9.23 DESTRUCTION in KOBE 神戸ワールド記念ホール試合雑感

リアタイ視聴したものの、果たしてどうまとめていいか分からずに時間が少し過ぎてしまいました。DESTRUCTIONの名に恥じない、非常に荒れた混沌した興行でしたね。ではいつも通り、試合雑感を語っていきたいと思います。

・IWGP Jr.ヘビー級王座決定トーナメント1回戦 KUSHIDA vs BUSHI

何度もやり合っただけあって、両者ともに驚くほど手が合います。KUSHIDAのバックボーンは高田道場とTAJIRI直伝のサイコロジーなのですが、関節技主体のスタイルを上手くJr.のフォーマットに乗せてますよね。KUSHIDAのスタイルに賛否両論あるものの、この序盤の攻防は実にクラシカルで素晴らしいものでした。対するBUSHIはエプロンでのバッククラッカーから場外で鉄柵に叩きつけ首と背中を支点に攻めます。空間を大きく取った攻防から、リングに戻ってからのそれらを収束させた緻密なサブミッションと、緩急と広がりを重視していますね。余談ですが、BUSHIの首4の字やSTFは綺麗ですね。元々脚が長く、スタイルが美しいというのもあって、これらの絞め技はよく映えます。これがファンの言う彼の「色気」なんでしょうね。

圧巻なのは試合中盤に見せた場外トペを脇固めで捉えたKUSHIDAのセンスで、反則ではあるのですが両者のスタイルの違いを明確に分けた素晴らしいチョイスでした。この階級にしかできない味のある攻防です。またKUSHIDAのハンドスプリングを切り返してBUSHIの出したカナディアンデストロイヤーも見事でした。ファンタスティカマニアでお披露目したという理由もあってヒロムの印象が強い技なのですが、BUSHIにとっても大一番で繰り出す隠し技の一つなのです。ただ、ヒロムの欠場という背景もあり、互いに同じ得意とする技をここであえて繰り出すことにより、そうした想いを背負った一撃という符号性が生まれたのはいいですよね。

試合終盤、KUSHIDAのアームロックを切り返しての毒霧、そこからのブシロールはBUSHIの鉄板ムーブですね。毒霧は単なる反則ムーブというわけではなく、これが出ることによって試合の「終わり」の訪れを観客に意識させることができ、また大物食いという可能性も生まれます。そこからのブシロールは相手の足首に足を乗せるこだわりがニクいですよね。押さえ込みましたが、これは返されます。すかさず走り込んでのMXを狙ったBUSHIですが、これはKUSHIDAのパワーでガッチリとキャッチされ、そこからのバックトゥザフューチャー、さらにダメ押しのもう一発でBUSHIは轟沈。KUSHIDAの勝利でした。パターンとしては昨年の2017年6月27日後楽園ホールでのIWGP Jr.戦、KUSHIDA vs BUSHIと同じなのですが、組んでしまえば視界が塞がれていても関係はないというのは実にロジカルですよね。好試合でした。

BUSHIも奮闘はしていたのですが、やはりこの両者、だいぶ差が開いてきてはいますよね。2017年5月22日のBOSJの公式戦でもBUSHIは同じ技で敗北していて、対KUSHIDAは彼にとっての一つの鬼門になりつつあります。

個人的にその要因の一つはBUSHIの必殺技にあると思っていて、KUSHIDAが組み技を取得した関係もあり、だいぶ読まれてきているんですよね。加えて他の選手の必殺技ほどの一撃性も無く、一応トップロープからのMXが最上級のフィニッシュホールドなのですが、やはりインパクトの薄さは否めません。ただ裏を返せば、新しいフィニッシュホールドさえあれば彼はもう一化け二化けする可能性があり、そういう意味ではかなり今後に期待できます。KUSHIDAは好きなのですが、この試合、実は応援していたのはBUSHIのほうでした。デスペラードもそうなのですが、No.2ポジションの選手がエースに食らいつく姿が好きなんですよね。

