2019年3.6旗揚げ記念日 試合雑感

旗揚げ記念日の興奮が冷めやらないまま、気がついたら筆をとっておりました。僕は他のブロガーの人のようなマメさや知識もなく、生来の不精もあって本当に気が向いた時にしか書かないのですが、今回の大会はTwitterでは書ききれない部分があったのでこうして筆を取りました。暇潰しがてら読んで頂ければ幸いです。

第5試合 IWGP Jr.ヘビー級選手権試合
石森太二vs獣神サンダー・ライガー

今でこそちょっと助平でキレやすい好々爺という謎のポジションを独占しているライガーではあるのですが、こうして相対するとやはり特別感がありますよね。動きこそ全盛期と比べれば衰えてはいるのですが、膂力は変わっておらず、また晩年に会得した柔術紫帯というのもあって、実にベテランらしい風格があります。小僧、というのはまさにその通りで、ライガーと相対すれば誰でも小僧扱いですよ。また、ほぼ因縁が0の状態でも、マイク一つで5秒で因縁をつけられるライガーは素晴らしいですね。今でこそ、こうした物騒なやり取りはなりを潜めましたが、この「喧嘩の売り方」は見事なもので、誰か継承して欲しいものです。

試合は観客の見たいであろうライガーを存分に堪能できました。プロレスに落とし込んだ柔術に、ロメロスペシャル、場外での垂直落下式ブレーンバスター、雪崩式フランケン、フィッシャーマンバスター、隠し技のフライングボディシザースドロップ……まさにライガーの歴史の詰まった一戦です。ただ、辛口で言うなら試合内容は戦前の予想を超えるものではなく、順当に戦い、順当に負けた印象です。試合翌日、来年での引退表明をしましたが、飽くなき好奇心と向上心を持つライガーだからこそ、動けて褒められる程度ではダメなのでしょうね。年齢を考えれば淀みなく動けるだけでも凄いのですけどね。裏を返せば、ここがピークで輝けるうちに引退の花道を飾りたいのかもしれません。今でこそフラットな感情でこの文章を書いていますが、最終章の「終わり」を目撃した瞬間は恐らく涙してしまうでしょう。それほど、ライガーは僕たちにとっては特別な象徴かつJr.のアイコンであるのです。今の新日で最も新日らしく、燃える闘魂を一番受け継いでいるのって、ライガーだと思いますよ。

第6試合 旗揚げ記念日スペシャル6人タッグマッチ
棚橋&オカダ&後藤vs内藤&EVIL&SANADA

まず驚いたのは、棚橋、オカダ、後藤、内藤という面子に混じってEVIL、SANADAがいたことで、彼らと比較しても一切見劣りしていなかったことです。長い間冷遇に近い扱いを受けていたIWGPタッグが息を吹き返したのは間違いなく彼らの功績であり、またタッグを組みつつ両者ともにシングルの実績を狙っていくという貪欲な姿勢が昔のIWGPタッグっぽくでいいんですよね。

この組み合わせ、一見すると誰が取るのかが非常に気になる点だったのですが、後藤がSANADAを後藤式で押さえ込んで勝ちをもぎ取りました。SANADAのオコーナーブリッジと並ぶ今の新日でも1、2のフォール率を誇る技で、またSANADAへの対抗意識があるのもよかったです。試合後のしてやったりの表情を浮かべていた後藤は漢らしく、格好良かったですよね。ああ見えて意外と器用な一面もあり、打撃の当たりもレスリングも強いため、そういう意味ではSANADAにとっては難敵かもしれません。ここで後藤が取ったのはフラグにも思えるのですが、今の後藤って漢らしさもありますし、長い雌伏の時を強いられてきましたが、意外とそろそろ機は熟してきたのではないか?と思う今日この頃です。

