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ストリートギャングからドイツを代表するシェフへ。極めてベルリン的なアジアンフュージョンレストラン〈ティム・ラウエ〉を訪問

ベルリンの人は変わっていると思われている。例外なくティムの行動も変わっている。まさにベルリン的だ。

今年の2月、ベルリンを訪れた。ベルリンを代表するレストランTim Raue(ティム・ラウエ)に行くためだ。2018年の「世界ベストレストラン50」にて第37位にランクインしている。

オーナーシェフであるティム氏は、ベルリンのクロイツベルク出身。当時は治安が悪く、誰も行きたがらない場所だったという。幼少期に両親は離婚し、父からの虐待を受け、その後、彼はストリートギャングの道へと進む。

「拳で殴っても相手が倒れなかったら、ビンやイスで殴った。相手が倒れるまでね」

Netflixのインタビューの中で、当時のことを聞かれたティム氏はサラリと答える。

レストランとしての〈ティム・ラウエ〉に関するネット上の情報を探すと「アジアンフュージョン」というワードがヒットするが、実際はそんなありきたりな言葉で収まる料理ではない。もっとアンバランスで、過剰な味付けで、さらに言えばケンカ腰。ティム・ラウエの料理は、そんな彼の過去を現すような攻撃性に溢れている。ティム・ラウエの料理は、まさにティム・ラウエ彼自身であると言える。

ティム氏はフレンチをベースとした料理を出して頭角を表したが、シンガポールのとある中華料理店を訪れた時をきっかけに、自身の料理のスタイルを根本的に変えたと言う。

フランス料理の考え方は僕には合わない。フランス料理は調和とバランスが重要だが、僕の料理には調和もバランスも関係ない。新しいことに気づいた目覚めの瞬間だった。スパイシーさ、情熱、挑戦的な味。まさに僕自身だった。アジア料理の方が楽しかった。僕自身の心も体も全てがそれを求めていたし、何よりアジア料理は僕そのものだった。

非常にエレガントで繊細なプレゼンテーションとは裏腹に、それを口に入れた瞬間に、ワサビやチリソースといったアジア的なパンチのある味をぶっこんでくる、そんな体験。単なる「驚き」を通り越して「顔面にパンチを食らう」という表現が合う。(ただし、日本人からすると馴染みのある食材が多いため、メニューによっては新鮮さに欠ける部分はあるかもしれない)

今回、ティム・ラウエを訪れたのは、上記の映像を見たのがきっかけでした。レストラン内への小規模な植物工場の導入について僕は関心があり、INFARM社の植物工場ユニットをレストランに導入しているティム・ラウエを実際に訪れてみたかったのです。

キッチンスタッフに話を聞いたところ、残念なことに、もう店の中にはシステムを設置していないとのことでした(2019年2月訪問時点)。一時は店内に設置していたものの、システムから出てくる排気の熱が暑すぎて、店内に置くのは難しいと判断したようです。しかし、今でもINFARM社が育てたハーブ類を、店までデリバリーしてもらっているようです。

今回は、植物工場とレストランの組み合わせ以上に、ティム・ラウエの料理のスタイルに驚きました。独裁的で、自己中心的で、非常にベルリン的なレストラン〈ティム・ラウエ〉に今後も注目です。



こんにちは。ベトナムのホーチミンに住んでます。Pizza 4P'sというレストランのサステナビリティ担当です。