・東京ドームIWGPヘビー級王者挑戦権利証戦、棚橋弘至vsオカダ・カズチカ

今大会のベストバウトであり、G-1決勝戦と並んで年間ベストバウト候補でもあります。冒頭の煽りVのゲームのラスボス戦のような音楽もあって、盛り上がりはハンパなかったですね。G-1を経ての棚橋の復活ロードは非常に過酷ながら、その「後のなさ」が一つのキーワードとなっています。名勝負を繰り広げながらも、優勝後も忖度という誹りがあり、棚橋の体調を不安視する声は途切れず、対観客に加えて己との戦いにもなっているんですよね。またこのキャリアの選手にしか出せない、命を燃やし尽くすような生き様こそが今の棚橋の魅力であり、またそれは自身もしっかり認識しているのでしょう。そうした声に苛立ちを感じながらも、自分が目立つための糧として喰ってやろうという野心すら感じます。

立ち上がりこそは非常に静かでありながら、実にオールドスクールなレスリングになっており、棚橋の理想とするプロレスの展開になっています。ハイスパートでもなければ垂直落下の大技合戦でも無く、起承転結という基本理念に沿ったプロレス。その相手としてのオカダはベストな選択ですよね。オカダ自身、誰もが認める新日の新たな柱ではあるのですが、その商品価値は勝負論に大きく影響しており、権利証奪取の最有力候補でもあります。この、いきなり最大の敵を相手に選ぶという選択肢は少年漫画的でゾクゾクするものを感じますよね。

まるで自身の膝に対する不安感を消そうとするかのように、棚橋はドロップキックに始まり、それ以外でも試合中盤では青天井エルボーやサンセットフリップのような、昔使っていた技の引き出しを開けてきています。これは彼なりの動けるという意思表示の一つであり、意地なのでしょう。

棚橋はいつも通り足殺しを狙いますが、ここで単なるターン制バトルのようなキャッチボールに終わらず、場外プランチャで膝を痛めてから、足殺しのターンがオカダに移るのが面白いですよね。これがプロレスにおいての起承転結であり、面白い試合は序盤から見所があるのです。この流れは実にシームレスであり、膝へのショットガンドロップキックというどよめきの一発を繰り出したオカダも見事ですね。狙うからといって同じ箇所を狙われないとは限らない。そこからマットに膝を叩きつけ、膝を踏みつけたあたりでオカダのヒールモードにスイッチが入ります。ブーイングが飛びますが、これは織り込み済みでしょう。その後の棚橋の三角飛びボディアタックをサラリとかわして見せるのも憎らしいですよね。受けるだけでなく、単にかわすだけの姿すら絵になる。彼もまた、自身のこの試合における役割を熟知しているのです。

その後にオカダは珍しく、足4の字式の変形膝固めで棚橋を苦悶させます。この技はオカダの隠し技の一つで、2013年のオカダvs鈴木みのるで、みのるのゴッチ式を切り返したのが記憶に新しいですよね。他にも昨年の2017年7月30日のvsジュース戦の試合中盤(14分過ぎあたり)でも、プリンスズスロウンを膝固めで切り返すという離れ業を見せており、こうしたさりげない得意技というのはファンとして心惹かれるものがあります。その後の棚橋の打撃に微動だにせず「来てみろこの野郎!」「どうしたG-1チャンピオン!」と叫ぶ姿はいいですよね。キャラチェンジしたからこそ堂々と感情をさらけ出せるようになったわけですが、こうした生来の負けん気の強さが見たかったというファンも多いのではないでしょうか。

オカダのコーナーへのドロップキックを踏み止まった棚橋ですが、足が引っかかり、そしてさらにナックルを落とされて足を徹底的に攻められます。セコンドが引っかかった足を直して助けに入るという構図は個人的にはかなり微妙に感じますが、その構図自体が棚橋の足は大丈夫かという観客をやきもきさせ、焦りに繋がっているため、シーンとしては合格点です。

ここでオカダが足殺しとしてチョイスしたのは足4の字固めであり、これには唸らされてしまいました。誰もが知ってる技でありながら、古典技かつ基本技でもあるため、オカダが唐突に出してもその違和感は全くありません。プロレス技は数あれど、誰でもできて誰がやっても違和感のない技って足4の字ぐらいしかないんですよ。それが足4の字固めの凄いところで、技そのものが一つの攻防として成立しているんですよね。オカダ自身、足が長いため足4の字固めでよくある張り合いに持ち込むことができず、一方的な絵を見せることができます。

