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おもしろいマンガって結局何なの?後編 王道と邪道/期待と裏切り

後編です。
少し前編の振り返り。
私が感じるおもしろさの共通項とは

画力 演出力 キャラの個性 ダークファンタジー
展開が早い 意外な 容赦ない 先が読めない
感情的 熱い 感動 覚醒 伏線回収

ではないか、といった内容でした。


さてさて、大人気漫画といえば、なんでしょう。

ドラゴンボール、ONE PIECE、NARUTO、BLEACH、ハンターハンター、七つの大罪、フェアリーテイル、ジョジョの奇妙な冒険
とかでしょうか

世間的におもしろいとされるこれらのマンガに、先ほどの共通項は当てはまるでしょうか?

かならずしも一致しませんね。
容赦ないダークファンタジーよりもさわやか直球アドベンチャー、バクマン的に言うならば「王道」作品が万人に好まれる傾向にあります。

王道と水戸黄門

「王道」の意味を調べてみますと、

①孟子が説いた王の道。
「徳によって本当の仁政を行う者」を指し、「小国であっても人民や他国はその徳を慕って心服するようになる」と説いた。

②Royal Roadの訳語「王の道」。
「一番近い距離を進む直線の道」を表す言葉。転じて「安易な道」のことを意味する言葉となる。「学問に王道なし」。

一般的には、「正攻法、ベタな展開」あるいは「大多数の人たちに受け入れられ、支持されているもの全般」を指す言葉として用いられている。しかし、これは誤用とされている。
「徳によって本当の仁政」から転じて、「正攻法」「定番」「定石」となった。
「楽なやり方」という意味より転じて、「多くの者が選びそうなやり方」「ありがち」となった。

出典:ニコニコ大百科

なんか意外と思っていた意味ではなく、どうも誤用に近い意味で覚えていたようです。

では、これらいわゆる「王道」作品の共通点とはなんでしょう?


それは「水戸黄門」だと思います。おおまじめに。
水戸黄門って昔はよくテレビでやってたんですが、いまはどうなんでしょうね。子供ながらに祖母と見ていたストーリーを書きますと、

起:水戸黄門が正体を隠し旅をしている
承:旅先で良い町人と知り合う
転:良い町人が悪代官の濡れ衣で捕まる
結:正体を現した水戸黄門が悪代官を懲らしめる

「助さん格さん、もういいでしょう」
「静まれ!」「静まれ!静まれ!」
「この紋所が目に入らぬか!」
「こちらにおわす御方をどなたと心得る!恐れ多くも先の中納言水戸光圀公に有らせられるぞ」
「一同の者!御老公の御前である頭が高い!控えおろう!」

ほぼこれです。ワンパターンと言ってもいい。
印籠の出てくる時間ってほぼ一定(45分くらい)だったらしいですね。


さてここでワンピースはどうか?

起:海を旅する麦わら海賊団
承:島に上陸、島民と仲良くなる
転:実は圧政の島だった。島民の涙、ルフィブチ切れ
結:圧政の象徴、敵のボスをルフィがぶっとばす。

宴だァ~!

乱暴にまとめるとこうです。
なにもワンピース批判がしたいわけではありません。王道と呼ばれる人気作品は、ほぼすべて水戸黄門式ワンパターンがあてはまります。
真島ヒロ先生の作品「RAVE」「FAIRY TAIL」「EDENS ZERO」に至っては、3作品にわたって水戸黄門が歩き続けているようにも思えます。

なぜ、いつの時代も王道と水戸黄門は愛されるのでしょうか?

ひとえに安心感だと思います。
何があっても、ルフィが悟空がナルトが一護が(?)承太郎がなんとかしてくれる。
何があっても、印籠さえ出せば勝ち

「期待する展開」が、読み進めれば必ずやってくる。この絶対的な安心感、安定感こそが、王道の王道たる理由だと考えます。


・・・ハンターハンターとジョジョって王道か?


邪道と期待

王道の対義語は「覇道」です。
しかしバクマン的に言えば「邪道」です。

邪道
仏教用語で、仏道に外れた不正な教えのこと。転じて、一般に、本筋に沿わない不当なやり方を評していうのに用いられる。
出典:Wikipedia

想像よりも悪い言葉のようですね。

自分なりの解釈だと、邪道マンガとは
・主人公が手段を選ばない、欲望に忠実
・主人公が必ずしも勝たない、けっこう負ける
・主人公が早々に退場(死亡)する
・敵も手段を選ばない(目を覆いたくなるほどに)
・クセの強い作画
そんな描写がおおいものだとイメージしています。
判断基準としては、子供にぜひ読ませたいか否か、といったところでしょうか

王道が「期待通り」の展開に安心する漫画なら、
邪道は「期待以上」の展開に驚愕する漫画ではないか、と考えます。

いちどは水戸黄門の助さん格さん、もし負けたりしたら面白いのにな~なんて考えたことありません?

さて、「期待」という要素は、意外とおもしろい漫画というものの、核心に迫るワードではないかと思います。


前編に挙げた、マンガの感想パターンを振り返ると、

①おもしろい
②つまらない、わからない
③序盤おもしろい、途中からつまらない
④序盤つまらない、終盤おもしろい

でした。全部にこじつけて期待をくっつけると、

①期待通りおもしろい、期待以上におもしろい
<金色のガッシュ><チェンソーマン>

②期待していたよりつまらない
<サムライ8>

③期待通りの序盤、期待外れの終盤
<東京グール><BLEACH>

④期待外れの序盤、期待以上の終盤
<さよなら絶望先生>

個人的にではありますが、かなりしっくりきました。
マンがそのものより、自分の勝手に打ち立てた「期待」というハードルのせいで評価が変わるとは皮肉なものです。
サムライ8は始まる前から期待を集めすぎたんだ・・・

師匠がどう思おうが 
失望されたかどうかはオレが決めることにするよ

この記事も、読んでくださった方の期待に沿えているかどうか、甚だ不安であります。

さて、おもしろさ、つまらなさ、王道、邪道、期待と、前後編に分けて掘り進めてきたわけですが、
序盤に登場し一向に拾われなかったものが一つあります。


ナ ノ ハ ザ ー ド


これはすごいんです。
漫画をこよなく愛する人ほどに感じる違和感。信じられない最終回。
「この漫画がすごい!」と言わずにはいられない。

歴史に残る怪作です。ぜひ。




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