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ストーカーのごとく地の果てまで追いかけて来るオンライン広告がなくなる日

ストーカーと言ってもリアルで待ち伏せするやつではなく、オンライン広告の話。先日、私の友人が「お子さんの高校卒業記念に」という広告が配信されてきて不快であったという話をしていました。

自分が、そういう年齢の子供が居てもおかしくない年齢であることを把握されていることも、実際には子供が居ないのにこういう広告が配信されて来ることも不愉快であると。

私も、一時期、業務の関係でコラーゲンの動画をたくさん観ていた時期があり、それ以降、やたらブラジャーの広告が配信されて来る様になりました。

あと、一度ウェブサイトを訪問したら最後、リターゲティングでその商品広告に地の果てまで追いかけられる経験、みなさまもお持ちではないでしょうか?これぞ、まさしくストーキング。逆に「意地でもこの商品は買わないぞ」という気持ちになってしまいます。

一番気味が悪いのは、あるサプリメントの商品をグーグルで調べたら、その後、5分もしない内にフェイスブックとインスタグラムにその商品の広告が配信されて来た時。モニターをリアルタイムで監視する装置が私のパソコンに埋め込まれているのでは?と恐怖を感じます。

実際は閲覧履歴を参照して、自動で広告配信する様にプログラミングされているということなのですが(本当に監視装置が埋め込まれているのかも知れませんが:笑)、気分が良いものではありません。

個人情報保護に対する意識の高まりを受け、閲覧履歴のトラッキングを制限する方向に動いています。i-Phoneでは既にオプトイン方式を導入済み。ユーザーが自ら「トラッキングして良いですよ」という設定にしない限り、トラッキングできないというもの。アンドロイドでも同様の仕様を検討中と言われています。

こちらのメディアポストの記事では、トラッキング全般を禁止すべきだという提言もなされています。

では、トラッキングができなくなると、困るのは誰でしょうか?まずは、広告主です。広告のターゲティングの精度が落ち、費用対効果が落ちます。その結果、メディアに対する需要が落ちる、あるいは買い叩かれ広告収入が減る。という形でメディアが困ります。そうなるとメディアは記事やコンテンツを無料提供できなくなり、最終的には視聴者(一般生活者)に跳ね返って来るという構造。

このあたりで一度、立ち止まって考える時期に来ているのではと思います。新聞、雑誌、書籍、映画にはお金を払っています。NHKには受信料を収めています。ネットフリックスには月額料金(サブスクフィー)を払っています。むしろ、無料で見られる民放テレビ放送が少数派なのでは?ということ。

そのテレビ広告モデルを無理矢理ウェブサイトに持ち込もうとしているから、色々と不適合が起きているのではないでしょうか。テレビCMは、様々な趣向を凝らして制作しているので、テレビCM自体がエンタメ化している側面があります。また、CMの間にトイレに行くという休憩タイムとしても機能します。

一方、ウェブサイトに表示される広告(ディスプレイ広告)は、初期の頃は、まだ、「お行儀が良い」ものが大半でした。ところが、広告はほとんど見られていないというディスプレイ広告ブラインドネス問題が発覚。その後、あの手、この手でクリエイティブな手法が開発され、視聴時に割り込んで来る様になりました。今や、煩わしすぎて集中して記事を読めないと感じているのは私だけでしょうか?

個人的には、月額課金(サブスクリプション)と記事型広告の組み合わせが最適なのではと考えます。価値のあるメディアには、適正な月額料金を支払う。視聴体験を妨げるディスプレイ広告は廃止し、記事型広告のみとする。

わかりやすく言うと、このNOTEの様なUI(ユーザーインターフェイス)が理想なのではと思っています。他のお薦め記事と同様、同一フォーマットで記事広告も表示される。当然、「広告」クレジットをきちんと表示する。視聴者は、その記事が面白そうだなと思えばクリックして読む。NOTEで言うと有料記事をクリックする感覚に近い。

ポータルサイト全盛時代は、とにかく自社サイトにアクセスを集め広告価値を高めることにメディアは注力していました。そこに登場したのがバズフィード。分散型メディア(英語ではdistributed content)という新しい概念と共に。広告と記事を一体化することで、自社サイトにアクセスを集める必要はなく、各プラットフォーム(フェイスブック等)でバズフィードが提供する記事が見てもらえれば、それで良いという発想。

2018年にバズフィードのNY本社を訪問する機会がありました。驚いたのが、当時、ニュースの内製化に力を入れており、ワンフロアがまるでテレビ局の報道フロアの様になっていたことです。

これぞ、今後メディアが目指す姿であると感動したことを鮮明に覚えています。

ところが、ショッキングなニュースが…. 

どうやら、バズフィードのニュース部門は大赤字で、株主の圧力により、縮小せざるを得ない状況に追い込まれているとのこと。本件に関しては、別の記事で掘り下げたいと思っています。

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