ここで棚橋が選んだ反撃は、かつてIWGP陥落の一つのきっかけとなった場外での掟破りのツームストン、さらに場外ハイフライフローというスイサイドなムーブです。両方とも自身の足に全体重がかかる技でありながら、あえてそれを選ぶあたり、足一本くれてでもオカダを倒すという気概がありますよね。この悲壮感すら自分の糧にしてしまうあたり、棚橋の恐ろしさの片鱗を感じます。

走れるのか?という不安からのスリングブレイド。それを切り返しレインメーカーに持ち込むオカダを、ドンピシャのタイミングで捉えてツイスト&シャウト。この仕掛けの早さには脱帽しました。そしてダメ押しのスリングブレイドのキレも素晴らしいです。ここからハイフライに繋ぐまでの「高揚感」が棚橋の一番の持ち味なのですが、このハイフライは膝で迎撃されてしまいます。

ツームストンの仕掛けあいからエルボーの撃ち合い、泥仕合の様相を呈し始めた瞬間、オカダの不意のショットガンドロップキックが棚橋の膝を捉えます。ロープに振られても走れずに崩れ落ちる棚橋に対し、オカダはさらにニークラッシャーを出しますが、これをローリングクラッチというこれまたオールドスクールな技で切り返す棚橋。しかしこれは誘い水で、グラウンドのドラゴンスクリューでオカダを悶絶させます。互いの足殺しが、そのまま最後に立ち上がっていたほうの勝利という構図に繋がっているのがいいんですよね。プロレスの名勝負はシーンそのものに物語性が付随しているのです。

勝機と見た棚橋の顔面をピンポイントで捉えるオカダのドロップキック、そこからのレインメーカーはフルネルソンに切り返されますが、さらに久しぶりのヘビーレインをオカダは繰り出します。しかしそれは固定式のスリングブレイドで返される……。この辺りの攻防は濃密で文字起こしが追いつかないです。

さらに追撃のスリングブレイドは、オカダがケブラドーラコンヒーロの要領でツームストンの体勢に持ち込みます。こうしたあたりにオカダのルチャの血を感じますね。しかしオカダも足を痛めているため踏ん張りがきかず、棚橋も同様で、互いに切り返しはしたものの技を仕掛けることができません。容易に決まらないことの理由付けが互いの執拗な足殺しによってなされており、またそうすることによって、この試合におけるツームストンの技の価値が上げられているのですよね。これが過激な技のインフレ、ケニーのプロレスに対するイデオロギーの一つの答えでもあり、プロレスの真髄でもあります。

オカダのローリング式レインメーカーは弱点をつかれてドラゴン式張り手で返されてしまいます。これ、るろ剣で言うところの龍巻閃みたいなもので、レインメーカーの虚をつく側面をさらに高めたカウンター技であり、自身から仕掛けると技の効果が半減しちゃうんですよね。裏膝へのドロップキックでペースを握ろうとするものの、レインメーカーはスリングブレイドで返されてしまいます。棚橋は今までの経験もあり、レインメーカーを徹底的にマークしていますね。その後のハイフライは命中したものの、膝の痛みでフォールに入るのが遅れて返されてしまいます。これがまた観客の不安を逆撫でするのですよ。二発目のハイフライフローは足を痛めてるのもあり、トップロープを飛ばずにサードロープから入りましたね。そしてそれは下からのドロップキックで迎撃されてしまいます。このギリギリで逃げ切ってペースを握らせないオカダのスタイルは王様陥落後も変わりません。

そして満を持してのツームストンが決まったことで、試合はクライマックスに雪崩れ込みます。レインメーカー、掟破りのレインメーカー、再びのレインメーカー、スリングブレイド、と切り返し合戦の最中、三度のレインメーカー、ここで虚をつくローリング式レインメーカーが決まりました。先ほどは決まらなかった技なのですが、レインメーカーは間合いとタイミングが命の技であり、ローリング式はやはりこの間合いでのカウンター技というのが正確な見方なのかもしれません。

