【note毎日更新チャレンジ13日目】アパレル販売員をやっていたらうんこと戦うことになった話

アパレルショップ店員話シリーズその3。タイトル出落ちでもある。

僕はアパレルショップ店員で、量販店ということもあり、そのお店は路面店でかなり広いフロアであった。

その日は日曜で、会社として好景気だったため、返品やら在庫確認やらと、とにかく僕はフロアに出れずレジに入っていた。

その時、学生スタッフ(芸人の堤下に似ているので以下堤下)が僕に走ってきてこう言ってきた。

堤下「もとじいさん、すみません。」

僕「何?結構今忙しいけど。」

堤下「マジで緊急事態です。」

僕「ん?何事?」

堤下「うんこ臭いです。」

僕「は?」

堤下「フロアがウンコ臭いんです。」

僕「はー…ちょっと今はマジで忙しいからそういうのは後で聞く。とりあえずフロアに戻ってくれ。」

と、堤下を戻したはいいが、少し経つと会計待ちのお客さんもざわざわし出し、うんこの匂いと言っているように聞き取れた。

僕はレジのスタッフに「堤下を呼んできて。」と指示を出した。

堤下「なんですかもとじいさん。あとやっぱりうんこ臭いです。」

僕「どうやらそうらしいな。すまない。自分が間違っていた。今はここを離れられないから、ちょっとフロアを周って調査してきてくれ。頼んだ!」

堤下「っ!!!わかりました!」

そうして少し経つと堤下が走って戻って来た。

堤下「もとじいさん!!状況はかなりやばいです!!」

僕「なんだ!!外で下水でも溢れてるのか?」

堤下「うんこが落ちてます!」

僕「え?」

堤下「うんこ…いや、おそらく人糞が落ちてるんです!!」

僕「うそやん・・・」

堤下「マジです!!しかも複数個所落ちています。いい形のうんこです。」

僕「いや、形とかはどうでもいいよ。えー、うそー。シンプルにうんこ落ちてるのー・・・分かった。すまない堤下。」

堤下「なんですか!!」

堤下はいきなり現れた非日常にテンションが上がっていた。これを利用しない手はない。

僕「君を劇物処理班に指名する。」

堤下「え・・・」

露骨にテンションの下がる堤下。

僕「すまない。この状況、君しかいないのだ。僕も心苦しい。しかし、時は一刻を争う。アパレルにとってお洒落は重要なファクターだ。フロアのそれは果たしてお洒落か?」

堤下「いえ・・・違います。」

既に彼は戦士の目をしていた。覚悟が早くてよろしい。

僕「そうだろう。お客さんにバレる前に速やかに処理しなければならない。いち早く劇物に気づいたその鋭い嗅覚・・・そして現状、ある程度場所も把握している君が適任なのだ。」

堤下「わかりました。うんこを僕が・・・僕がうんこを片付けます!」

僕「ありがとう。そしてもううんこを連呼するのやめようね。ここレジだから。」

彼は走って、ストックルームからほうきとちりとりをもって片づけてなんとか事なきを得た。

確かに形のいいうんこだった。

営業が終わり、終礼の時。

僕「今日の予算は達成です。しかし、何といっても今日のMVPは堤下君です。皆はくしゅー」

パチパチパチ

僕「堤下君、臭かったろうにありがとう。そして大事になる前に片づけてくれてありがとう。本当に気づいてくれてよかった。」

堤下「いえ、そんな・・・でも服とかについてなかったので良かったですよ。」

僕「本当に助かった。これからも何かあったら頼むね?」

堤下「え?」

僕「じゃあ、今日もお仕事終わり!お疲れ様でしたー!」

一同「お疲れ様でしたー!!」

堤下「え?」

幸い、以後うんこが落ちていることもなく堤下の活躍する機会はなかった。

接客業をしていると色々なことがおこるものである。

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