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[小説]私を見て、私を見て、私を見て。

また同じクラスの伊東が夢に出てくる。
そこは閉じ込められたエレベーターの一室のようで、私と、伊東と、伊東のツレの渡邊がいる。

寝坊でもしたのか、何か焦っていたのか、どういう設定かはわからないが、私は下着とキャミソールしか着けていない。
こんな姿でみっともない、という恥ずかしさと、同級生の中では身長も振る舞いも頭一つ抜けている伊東がこの場にいることに、浮き足立つ気持ちが同居する。

顔が小さく、手足が長い。
少年野球をやっているので少し肌が浅黒いが、それでも涼やかな顔立ちと、他の男子のように下卑た冗談を言わないところが格別大人っぽく、休み時間にたまに本を読んでいる様子など、なんとも言えない気持ちになる。
普段はいっさい本なんて読まないような女子たちが、時に伊東に話しかけるために、同じ本を読み始める始末だ。

そんな女子たちよりもさらに話す機会もない私が、彼と半径1メートル以内にいることに落ち着かず、ちらちらと顔を覗いてしまう。

しかし渡邊が下着姿の私を今にもからかいたそうにニヤニヤと見てくるのに対して、伊東は私を一瞥しただけで、ふいと興味がなさそうに、動かないエレベーターの扉を見るのであった。

ああ、"ここ"でも。

* * *

夢から覚めて、まどろみから現実へ引き剥がされる。アラームよりも少し早い覚醒だったようだ。部屋が静か。

当然だが、寝ている時もちゃんとTシャツと短パンを装備しているので、たとえどれだけ急いだって、あんな姿でエレベーターに乗ることはない。

のそりと起きて、重たい体を起こす。

ぱんぱんのふくらはぎ、ぽこっと出たお腹、くたびれたカーキ色のTシャツ、運動不足で白くぶよぶよの体。

私は今日も、誰にも求められずに生きていく。

それだけはわかる灰色の目覚めだ。

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