そして正調レインメーカーに繋げますが、ここはなんと棚橋がドラゴンスープレックスで切り返します。かなりの高角度で、膝の痛みもありながらしっかりとブリッジして決まったそれは、これで終わってもおかしくないほどの一撃でした。ハイフライフローよりも長く使った、棚橋のフィニッシュホールドですものね。這いずるようにリング外へと進む棚橋には鬼気迫るものを感じました。

しかしオカダもすかさずコーナーへのドロップキックで追撃します。ここでオカダの選んだ雪崩式のツームストンはオカダのスタイルを考えると意外で、ここは非常に解釈の分かれる部分でもあります。オカダは雪崩式の技を所持していないため攻防上そうなった、とも言えるのですが、ここだけがやけに浮いて見えるんですよね。それは危険技を嫌う棚橋への挑発なのか、その選択を勝つためにこだわりなく実行できるというオカダの豪胆さなのか。本当のところはわかりません。しかしトップロープでの攻防が最後のシーンというのは、同じトップを目指す選手二人という二人の生き様にも噛み合っており、落ちたほうが負けという視覚的な分かりやすさもあります。最後まで降りなかったのは棚橋のほうなんですよね。背中への一撃で汗のしぶきが飛んだあたりに棚橋の執念を感じます。

オカダを張り手でトップロープから落としながら、落ちるオカダに対してのハイフライフロー……自由落下式のサンドイッチ・ハイフライフローとでもいうべき大技が、対オカダへの棚橋の隠し球の一つでした。危険技ではなく、しかし空中で被弾しながらマットと挟まれ受け身が取りにくいという、見るものには伝わる棚橋ならではの危険技。喰らった直後の崩れ落ちるオカダの表情も見事なものです。そこからたっぷり間を取ってのハイフライフローで棚橋の辛勝。突き上げられた拳には感極まってしまいました。苦悩を突き抜けて歓喜に至る、という言葉がありましたが、素晴らしい名勝負でしたね。


・試合後の波乱について

ジェイ・ホワイトの乱入に関しては大方の予想通りではあったのですが、やはり現状の選手の中でヒール色が最も強いだけに、シーンとしてはかなり映えますよね。彼はオカダ、棚橋の双方に勝利しており、またケニーに対しても勝っているため、この物語に関わる人間全てに勝利しているというのは大きいです。権利証移動の勝負論としては格の問題もあってやや薄いのですが、巧みなインサイドワークとデンジャラスな危険技の融合に成功しており、そういう意味ではオカダとは違った意味で非常に危険な相手でもあります。

その後のYOSHI-HASHIの転倒、流血に関しては……持っているのか持ってないのか、トラブルとはいえなんとも言えない残念さがありましたね。まあこれは怒られても仕方ないというか、個人のミスではなく、周囲を巻き込んだミスというのは批判を免れないでしょう。

ただ、新日本プロレスワールドでの中継で転倒シーンをカットしたのは頂けないです。過去にも問題があって動画を修正したことはあったのですが、今回のは修正するほどでもない、というのが個人的な感想であり、また修正されたことにより、あれが完全な失敗だということを公式が認めたことのほうが問題です。失敗には違いないのですが、そうしたポカや失敗があっても飲み込んで続いていくのがプロレスであり、そうした長い歴史の一場面の中で、彼の行為が「必要ない」とされたのはあまりにも酷なように感じます。WWEのタイタス・オニールが転倒しましたが、あちらがリプレイを繰り返して笑い者にされ、自身も入場時に床を拭くというネタとして消化したことと比べれば今回の新日の対応は雲泥の差があります。資本力だけではなく、WWEに勝てないのはそうした団体としての「器」の部分であり、見習えとは言わないまでも、珍プレーのように消費されたり語り継がれる余地すら奪ったことで、ある種の禊ができなくなったのはかなり苦しいものがあると言えるでしょう。ネット社会には「消せば増える」という法則があり、消したことそのものが意味を持ってしまうこともあります。

