『Sing in Sigh』創作ノート② 手話は言葉、日本語のためのツールじゃない。

『Sing in Sign』は、劇団campさんからの依頼で手話を使うことが劇中のストーリーに組み込まれているのですが、今回脚本を書いたことで、初めて知ったこと、気づかなかったけれど教えてもらったことが多々あります。
なかでも印象深かったのは「手話は福祉のツールではなく、言語である」ということです。日本語、英語、中国語、スペイン語その他もろもろ。世界には国や習俗が異なる色んな人々が生きていて、それぞれ別の言語を使ってコミュニケーションをとっています。私は日本人なので母語が日本語で、外国の方が外国語を使うということは当たり前のこととして、普通に受け入れていています。
ですが聞こえない世界に生きている人たちが手話を使っていることに関して、手話を言語だとは全く思っていませんでした。今となっては大変失礼なことですが、手話を「聾唖の方が日本語を使うためのツール」として捉えていたと思います。

「モスクワ先生、手話は日本語じゃないんですよ」
「手話は福祉のツールじゃなくて、聞こえる日本人が使っている日本語とは別の言語なんです。外国語と同じです」
「独立した言語なんです」

私とエスムラルダさんは、脚本を日本語で書いています。手話を使用する箇所は、わかりやすいようにカッコ書きをつけているのですが、私が脚本を書いた時点では、セリフを手話で表現するということを、それほど難しいことだとは思っていませんでした。日本語で書かれた台詞どおりに手話を行えばいい、くらいの意識だったんです。
しかし、それは実はとんでもないことで、稽古が始まってから、今回の座組に参加してくれている手話のできる出演者や、聾唖の方、聾唖の親をもつコーダと呼ばれる方々が総出で通訳と翻訳にあたって、脚本を芝居への立ち上げてくれています。

翻訳。日本語で書かれた台詞を手話にするということは、外国語を日本語に翻訳することと同じことで、直訳しても意味が通じない部分等、現場で出演者達がすごい工夫してくれています。
手話にも方言があること。
日本語=日本の手話ではないこと。
手話が出来ても、日本語ができない聾唖の方もいること。

私は耳の聞こえない方々の世界を知っている、とは思っていませんでしたが、想像をはるかに超えて知らない、意識の及ばないことだらけでした。
何よりも、無意識のうちに「聞こえない世界」は「聞こえる世界」に従属しているイメージを持っていたと思います。手話を日本語のためのツールととらえるのも、聞こえる人たちの世界を中心にした発想です。

この舞台には耳の聞こえないの方の他、LGBTの人物も登場しますが、この創作ノートを書いている今も、耳の聞こえない方やLGBTの方々について、私にはわかっていないことだらけだと思います。
私自身、発達障碍という現在の社会システムのなかではマイノリティになりやすい特性を抱え、定型発達仕様の社会の無理解や悪意のない傲慢さに心を削られるような思いをしたことがたくさんあるのに、私自身も「私の世界」を当たり前のように中心において、別の属性をもった世界に対して、お門違いな捉え方をしている。

そうした気づきに、気まずい思いをすることもありますが、 気づいていきたいと思うのです。

まもなく初日を迎える舞台『Sing in Sign』、おかげさまで土曜日の回が埋まってきたとのことで、作家としても嬉しい限り。これからご予約頂ける方は日曜がオススメとのこと。ちなみに私とエスムラルダさんとのアフタートークがある16日17:30からの回は、まだ大分お席に余裕があるとのことで、千秋楽は狙い目です!

2020年2月15日~16日
劇団Camp
「Sing in Sign」
作:エスムラルダ  モスクワカヌ
演出:須名 梓
場所:天王寺オーバルシアター

日時:
2月15日(土)19:00
2月16日(日)13:00
2月16日(日)17:30
※受付開始は上演の30分前です。

情報保障
上映時、台詞に字幕がつきます。(手話部分の台詞には字幕がありません。)
受付にて、台本の貸出を行っております。

チケット:
一 般 :3000円
高校生以下:1500円
障がい者:1500円
介助者(障がい者1名につき1名まで):無料
※車椅子にてご来場の方は、予約フォームの「備考」欄にその旨お書きくださいませ。

ご予約→https://www.quartet-online.net/ticket/gekidancamp

出演:

渥美一稀、井坂日向子、江口智香子、ゴーゴー木村、西田夏樹、山根千尋、吉尾咲穂、西本鮎美

スタッフ:
イラスト:信長アキラ
手話指導:江口智香子

公演詳細→https://stage.corich.jp/stage_main/86178

お問い合わせ:
gekidancamp@gmail.com

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