第7試合 旗揚げ記念日スペシャルシングルマッチ
ウィル・オスプレイvsジェイ・ホワイト

今までのジェイ・ホワイトの試合の中では一番のベストバウトじゃないですかね。やや二番煎じ感が漂いますが、レインメーカー・ショックに次ぐスイッチブレード・ショックとも言われた衝撃の王座交代劇。そしてMSGのメインに抜擢という、現状の格を超える大幅なプッシュに若干不安の声もありましたが、この試合を見て新日がジェイが選んだ理由がよく分かりました。彼は決してケニーの後釜などではなく、急成長した「怪物」です。そのポテンシャル、恵まれたレスリングセンスなどはヤングライオンの頃から理解していたのですが、改めてその才能の一端を垣間見て恐れを抱いてしまいました。才能が「怖い」と思ったのは近年ではジェイが初めてかもしれません。

キャリアわずか6年ながら、その立ち振る舞いはすでに王者然とした風格を備えており、正直な話、初防衛戦とは思えなかったんですよ。対するオスプレイもヘビー転向で重さを増し、また生来のヒーロー気質から因縁は無いながらも、旗揚げ戦らしいプレミアム感を残しつつ、勧善懲悪の綺麗な構図になっていましたね。2年連続で旗揚げ戦のメインを任されていることから、こちらもレスラーとしての高評価されているのが分かります。

ただ、この試合に限って言うならばジェイの完勝でした。ダーティーなヒールチャンプとそれに抗うベビーという構図上、オスプレイのほうがやや不利ではあるのですが、それを加味してもどちらが王者然としていたかと言われればそれは歴然です。オスプレイがダメだった、というわけではなく、スタイルで比較した場合喰われるリスクのあったジェイが試合運びで圧倒したという事実が凄いんですよ。負けはしたものの、これはオスプレイにとってはかなりの刺激になるでしょうね。オカダだけではなく、オスプレイとのライバル関係もスタートしたと見て間違い無いと思います。

かつてベイダーが「体操やダンスの動き」としてオスプレイのスタイルに否定的な見解を述べましたが、皮肉にもそれを証明するかのように、試合開始からジェイはすぐさま間を外し、オスプレイのネックスプリングに対して小バカにするように頭を叩きます。所謂「魅せ」の部分を序盤で徹底的に封じて格上感を強調してきたわけですね。しかしオスプレイも負けてはおらず、これが彼の天才たる所以なのですが、潰されたと見るやいなや、立体的な動きからすぐさま直線的なロープワークの攻防に切り替えて、単純かつ強烈なショルダータックルのみで一点突破を狙ってきた点ですね。次にプランチャというリカバリーの効きやすい技を繰り出すことで、前述の攻防にリアリティを持たせながら、後半の空中戦への下準備をした判断力がは素晴らしいと思います。一流のレスラーはシンプルな技でも映えるものです。

場外戦へと舞台は移り変わり、エプロンでの後転というさりげない絶技を見せてジェイを狙うオスプレイに対し、すぐさまセコンドの外道が介入します。このタイミングは抜群に上手く、この試合がジェイだけでなく外道の支配下でもあるということを端的に現しています。ジェイ&外道の恐ろしい所って、インサイドワーク特化型のヒールチャンプとそのマネージャーという点ですね。短所を埋めるのではなく、互いの長所を重ね合わせることでリング全体へと視野を広げる。タイプが似ているからこそ綻びがなく、またタイミングも合わせやすい。マネージャーというよりはサブユニット、親機に対する子機のようなもので、相手は文字通りの2対1と、孤立無援を味わうわけです。そして締めくくりとして、サイドに捻る形のブレーンバスターでオスプレイの腰を鉄柱に強打させます。

