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SESフリーランスの報酬は、なぜ高いのか?

前々回で紹介した「もう一つのフリーランス」こと「SESフリーランス」。その定義についてはこちらの記事を参考にしてください。

今回は、その「SESフリーランスの報酬」が高い理由について深堀りしていこうと思います。

なお、このエントリについては「それが適法かどうか」については、巧妙に言及を避けますのでそのあたりはお察しください

SESについておさらい

まず、一般的に言う「SES」ですが、大雑把に言うと
「エンジニアを必要とした企業が、SES企業に依頼して"SES企業の正社員のエンジニア"を派遣してもらう契約」
を指します。

派遣法の外で労働力を柔軟に調達できることから、IT業界では非常に重宝されています。

派遣法では個人を指名することは違法なのですが、SESにおいては面談等でのスキルの有無で足切りができるので、スキルがアンマッチな人をつかみにくいというメリットがあります。

ただし、基本的には自社に絡んだ商流からの案件のみを受注するため、日本のどこかで労働力を必要としているのがわかっていても、商流が合わなければ当然受注できないため、意外とマッチング性能は低いのです。

ただ、SESをやっているのは専業企業だけでなく、SIerも余剰人員が発生した場合は、どこかの会社にSESで出して日銭を稼いだりすることもあります。

また、営業的な側面もSESにはあります。

大規模な案件に安い値段で一枚噛んでおいて、その案件に精通したエンジニアがいる、というアドバンテージを活かして、最終的に自社で受託案件を受けるという戦略がとられることもあります。

SES専門企業の功罪

SES専門企業のビジネスモデルは「商品(つまり人間)」を仕入れて、現場にいれるなり研修させるなりでスキルを付けさせ、それを外に高く売りつける事で利益をあげるという形になります。

研修や待機などで商品(つまり人間)が利益を産まない期間については、会社側の持ち出しが発生するので、固定費になる給与はなるべく低く抑えたいというのが本音です。

実のところ、スキルが身についてろうがなかろうが、経験年数だけで売値は上昇するので、真面目に研修させるぐらいなら、途切れなく案件に突っ込むほうがSES企業は儲かるわけです。

とはいえ、大手ITやユーザ企業などは、立派な学歴なり職歴がないと働くのは難しく、それら「王道サラリーマンエンジニア」のルートを進めなかった人のセイフティーネットになっている側面も否めません。

アプリケーション開発の需給問題

古き良きウォーターフォール開発において、納期は絶対であり、人員計画はPMの頭を非常に悩ませます。

その中でも非常に悩ましいのが、アプリケーション開発の各段階において、必要な労働力の質も、種類も、人数も変わっていくということです。

それら全てを正社員で賄おうとすると、急激な労働力の加減は難しいために、ビジネス上要求されるスピードが維持できない、あるいは過剰な労働力を抱えてしまうという問題が発生します。

労働力が必要になったからといって、正社員雇用するにはさまざまな手続きを踏まねばならず、簡単には人を増やすこともできません。

そしてまた、労働力が不要になったとしても、即日解雇してコストを削減することもできないのです。

SESフリーランス価格の本質

SES専業企業に所属するエンジニアたちは、自社にいるのが月に数時間というレベルの人だとしても、まがりになりにも「正社員」であるため、厚生年金、有給休暇、雇用保険など、雇っているだけでも馬鹿にならないコストが発生しています。

したがって、労働力の調整という観点でいうと、発注側企業と同じ、構造的な事情を抱えています。

そこで登場したのが、SESフリーランスという傭兵稼業です。

個人とSES契約を結び、そのまま発注企業へと右から左へ渡すのです。

彼らSESフリーランスは商流にもとらわれず、待機費用も、研修も、社会保険費用も不要。
希望する報酬額さえあれば、即日労働力を供給してくれるのです。

そして、最大のメリットは、不要になったら短期間で契約を解除できるという点です。

SESフリーランスの高い報酬の本質は、雇用流動性にあります。
つまり「硬直した日本の雇用事情」がSESフリーランスの高額報酬をもたらしているのです。

いうなれば「いつでも首にできる料金」に企業はお金を払っているのです。

この巨大なメリットの前には、スキルの多少の過不足というのは問題にならないのはご理解いただけるでしょう。

次回

SESフリーランスネタもそろそろ飽きたのではないでしょうか?

次回は「SIerの没落」あるいは「githubが生んだITエンジニア分断」について深堀りしてみたいと思います。

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