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【受容=福祉=母性 / 向上=教育=父性】の話

夏から考えていることが何となくまとまってきたので、書き留めておきます。

人は、
「そのままでいいよ」

「このままじゃダメだ」
の両方があって健全に生きていけるのだ、というお話です。

さて、
「そのままでいいよ」というのは、

「あなたの存在が、わたしには大切なのですよ。あなたがいてくれるだけで、わたしは嬉しいのですよ」

と存在を丸ごと受け入れてもらえた経験のことで、

生きていく上で最もベースとなるものであり、

これ無しに何かを積み上げていくというのは、不可能だと思ってます。

誕生を祝福され、
命を削って世話をされ、
生きていてくれたらそれでいい、
と存在を愛でられた経験。

何ができなくても、あなたはあなたのままで、私は大好きなのよ、
と全肯定される経験。

これをするのは、母親の役割ってことになっているので、
とりあえず「母性」と呼びますが、福祉の理念ってこういうものですよね。

あなたのなにかが欠けていたとしても、そのままのあなたで生きていけるように最大限のケアをします、

持てるもので生活できるようサポートします、というのが福祉の目標とするところだと思います。

対して「そのままじゃダメだ」というのは、

「君の弱い部分を補って行こう、もっと強く、もっと賢く、もっとたくましく生きていけるよう、変わって行こう」

と叱咤激励し鼓舞するものであり、昨日より良い明日を目指してより良く生きることを強いるものです。

向上と社会への適応を担うのが「教育」の役割であり、家庭において社会を体現するのは父の役割ということから、教育は「父性」の役割であるとも言えます。

先に書いたように、「もっと強く、もっと賢く」と、個人の現状を否定するわけですから、

その人の土台となる「自分に対する信頼」がないところに、

ガンガン現状否定だけを押し付けても、うまくいかないことは何となくお分かりいただけるでしょう。

かといって、「より良い者になりたい」というのは、人間の本能的な欲求ですから、

それを押しとどめて「あなたはそのままでいいのよ」というのは、どこかで歪みが出ます。

したがって、母性の上に父性の積み上げ(個人の受容の上に教育による向上)がバランスよく存在することで、個人はよりよく生きていけるのだと思います。

私は、自分の講座「子供に向き合う自分を整える」「愛を伝える子育てのコツ」「感覚統合のお話」全てにおいて、「自分とは異なる存在である子どもをそのまま丸ごと受け止めること」の必要性を説いているつもりです。

でも、これは、乳幼児対象の講座だからであって、

いつまでも「そのままでいいのよ」を続けていても、子どもの伸びていきたい欲求を阻害しかねません。

ヘレン・ケラーのことを考えると、わかりやすいかと思います。

ヘレンは1歳の歩き始めた頃に重い病気を患い、視覚と聴覚を失います。

両親は、そんなヘレンを不憫に思い、そのままのヘレンで良いのだ、いきているだけで良いのだと、

しつけを諦め、無理な全肯定を続けた結果、ヘレンは傍若無人な野生の獣のような子どもになりました。

このままではいけないと、家庭教師のサリバン女史を雇い入れ、ヘレンの教育にあたります。

サリバンは、ダメなことはダメ、と厳しく教え、言葉と人の世界のルールと知る喜びを伝えました。

そこからヘレンはメキメキ伸びていきます。

ヘレンの両親が、ヘレンはこのままで良いのだ、とひたすら現状を肯定するだけだったとしたら、

ヘレンは獣のようにただ生きて食べて眠って死んでいくだけでした。

ヘレンに人として生きる喜びを教えたのは、教育であり、

向上したいという意思を支えたからこその成果だと思います。

さて。長々と何を言いたくて書いてきたのかというと。

故意に他者を傷つけるなどの行為を働いた子どもに対して、

「その生育歴を考えると、そうなってしまったのも理解できる」

「この子が悪いのではなく、環境が良くなかったのだ」

「愛を知らないからこうなっているのだ」

と、

理解と共感という名の母性を与え続けることは、

果たして本当にその子のためになるのか?ということが言いたいのです。

「悪いことは悪い」と認める勇気に寄り添うことも母性です。

「あなたが、どんなに悪いことをしてしまったとしても、私は、あなたを受け入れるよ」ということと、

「あなたは今のままでいいんだよ」
ということは、明確に違いますよね?

その二つを混同しては、ダメだと思うのです。

庇うのではなく、弱い自分を認める勇気に寄り添う。

それができてこその居場所ではないかと思います。

そして、ダメな自分を認めるからこそ、そこから変わっていきたいと思えるのであって、

その最初の一歩を、勇気を持って踏み出すことができなければ、獣のように生きるしかないのだと思います。

その子が、この先、どう生きていくことを望むのか。

獣のままでいいのか、どうなのか。

問われているのは、そこじゃないかと思います。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。 サポートは、お年玉みたいなものだと思ってますので、甘やかさず、年一くらいにしておいてください。精進します。