傑作であると思います。

・第4位
7月21日「G-1 CLIMAX 28」Bブロック公式戦 SANADAvsザック・セイバーJr.

ザック・セイバーJr.の今年の躍進は素晴らしかったですね。今だと珍しい関節技主体というスタイルは各方面に賛否両論を巻き起こし、レスリング論争にまで発展したのは記憶に新しい所ですよね。

NJC優勝からオカダの王座挑戦までが一つのインパクトのあるプロモーショだったわけですが、ザックのスタイルが周知され、それへの対応策を編み出していく選手が現れてからがザックにとっての本当の戦いの始まりなのです。

そんな中で最初に彼を完封に追い込んだのはまさかの俊英SANADAでした。元々は武藤敬司の弟子というルーツを持ち、才能にも体格にも恵まれた選手でありながら、あまりにも器用すぎるのが若干のアダとなり、いまいちブレイクしきれない部分があります。そんなクラシカルなスタイルを愛するSANADAとザックが噛み合わないはずがないんですよね。

序盤のねっとりとしたフルネルソンの仕掛けあいの攻防に古臭さはなく、フィジカル・チェスという言葉が頭をよぎります。弓矢固めをフォールで切り返したりと、ネタそのものは古典的ながら、フェイントを交えてフォールを狙い、緩急をつけた試合運びはザックを翻弄していましたよね。構図としてはNJCの逆となった形ではあるのですが、裏打ちされた技術がないと形だけ合わせても上手くはいかないのです。最後のオコーナー・ブリッジもニクいですよね。オコーナーズロールアップに綺麗なブリッジを足したという、オールドファン大歓喜のネーミングセンスも素晴らしいです。丸め込みではなく押さえ込みで、回転速度、ブリッジの美しさ、まさに美技といっても差し支えないです。かつて足4の字を復権させた武藤ですが、SANADAもバックロールクラッチホールドをしっかりと復権させましたね。

派手なムーブや頭から落とす技といった、人体の極限を超えた動きがプロレスなら、こうした人体の理に則った丁寧なレスリングもまたプロレスです。と、いうかプヲタのおじさんは基本的にチョロいので、レスリングの攻防を見せるだけで優しくなってしまうのですよw完全に好みの試合だったの第4位で。

・第3位
1月4日「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」ダブルメインイベントI
IWGP USヘビー級選手権試合 ノーDQマッチ ケニー・オメガvsクリス・ジェリコ

世界戦略を視野に入れた新日が、WWEと同レベルの知名度、クオリティのカードを提供できたという意味だけでも非常に歴史的な価値のある一戦です。G-1の歴史を塗り替えたインターネット世代の申し子であるケニーと、世界を股にかけるレジェンドでありながら新日にもルーツの一端を持つジェリコの第一種接近遭遇は、文字通り世界中のプヲタが熱狂しました。スケール感という意味では、今後10年このカードを超えるのは難しいのではと思ってしまいます。

当然、スケール感だけに収まらず、内容も超がつくほどの名勝負であり、WWEでは手を出しにくいエクストリームな試合でありながら、基本技を丁寧に踏襲したプロレスのお手本のような試合でもあったわけです。それをドーム中に拡散したジェリコの手腕は見事の一語で、人間国宝と言っても差し支えがありません。

最近はケニーや飯伏、オスプレイといった身体能力を基調としたアスリートプロレスの時代ですが、どんな人間離れした派手な動きやデンジャラスムーブよりも、ジェリコの椅子の一撃という単純な動作のほうが、より怖く、恐ろしく、痛そうに感じたんですよね。試合前は47歳のジェリコがケニーに付き合えるのかという不安がありましたが、受けっぷりも攻めっぷりも超一流で、自分は舐めていたんだなと猛省しましたよ。ライオンスパイクにいくかと見せかけてそれを躊躇なく捨て技にするセンスや、ウォールズオブジェリコからライオンテイマーに移行して、ケニーとは違った形でのエグさを見せるなど、これこそがプロレスの真髄だと感服しましたね。語弊を恐れずに言えば9割ジェリコの試合だったように思います。

ただ、これはケニーのアイディアと才覚なくしては成立しない一戦でもありましたし、ある意味では世界中を巻き込んだ究極の世代闘争でもあるのでしょう。ケニー・オメガが一つ上の次元にいくための通過儀礼でもあり、その後の飛躍を考えればこれは大切な一戦でした。それもあって順位に入れないわけにはいかないでしょう。

