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短歌 連作16首『夢のつづずつづづずき』


性交を繰り返すたび天井がヤニで汚れていく愚かさよ

耳と耳繋がっちゃってる気がしてる 大切ですよ ねえ きみ みみ

冷蔵庫また開ける違うわかってるこれは希望の光ではない

ひざを折り抱きしめながら座るとき背骨はしなりそっと たましい

「あ、今は、輪郭のない部屋にいる。これから? いや、無理、ゴメン、行けない。」

遮光カーテンの向こうにたんまりといる光ども憎たらしいよ

この部屋に運命化恋素は充満しふたり眠れば永遠に ならない

エアコンの羽を見つめて泣いている メーター点検の人 来ないで

壁紙のめくれたところに目があって怖いし呆れたふうに見てくる

電球がやわらかかったらよかったね 触れられたかもしれない ひかり

永遠は何年ですか そんなこと知らないけれど帰りたくない

見るものが全てではない 漆黒の光もこの世にありますちゃんと

何度でも夢から醒める 点滴の針のような雨が今朝も降ってる

ぱさぱさのまぶたを窓硝子に貼れば桜がマイナス八分咲きです

部屋を出る ふとんを出るときとは違う場面演出が痛いさみしい

またいつか会えたら月の温泉に行こう二億連泊しよう



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