ジェイは前回の棚橋戦ではウィークポイントの足を狙いましたが、今回は機動力と投げを封じるために腹部攻めを見せましたね。このスタイルの幅の広さは驚嘆しました。ストマック・ブロックから、さらに高度のあるバンプハンドル式のストマック・ブロックという風に自己流にアレンジしつつ、リズム良く攻めてオスプレイを悶絶させます。腕を捻り上げての腹部へのエルボー。コーナーでの一撃、さらにショルダーでの一撃と、段階的に攻めることによる視覚的な分かりやすさもあります。グラウンドのベアハッグといい、アレンジしながらも古典的な技への目配せも忘れません。ここでバックエルボーで脱出を図るオスプレイでしたが、これは誘い水でしょう。そのまま潜り込み、シームレスに得意とする高速バックドロップへと繋げます。ジェイはケニーやオスプレイに比べるとキャッチーさは無いのですが、非常に優れている点がひとつありまして。相手の攻め手を徐々に削いで、選択肢を削って反撃の芽を限定していくスタイルこそがジェイの真骨頂なんですよね。それはまぎれもない「強さ」であり、また王座戦に必要な「勝負論」でもあります。非常に緻密かつロジカルでもあり、さらに執拗な腰攻めがこの後の鉄柵とエプロンを利用した場外での腰攻めの往復という得意ムーブに繋がっており、この一点集中はまさにトラディショナルなレスリングのそれですね。

オスプレイも重みを増したエルボーで活路を見出しますが、ハンドスプリングをすぐさまエルボーで潰されます。スワンダイブも足を救われ、オスプレイに期待されている華麗な飛び技は完全に封殺されました。この翼をもぐような陰湿さ……溜まりつつある観客のフラストレーションを解消したのは、変則のフランケンからのサスケスペシャルです。この辺りの解放感とカタルシスは大きく、暗いトーンの試合が一気に華やかさを取り戻します。スワンダイブ式のフォアアーム、打撃で刻んでの再びのハンドスプリング式のレッグラリアット、その場跳びのカンクーントルネード。泥沼から飛び立つ白鳥のような美しさがありました。小技で刻むジェイに対して大技による一発逆転を狙うオスプレイという対比も見事ですね。

さらに一気呵成にトペスイシーダを見せたオスプレイに対して、勢いを殺さず体を入れ替えて背中を鉄柵に叩きつけました。ジェイの素晴らしい所はもう一つあって、選択肢を削いだ中、相手が決死の思いで繰り出した打開策を予測し、自分のムーブで上書きしてしまうことです。これで相手の印象をかき消してしまうわけで、それがまた彼へのヒートに繋がっているのです。この技はブレードランナーの派生でしょうかね?似たような切り返しはWWEのワイアットvsブライアン戦でも見ましたが、ジェイのアイディアと才覚も中々のものです。

ストームブレイカーをブレードランナーで切り替えすシーンは戦前の期待にありましたが、入り方は意外でしたね。この体勢で悲鳴が上がるあたり、かなり定着してきた感じがあります。オスプレイもカウンターのサマーソルトキックからラリアットに繋げますが、それをピンポイントで捉えたコンプリートショット、さらにぶっこ抜きジャーマンの追撃で反撃の狼煙が潰えます。ギリギリの所で流れを渡さずに優位性を確保するジェイの奥深さはゾッとしますね。この攻防も、オスプレイの速度に十分対応できており、スパニッシュフライも綺麗に回転して受けていました。身体能力こそ見せびらかさないものの、ポテンシャルはやはり相当のものがあります。

一瞬一瞬は光るものの、ペースを中々掴めないオスプレイは雪崩式のアイコノクラズムでジェイをマットへと叩き落しました。反撃が単発で終わるなら、その一撃は目を見張る大技であるべきですし、ジェイが異才ならオスプレイは天才です。そしてオスカッターに繋げようとした瞬間、ジェイが三味線を引いてへたり込みます。観客の大ブーイング。ストームブレイカーも嫌がります。「技は受けるもの」という認識の根強い今の風潮に対して、対話拒否に等しい受けの拒絶を視覚化して観客のヒートを煽っていきます。薄笑いから察するに計算のうちでしょう。しかしその顔はすかさずオスプレイの顔面への往復キックで苦痛へと変わります。観客の怒りを体現するあたり、彼はやはりヒーロー気質ですよね。不快感を塗り潰すロビンソンスペシャルの爽快感も最高でした。技もそうですが、怒りという正統派の感情をむき出しにしたのが良かったですね。