・第2位
8月12日「G-1 CLIMAX 28」優勝決定戦 棚橋弘至vs飯伏幸太

棚橋の何が恐ろしいかって「プロレスラーである以上トップを目指すのは当然のことで、動けるだけがプロレスじゃない」という、プロレスの不変の原理原則に、狂信的なまでに従っていることなんですよ。その当たり前の結論を何の迷いもなく実践したことに、今回は驚いてしまいました。普通ならキャリアを考えたもっと楽なポジションや、WMのテイカーや中邑のような一歩引いた立ち位置もあったはずなんですよね。周りから言われるようにヒールターンして新機軸を探ってもいいわけですし、ファンの支持も十分にあります。他に面子がいないわけでもなく下は十分に育っているため、別に棚橋が出張る必要も本来はないのです。そんな中だからこそ、初めて一プレイヤーとして挑めた部分もあるとは思うのですが、それでいて現状持てる力の全てを躊躇なく使って第一線に戻ったというのは、はっきり言って常人の域を超えてるんですよ。本来なら神格化されてもいいはずですが、それも拒否して批判の声が出るという、謂わば評価の壇上に立ち続けるという苦難の道を選び取ったわけですから。

挑戦し続けること、というのは言うほど簡単なことではありません。キャリアがあれば甘えが出ますし、怪我があれば言い訳も出ます。年に一度、大舞台でスペシャルシングルマッチをやって名勝負をやるほうが長く戦えますし、道としては楽なのですよ。何故それを選ばなかったのか?エースだからなんですよね。固執してるわけでもなく、あの時そう選んでしまったから。

この試合、棚橋には鬼気迫るものを感じました。結果としては飯伏の完敗であり、そこには飯伏の狂気性すら飲み込んでしまう、棚橋しか出し得ない本物の狂気があったわけです。言うほど綺麗なものではありませんよ。中邑や飯伏に比べて棚橋に才がないのは明白で、秀才でいながらも凡人の領域にいる人間が、一つのことを愚直にやり続けた結果、ようやくたどり着いた狂気の果て。それが僕の棚橋評です。2015年のG1で、棚橋vsAJの試合を見ていた中邑がポツリと漏らした「なんで棚橋さんはあんなに頑張れるんですかね」という言葉が耳に残ります。あれは常人では理解し難い、狂気の産物なのですよ。

エースにこだわるというエゴイストっぷりとは対極に、棚橋自身のプロレスに対するスタンスは「滅私」の一語に尽きます。森博嗣の小説に「人は普通両極の概念の狭間にあって、自分の居場所は一つだと信じ、中庸を求めて妥協する。だけど、彼ら天才はそれを必要としない。両極に同時に存在することが可能だからです」という言葉があるのですが、そういう意味では100年に1人の逸材というのもあながち嘘ではないかもしれませんね。

・第1位
9月23日 神戸ワールド記念ホール
東京ドーム・IWGPヘビー級王座挑戦権利証争奪戦」
棚橋弘至vsオカダ・カズチカ

試合をワールドで見返すことはよくあるのですが、この試合ほど見返した試合は2018年にはありませんでした。僕の好きなプロレスの試合はこういう試合なんですよね。

詳しくは以前noteに書いた内容を見返してもらうとして、所謂上手い試合というのは、選手同士の攻防の切り替えが驚くほどシームレスで、序盤からすでに面白いのです。単なる技の応酬に終わらず、試合の流れそのものが結末に向けて一続きのストーリーになっているんですよね。オカダが足殺しを先に仕掛けたり、棚橋がレインメーカーを徹底的にマークしていたりと、間違いなくそこには観客を含めた選手同士の読み合いと駆け引き、そして戦いがあるのです。試合前の下馬評、設定された試合の表向きのテーマと裏テーマ、不安視される怪我の部分、それに対する観客のリアルタイムの反応、両者の試合に挑むにあたってのスタンス、試合における位置付け、試合の流れによる攻防の結果、それらを綺麗に練りこみながら、綺麗にまとめてフィニッシャーに繋げていく。解釈や読み解きの楽しみのある一戦でありながら、尺や構成のバランス、試合後のドタバタも含めて、個人的にはこれを超える試合は2018年にはありませんでした。なので2018年一番の個人的ベストバウトはこの一戦です。

いかがでしたでしょうか?振り返ってみれば棚橋ばかりで自分でも驚きです。そう考えるとプロレス大賞MVPも納得というか、2018年で一番心を動かされたのは棚橋で、見る目が変わったのもまた棚橋なんですよ。それではまた1.4を楽しみに、どうか年末をお過ごしください。今年もありがとうございました。

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もるがな

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