今のプロレスファンの風潮として、良くも悪くもプロレスをプロレスとして受け取る寛容さがある反面、逆にトラブルや技の失敗に対しては妙に厳しいようにも感じます。事前に練り込まれたハードな攻防と危険技の応酬こそがいい試合という価値観が多く、それ以外のガチな部分(あえてこの言葉を使いますが)に対してはわりとマジレスが多いんですよね。普通に考えれば全力で戦う真剣勝負である以上、技を失敗するという行為にはかなりのリアルさがあるのですが、それ自体に苛立ちを感じてしまう人のほうがもしかすれば多いのかもしれません。例えば棚橋の膝の痛みにしたって、それがフェイクではないにしろ、ある程度盛り上げる手段として毒を飲むような覚悟で試合を構築している部分もあり、怪我も含めてプロレスに落とし込むことで攻防に一定のリアルさや生き様が生まれているわけですが、それを指して動けていないだの技を受けれていないだのというのは、痛みを引き受けていない人間の、やや視野狭窄な考えであると言えるでしょう。危険技を受け切るだけが受けの上手さではなく、そうした痛みを伝えることも受けの一種であり、それこそが虚実を曖昧にするプロレスというものなのです。そうした風潮は運営の態度で作られている部分も大きく、こうした部分は曖昧に残して欲しいというのが古参としての意見ですね。

ただ、運営側の気持ちも分からなくはなく、YOSHI-HASHIの怪我の程度が分からない以上、残すのは元より、茶化すことはできず、また日本の国民性や現在の風潮では、そうしたネタとしての消費のされ方が受け入れられにくいというのもあります。YOSHI-HASHIを笑い者にしろというわけではなく、心配な気持ちも当然あるのですが、リングで起こったことは常に全てであり、受け入れるしかないとも思っております。他にも、テロップの誤表示で結果が分かってしまったり(これ自体は生放送は結果を二つ用意しておくものというプヲタの理論武装にはかなり救われた感じがあります)せっかくのメインに傷をつけるような行為があったのだけが残念ですね。戦った二人の価値が落ちるものではないだけに、余計な瑕疵となってしまいました。

外道の乱入で大混乱が上手くまとまりましたが、総合的には波乱やトラブルもありつつも、概ね好意的に話題性を持ったまま追われたように感じます。CHAOSのNEW ERA=新時代という言葉にはどんな意味があるのか。色々と興味が尽きません。

・これからの展望について

まずIWGP Jr.戦なのですが、KUSHIDA vs 石森太二という、いまだ対戦していないカードがドームで実現すると思うので、優勝はKUSHIDAではないかと睨んでおります。オスプレイに借りを返しつつ、彼自体は飯伏幸太とのスペシャルシングルマッチになるのではないでしょうか?

IWGPの権利証に関しては、棚橋が何度防衛するかで話は変わってきますよね。彼のインタビューをまともに受け取るなら、防衛戦は4回を予定しており、そうなった場合、次期コンテンダーはジェイ・ホワイト戦の後はNJCで負けたザック・セイバーJr.が濃厚であると考えられます。そして後、他ブロックで残ってるのは内藤哲也でしょう。同じケニーの言葉に疑問を感じる選手同士で、またドームメイン級の選手といえば彼ぐらいしか残されておりません。

ちなみにドームメイン自体はよほどのことがない限り、棚橋vsケニーで確定だと自分は考えており、権利証とIWGPヘビーが両方陥落することでもない限りはほぼ動かないでしょうね。この二人のイデオロギー闘争に勝る強度の物語が現状では提示できておらず、仮に上記のように陥落で立場が変わったとしても、ノンタイトルでも両者のシングルは組まれると思っております。そして結果は……棚橋ファンなのですが、今回はケニー勝利じゃないですかね。そしてその後に、内藤が棚橋を継ぐ者として姿を現すのが個人的には一番燃えます。スタイル的にコンセプトはややズレるのですが、それ以外だと、現状の新日vs世界という構図に当てはまりつつも、前述の通りケニー発言に内藤も噛み付いているため、物語としてはシームレスに繋がりますし、内藤の新日愛は誰もが認める所ではありますからね。本来なら新日本を背負うという意味では柴田が一番望ましいのですが、現状だとそれはかなり難しいでしょう。