再度のオスカッターはシャープセンセーションで切り返され、倍返しに近い数のエルボーの雨あられを降らせます。次はジェイが決め技であるブレードランナーを狙いますが、ここはリバースフランケンで返され、不意打ちでのヒドゥンブレード !余談ですが、この技が一部で批判されたのって、そのエグさもありますが、死角からの一撃というのがあったのではないでしょうか。死角がダメなら今回は不意打ちです(笑)それはともかくとして、オスプレイはエルボーパッドを外しての「処刑」モードのヒドゥンブレードを狙いますが、ここで再び外道の介入。ジェイのローブロー!そこからのスナップスリーパースープレックス。オスプレイの見せた危険技への帳尻合わせも見事ですね。クロスアームの垂直落下式ブレーンバスターというオリジナル要素の強い技をさりげなく見せるのも憎いですよね。

そしてジェイがブレードランナーを狙ったことで試合はさらにエスカレーションしていきます。万事休すかと思いきや、一回転着地からのオスプレイのライガーボム。続くさらなる大技、エアー・アサシンは手を上げようとしていたジェイの不穏さも手伝ってやや時間がかかりましたが、この間の息を呑むかのような緊張感はいいですね。被弾からのフォールで決着……!と思いきや、まさかのロープブレイク。あの手を上げていたのは距離感を測っていたのです。この古典的な逃げ切り方はマニア泣かせですね。そこからフィニッシュへの切り返し合戦はオスプレイに軍配が上がります。ダメ押しのオスカッターはなんとブレードランナーに切り返されますが、あまりにも早すぎて観客に伝わりにくかった点はこの試合における唯一の瑕疵ですね。相手の予想を上回る切り返しでも、観客にはわかるようにしなくてはいけない。プロレスの難しいところです。そして観客の戸惑いの中、正調ブレードランナーによるフィニッシュ。リプレイで観客は追って認識するわけですが、逆説的にジェイの才能に観客すら追いついていないという風にも受け取れるので、ミスとまでは言い切れないでしょう。

トペを切り返した時もそうなのですが、ジェイはコンプリートショットも含めてブレードランナーの体勢から繰り出す技を下位に置くと同時に、使う場面を切り返しに限定して集約することで、自分から仕掛けるフィニッシャーとの差別化を明確にしつつ、ブレードランナーの絶対性と不意打ち性を維持しています。大抵のレスラーはフィニッシャーの派生技を正調のフィニッシャーに段階的に繋げることで、擬似的に大技連発によるカタルシスを狙っているわけですが、ジェイの方法論はその真逆で、押し切るのではなく掠め取りなんですよね。

リングに雪崩れ込んできた飯伏を始め、棚橋、オカダ、後藤の面々がリングを占拠します。NJC優勝経験者という豪華さもありますが、MSGを控えたジェイの前に並ぶことで、間接的にジェイの格上げにも繋がっていますね。超新星とは中邑のデビュー時の異名なのですが、それはジェイにも当てはまります。突如現れた怪物。才能と設定した格に観客の反応が追いついておらず、そういう意味ではMSGにジェイというのは少し不安だったのですが、この試合を見て考えを改めました。ジェイで問題ないどころか、NJCの優勝者が挑むに相応しい相手です。新顔という目新しさもありますし、ジェイの防衛ロードとしても、次のMSGが天王山になるでしょう。

ジェイの才能やポテンシャルは存分に分かっていたつもりでしたが、ここまで感嘆するとは自分でも驚きです。当初こそ持ち前のレスリングセンスと危険技による派手さの狭間で揺れ動いていた感じがあったのですが、歯車が噛み合った瞬間に一気に化けましたね。レスラーの評価は常にリアルタイム準拠とは言え、やはりまだまだ修行が足りません。少しでもジェイ・ホワイトの良さが伝わればいいなと思いつつ、今日は筆を置きます。

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もるがな

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