内藤自身、三番手呼ばわりされた屈辱があるという個人の物語もあり、またどうあがいても棚橋と比較される運命のある彼は、やはりポスト棚橋を受け継ぐのがなんだかんだで一番いいのではないかと思います。実際、彼はマックのサラダのようなもので、求心力はあっても集客力と訴求力には欠ける一面があり、確かに会場人気は高く、アンケートでも常に一位を独占しているのですが、それは単に解答率が高いだけであり、彼を認めていないファンの潜在的な暗数は決して無視できないものであると思っています。

「オカダや棚橋が団体のエースではあるけど、ファン人気は内藤のほうが上で、会社は人気を偏らせず散らせるためにわざと冷遇し、他のユニットにスポットを当てている」という謎の陰謀論がありますが、これには全然乗れません。まず本当に彼の人気が不動のものならとっくにエースは交替していますし、そちらのほうが稼げるに決まっています。他に面子がいないならまだしも、本当に内藤がその立場なら、棚橋やオカダを無理に押す必要もないでしょう。

そもそもそのファンが選ぶ、正論を吐く選手という立ち位置自体が新日の掌の上であり、格や実力で後塵を排する内藤を上手く使う一番の売り方なわけです。プロレス大賞二連覇も、新日の売り込みによってオカダとの格の帳尻を合わせたようにしか見えず、なんだかんだでオカダ棚橋ケニーには差をつけられているんですよね。相手を選ばない試合のクオリティというか、内藤はこの三者に比べて名勝負の数が絶対的に足りないのです。現状だと、どうしても相手を選んじゃうですよね。

じゃあ彼はトップに立てないか?と言われればそんなことは全くなく、むしろかつて将来を約束されたエースが時代に裏切られて、それでもなおジェラシーを抱えながらもトップを目指す、というスタイルにこそ自分は感情移入しており、選ばれた人間ではなく、選ばれなかった人間として主人公になってほしい気があります。負けこそしましたが、G-1での飯伏戦での視野の広さには感服しましたし、また同じG-1内のザック・セイバーJr.戦も、シチュエーションこそ不遇ではあったものの、NJCとはまた違った内藤なりの方法論が功を奏しており、空気の掌握力でザックを手玉に取ったのは見事でした。技術やポテンシャルでは両者に劣る部分がありつつも、総合的に一段上の試合ができるのは内藤ぐらいなものでしょう。

なので内藤には常にもどかしさがあり、正当に評価されてないのではなく、正当に評価されているからこその今の立ち位置に、かなり忸怩たる思いがあります。だからこそ伸びしろがありますし、もう一皮剥けて欲しいんですよね。内藤は、2020年のドームという新日にとっての一つの節目でベルトを巻くのではと睨んでいるのですが、できればもう少し早くその機運を高めて欲しいものです。やはり彼のプロレス人生において、棚橋とオカダは避けては通れない相手なんですよね。

内藤についての愚痴と期待が長くなってしまいましたが、他のドームカード候補について考えてみましょう。棚橋ケニーはほぼ確定、内藤vsジェリコが濃厚、KUSHIDA vs 石森太二、飯伏幸太vsウィル・オスプレイが希望ではありますが、オカダのカードが空席なんですよね。その場合だと、ドームということを考えればvsレイ・ミステリオが一番豪華なのですが、彼の契約を考えると少し難しいかもしれません。落とし所としてはCody、ジェイ・ホワイトなのですが、それだとややインパクトが薄れますよね。見たいカードのみで希望を言うなら、一番はオカダvsクリス・ジェリコ、内藤vsジェイ・ホワイト、鈴木みのるvsザック・セイバーJr.なのですが、前者二つは因縁が真逆かつ、後者に至っては因縁がないどころか同ユニットなのでその線はかなり薄いとは思います。

でもこうしてドームのカードを色々と考えるのは楽しいものですよね。長くなりましたが波乱の下半期も頑張って追いかけていきましょう。

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